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15人が暗殺されたプーチンの静かなる戦争『ロシアン・ルーレットは逃がさない』

本のタイトルが安っぽいので敬遠していたのですが、読みだしたら止まらなくなってしまいました。
第一級のスパイ小説さながらの内容です。
タイトルは現行の「ロシアン・ルーレットは逃がさない」よりも、元のタイトル「From Russia with Blood」の方が、内容にもフィットしていますね。

■内容
新興財閥(オリガルヒ)、反対制派、ジャーナリスト、内部告発者…。プーチンが権力を握って以来、ロシアから英国に亡命した者たちは次々と不審な死を遂げてきた。とくにプーチンを目の敵にしていた富豪ボリス・ベレゾフスキーの周囲では、放射性物質で毒殺されたリトビネンコをはじめ、彼らに協力した英国人弁護士やフィクサーまでもが悲惨な末路を辿っている。そして、英国の政府や捜査機関が事態を黙過しているうちに、暗殺者たちはアメリカに上陸しつつあった―。犯罪現場の証拠、諜報機関の機密情報、そして関係者への膨大なインタビューなどから、クレムリンによる暗殺プログラムの全貌に迫り、それと符号するプーチンの世界支配の思惑に迫る。バズフィード・ニュースのジャーナリストによる、果敢かつ精密なレポート。

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著者は、バズフィード・ニュースの国際調査報道エディターであるハイディ・ブレイク。かつて、国際サッカー連盟会長の汚職を追求した著作もあります。

『ロシアン・ルーレットは逃がさない』も評価が高く、ピュリツァー賞ファイナリストにも選ばれました。
話しを盛っているところはあるでしょうし、あくまでもイギリスから見た視点のノンフィクションです。ロシアからすると、違う言い分もあるはずです。
しかし、よくここまで切り込んだなと思います。

プーチンに敵対する亡命者が次々と命を落とします。
イギリスのみならず、アメリカにいても関係ありません。

暗殺リストに載った人間は確実に死んでいきます。

放射性物質を飲まされて死亡したリトビネンコの事件は、当時日本でもニュースになりました。けれども、自殺に偽装させられたり、もっと巧妙に殺された人たちはあまりニュースで取り上げられません。

2006年にプーチンは、ロシア国外の標的殺害を合法化する法律に署名をおこないました。
国家の敵と認定された人間は、殺されてもロシアでは罪にはならないのです。

あまりにも常識から外れています。

外国からしてみても、移民してきて自国民となった人間が殺されるのは、もちろん論外です。殺人は間違いなく違法です。

ところがイギリスを始め諸外国の政府は、あまり問題視していませんでした。

大義のためなら、小義を捨てる。

当時、各国はロシアのパワーが必要でした。
大義=世界経済、世界秩序(打倒IS等)のためにはロシアに頼らないといけません。
小義=暗殺については、できれば目を逸らしたいのが本音です。

小義を捨てたために、今の軍事侵攻まで行うようになったロシアになってしまった……というのは過言でしょうか。

連続で暗殺が施行されているときに、各国が抗議の声を挙げていれば現在の世界とは違った世の中になっていたかもしれません。

ただ、こうしたことは国だけではなく、どこにでもありますよね。会社などでも、売上のためには細かい法律や規則などは、簡単に破られてしまうこともあります。
人間の性(さが)なのかもしれません。

そして、プーチンはそこを見透かしているようにも思います。

しかしまあ、読んでいて本当に怖い本でした。
ミステリーやホラー小説で震え上がることは度々ありました。けれども、実際に身の危険を感じる怖さではありません。

本著は、ロシアに抗議の声を挙げたら、自分も身の危険に晒されるのではと想像(妄想?)してしまうほどの迫真さがあります。
強烈な一冊でした。

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