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短編創作

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長い物語を書く体力がないと実感しています。また長い物語を読む気力もありません。短くて完結するものが好きというのもあります。そんな短編創作をマガジンにしました。
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記事一覧

右の耳

 目が覚めた。時計をみると四時を過ぎたところだった。外はまだ暗い。これは別に珍しいことで…

北原慶昭
1年前

雨に抱く

すごくきれいなひとがいてね。 高校の同級生だったんだけど、そのころはよく知らずにいた。 ず…

北原慶昭
1年前
1

わたしの近況

1、 ひとづてにきいた噂。 「外出すると罰金をとられる。」 「街をふらついていると射殺され…

北原慶昭
1年前
3

センチメンタルな旅

(1)  8時42分発の奥羽本線に乗って山形をでる。いくつかの用事をかかえ、県境を越えて…

北原慶昭
1年前
1

夜会2

 巨大な破裂音が鼓膜を潰し、強い衝撃が全身にのしかかった。静けさがあって、頭のなかを生温…

北原慶昭
1年前

夜会

 夜半に目が覚めた。手探りで携帯電話を開いてみると2時48分だった。冷えた肩を布団のなか…

北原慶昭
1年前
1

ひみつのおにゃんこちゃん

1、「それいけ、おにゃんこちゃん!」連載開始のはずなのに!? (「それいけ、おにゃんこちゃん!」第一回目のあらすじ)  ミズホの國に住むごくごくふつうの極右弁護士だったトモミは、ある夜、茂みから現れたなぞのおばはん、ジュンコ・K(Kはコシノではない)に指をさされ、こう告げられたのだった。 「あんたは、ほんとにおにゃんこちゃん!」  これを神からの啓示とかんちがいしたトモミは落下傘候補の修行を経て、正義の味方「おにゃんこちゃん」にコスプレ変身する力を持つことになった。  トモ

蜘蛛

 水族館の前の広場で、「ウォーン、ウォーン」と大きな声が響いていた。リュックサックを背負…

北原慶昭
1年前

よこはまで

(1) 横浜、よこはま、YOKOHAMA、ヨコハマ。 横浜にはストーリーがよく似合う。物語はいつ…

北原慶昭
1年前

風のはじまり

 昼メシも食ったし、寝っかなと思っていると、廃品回収のアナウンスが、住宅街のはずれからや…

北原慶昭
1年前

死期

 世の中には自分とそっくりなひとが三人いると、誰かがもっともらしくいっていた。そのときは…

北原慶昭
1年前
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金星村

 東京にはいろんな「村」がある。文化村、らーめん村、年越し派遣村などなど、村と名のついた…

北原慶昭
1年前

写真三葉

「写真A」 路地でアゲハを見つけた 壁の低いところにとまっている 近くを通り過ぎたが動かな…

北原慶昭
1年前
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笛の音

よく晴れた夏の夕方の空の下、そこは絵に描いたようなのどかな田園風景がひろがっている。片田舎の無人駅のホームにたっているぼくは、一日に一本しかない一両編成の列車の車掌だ。 気持ちのいい空気をお腹いっぱい吸い込んで、もう長いことこの駅にとどまっているような気がするが、時計をみると間もなく出発の時刻である。車内をのぞきこむと、席は八割がた埋まっているようだ。 駅に続くあぜ道には乗り遅れまいと走ってくる学生達の姿が見える。ようやっとクラブを終え、急いで着替えてやってきたにちがいない