daigomatsumoto0702

哲学、批評、詩学。 慶應義塾大学通信教育課程文学部1類哲学専攻

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マガジン

  • ー詩と形而上学ー

    創作している詩をまとめました。お気軽に御覧下さい。

記事一覧

炭酸水

現在地を 忘れてしまった夜に ノースダコタの 緯度を知った 干したままのシーツに 冷えた雨がこぼれたら アボカドが生えて それを前菜にした ステレオを流れる スローな…

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月と雨

四等星は藍色の雲間の滲みとなって 三月の記憶は、双眼鏡のレンズに彩りを与える 「もうそろそろ、水をやらないと」 彼は緑色の詩集を観葉植物と呼んでいる 手際よくダ…

9

冷蔵庫と靴

買ってきた靴を 仕舞う前に もう一度 値札を見る 押し入れに Tシャツを 軽くたたんで 片付ける なんでもない 五月は 換気扇を つけたままにして 僕たちは 何…

2

運命論

運命論   ブラジルでの蝶の羽ばたきが テキサスで竜巻を起こしたので そっと、今 頁を閉じることで ふたたび 時折、蒼白く 田園から伸びた 一本の糸が 南アフリカの …

5

過去詩②

過去詩です。ココア共和国さんに初めて佳作になった時の詩です。今とはだいぶ作風が違いますね。最近は筆名をダイゴ・マツモトに統一しようかと思っています。覚えてもらい…

4

過去詩

過去の詩を整理していて、初めてココア共和国で傑作選に入選した詩がでてきたので、掲載しときます。コロナの第一波くらいのときに書いた詩です。 50ぱーせんと / ダ…

2

ー詩と形而上学ーNo.44

止まれ     波は、確かに線になっていた 消えかけた、道路の止まれに なぜそうなのかを、質問して そして、確かに止まっていた 着彩する前の水彩画の描きかけの白い…

6

ー詩と形而上学ーNo.43

傘を差す、ブルー この冬空の水色を 翻訳しようとして 誰も知らない 国のことばを探していた この色彩の、にじんだ輪郭を 透き通る、青い温度の余韻を 風に秘められた、…

6

<ゆる募>
1)オンライン詩話会
→詩集や詩誌についての座談会
→投稿詩などの作品の事前相互論評
※「現代詩手帖」·「ユリイカ」等の入選を目指して
→詩誌の作成(年1回)
※当方、元デザイナーで制作環境有り

みたいな会に、月1回参加してもいいよという方、いたらコメントください。

3

ー詩と形而上学ーNo.41

GOOD MORNING      抑揚のない声を ミキサーにかけて ジュースにする 今日の、搾りたての かすれた声帯は おはようございますが うまく言えない 背景だと思ったら …

5

ー詩と形而上学ーNo.39

花束     百万通りの感傷が 癖になり ワイシャツの皺 裸になった襞 唇を通り越して 半音階の♯となった そのまなざしは 魂の真ん中の 脆弱性を攻撃した ウォーターハ…

3

ー詩と形而上学ーNo.38

SUMMER SWEARTER     半年前は サマーセーターで それに 理由を 探していた 通り抜ける うつろうことを 恐れない Ethicsで 田園を飛び立ち 都市に至る 一本の 糸の…

5

ー詩と形而上学ーNo.37

或る、雨について   或る、雨について 語ろうとしている この白雨が 概念ではないことを知った わたしの傘は どこへいったのだろう バスに乗り 列車に乗り 飛行機に乗…

9

ー詩と形而上学ーNo.35

脱意味のためのエチュード 躁 不完全 声を掬う 淫靡たる血気 が 陽転 エチュード 喉を伝う 清浄な性交 破裂 暗転した アラベスク 完全な 俄雨 排水溝が Xだった 未熟な こ…

3

ー詩と形而上学ーNo.34

完璧な青       帰り道に見つけた 完璧な青が 高い空の天辺に 一滴のインクで 孤独な絵を描く 雲は遥か眼下にあり 飛行機の主翼の 揚力も必要なく 酸素の限界を超…

