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何があっても君を守りたい「手紙」

<SF(38歩目)>
「何があっても君を守りたい。」この言葉が切なく伝わる極上の作品から、愛を再認識する。

手紙 (新潮クレスト・ブックス)
ミハイル シーシキン (著), 奈倉 有里 (翻訳)
新潮社

「38歩目」はロシアから愛をこめて、「人間は光と温もりの塊なんだよ」。何とも素晴らしい言葉。読後の酔い心地がサイコーです。

ミハイル・シーシキンさんは、特にモスクワ大学の学生からおススメされたのですが、モスクワ周辺の都市部に住む女性に人気です。

作風は、文学的な「愛(love)」を研ぎ澄まして訴えるものが多い。ロシアの主要な文学賞を総なめしていて、ロシアでの人気は村上春樹さんに似ています。

私は「甘い」「あたたかい」「心にドキューンとくる」作家だと思います。

この作品では、100年前の戦場と現代のモスクワの男女が手紙をやりとりする「時間SF」になっています。

このプロットは、かなり使い尽くされているものですが、「あの世」で再会するものではなく、結末はかなり考えられている。

「死」「生」「愛」「記憶」にかかわる作品は多いけれど、ここまで「ドキューンと撃たれる」作品は少ない。

そして読むと感じることは、東洋文化にかかわる憧れです。

シーシキンさんは日本にもよく来るし、早稲田大学で講演もされている。
「世界大戦は起こらないだろう。しかし、アフガニスタン、イラク、オセチア、ウクライナ・・・の様な、強い国がよってたかって弱い国を潰しにかかるような戦争は無くならない。そして、世界大戦ではない戦争は教えられることもなく、死者は記憶されずに風化してしまう」と話されていました。

まさに、その通りと感じます。また、彼の作品中では「ロシア人が知らない戦争を起点に、誰もが知る戦争に切り替わる。」のが特徴で、質問したところ「自分たちが常に正義であるはずがない」ことを読者に強烈に印象付けたいからとっている手法だとのことで、これからも私たちの国を見てもらいたい作家だと思います。

彼は東京滞在中には、地下鉄・バス・徒歩で色々な東京を歩いています。
その際に、東京と言う、メトロポリスの中にたたずむ神社仏閣を訪れ、そこで和尚さんから教えてもらったこと。等々が、彼の原体験に入っていて、「まさにロシア」の作家ですが、日本人にすんなり読み込みやすいものになっています。

この作品は、老若男女かかわらず「愛」を学べる作品だと思います。
※主人公が、だからかもしれないのですが。。。

ロシアでは大人気作家ですが、日本語訳は極めて少ない。
だからこそ、この作品で「愛(love)」を再確認してもらいたいです。

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