4

ー詩と形而上学ーNo.33

この夏のこと 駅前から堤防に向かって歩いたその先にある カーブミラーに映った黄昏 その、ブルーモーメント 被写体として最適化された 青の導きに身を任せながら 嫋やか…

5

炭酸水

現在地を
忘れてしまった夜に
ノースダコタの
緯度を知った
干したままのシーツに
冷えた雨がこぼれたら
アボカドが生えて
それを前菜にした

ステレオを流れる
スローなロック
ブラウン管の
白いノイズを
ゼリーにして
スプーンで掬ったら
観葉植物が
枯れてしまった

痺れながら
三十二階の
炭酸水の中
背泳ぎをする

淡いたましいの
二分の一のn乗
束の間の雲間に
垣間見て

夢をみること

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月と雨

月と雨

四等星は藍色の雲間の滲みとなって

三月の記憶は、双眼鏡のレンズに彩りを与える

「もうそろそろ、水をやらないと」

彼は緑色の詩集を観葉植物と呼んでいる

手際よくダイニングテーブルを片付けて

ノートに書いたインクが乾くまでの束の間に

昔よく観た映画のアングルを思い出している

それは、光と影の、一寸した交錯で

色彩を忘れる前の祖母の写真の背景のようで

褪せた新聞紙の写真の遺失物だった

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冷蔵庫と靴

冷蔵庫と靴

買ってきた靴を

仕舞う前に

もう一度

値札を見る

押し入れに

Tシャツを

軽くたたんで

片付ける

なんでもない

五月は

換気扇を

つけたままにして

僕たちは

何度でも

生まれ変わった

気分となって

同じような

営みを

同じように

繰り返す

まるで

無かったようだ

最初から

無いのだろう

冷蔵庫のドアは

閉じたままでいた

運命論

運命論

運命論  

ブラジルでの蝶の羽ばたきが
テキサスで竜巻を起こしたので
そっと、今
頁を閉じることで
ふたたび

時折、蒼白く

田園から伸びた
一本の糸が
南アフリカの
貝殻の破片に
結ばれ

鞄に忍ばせた
前世紀の詩集
その背表紙から
微かに溶け出した
ひと際、甘い
或る、メランコリー

眺めていた空色は、90年代のanthemのそれで

薄荷の薫り
換気扇が、憎らしく
ケラケラと、回っている

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過去詩②

過去詩②

過去詩です。ココア共和国さんに初めて佳作になった時の詩です。今とはだいぶ作風が違いますね。最近は筆名をダイゴ・マツモトに統一しようかと思っています。覚えてもらいやすい気がしており…。どうなんでしょうね?

メロウ / ダイゴ・マツモト

走りぬけた ピアノの 全力疾走
呼吸が くるしくても 言葉をさがす
月並みな 感傷を 鑑賞して
さかさまの コードの 六連符を弾く

問いかけたら 駄目だよと ぼ

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過去詩

過去詩

過去の詩を整理していて、初めてココア共和国で傑作選に入選した詩がでてきたので、掲載しときます。コロナの第一波くらいのときに書いた詩です。

50ぱーせんと / ダイゴ・マツモト

ぼくのすむまちは まいにちせんにん かんせんしている
そのうち ぼくも かんせんするのだろう
にゅーすをみると てのひらが じわっとするし
せすじも ぞわっとする
たぶんしんじゃう ひょっとしたら いきる
たぶんしんじゃ

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ー詩と形而上学ーNo.44

ー詩と形而上学ーNo.44

止まれ    

波は、確かに線になっていた

消えかけた、道路の止まれに
なぜそうなのかを、質問して
そして、確かに止まっていた

着彩する前の水彩画の描きかけの白い部分が
パースを意識する前に現前した不在の空間が
冬の空の水色を認識する前のブルーの直観が
未完成なまま完成していて、それを鑑賞した

親切な主旋律と交響楽
昨夜は、零下二度まで
冷えてしまったようで
雪の積もったピアノに
視線を交

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ー詩と形而上学ーNo.43

ー詩と形而上学ーNo.43

傘を差す、ブルー

この冬空の水色を
翻訳しようとして
誰も知らない
国のことばを探していた

この色彩の、にじんだ輪郭を
透き通る、青い温度の余韻を
風に秘められた、果実の予感を
何処かの国では、何と

洗剤のプラスチックの容器から
剥がしてベランダで干したような青
3度の気温を、パレットに並べて
抽象的な、風景画にした

ピンク色のレコードに
針を乗せる
回転し始めた音色と
旋回する旋律

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<ゆる募>
1)オンライン詩話会
→詩集や詩誌についての座談会
→投稿詩などの作品の事前相互論評
※「現代詩手帖」·「ユリイカ」等の入選を目指して
→詩誌の作成(年1回)
※当方、元デザイナーで制作環境有り

みたいな会に、月1回参加してもいいよという方、いたらコメントください。

ー詩と形而上学ーNo.41

ー詩と形而上学ーNo.41

GOOD MORNING   

 

抑揚のない声を
ミキサーにかけて
ジュースにする
今日の、搾りたての
かすれた声帯は
おはようございますが
うまく言えない

背景だと思ったら
風景画だった時のような
掴み損ねている
本日の、自分の居場所
頁を開いたら
繰り返される
契りのような、或る永遠性

ありのままの背中を現実として
只、生き延びていくだけでは
干乾びてしまうようなので
植物園の入場券

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ー詩と形而上学ーNo.39

ー詩と形而上学ーNo.39

花束

   

百万通りの感傷が
癖になり
ワイシャツの皺
裸になった襞
唇を通り越して
半音階の♯となった
そのまなざしは
魂の真ん中の
脆弱性を攻撃した

ウォーターハウスの
絵画の濃紺
裸体 
飾ろうとして
極めて透明に
無邪気な無色になった
なにもいらない
革の手帖も
氷点下の陽炎も

たてがみをゆらした
燃える馬を見た
俄に透き通った
凡庸なわたしの血
たっぷりと、お飲み
一際、燃え盛

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ー詩と形而上学ーNo.38

ー詩と形而上学ーNo.38

SUMMER SWEARTER 

  

半年前は
サマーセーターで
それに
理由を
探していた
通り抜ける
うつろうことを
恐れない
Ethicsで

田園を飛び立ち
都市に至る
一本の
糸のような
必然性で
一貫性が
あるようだ
どうやら
あなたとの間に

枯れなかった
向日葵
朝六時の
初冬の気配
誰もいない
それが似合う
ひろがる
青い塵

首都圏から
遠く離れた
美しい街の
踏切に

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ー詩と形而上学ーNo.37

ー詩と形而上学ーNo.37

或る、雨について  

或る、雨について
語ろうとしている
この白雨が
概念ではないことを知った

わたしの傘は
どこへいったのだろう

バスに乗り
列車に乗り
飛行機に乗り
南半球の最果てまで
旅をしておくれ

ボリビア辺りの
紺碧の
その空を
観てくればよい

雨は、要りますか
宿命のような雨は

ベランダで
金魚鉢が
鳴いている
かつての
青い季節のままで

冷えて
蒸発して
乱反射して

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ー詩と形而上学ーNo.35

ー詩と形而上学ーNo.35

脱意味のためのエチュード


不完全
声を掬う
淫靡たる血気

陽転
エチュード
喉を伝う
清浄な性交
破裂
暗転した
アラベスク
完全な
俄雨
排水溝が
Xだった
未熟な
こめかみ
結論は
湿り気のある
南アフリカ 
まだだ
戦闘が始まる

水泳着
顎鬚とカブール
まただ
ニュースキャスター
無条件
沈黙の憤怒
破水
破壊

笑っちゃうような
グレネード
笑っちゃうよねと
冷笑して
ハブられ

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ー詩と形而上学ーNo.34

ー詩と形而上学ーNo.34

完璧な青    

 

帰り道に見つけた
完璧な青が
高い空の天辺に
一滴のインクで
孤独な絵を描く

雲は遥か眼下にあり
飛行機の主翼の
揚力も必要なく
酸素の限界を超えて
魂が昇っていく

無重力
飛んでいる気分
万有引力に逆らって
ひとひらの羽根
羽ばたくまでもなく

無と銀色の宇宙の
中間地点にいる
二つ目の瞳に映った
白い鯨がよく見える
それは空を泳いでいる

詩性は音階になり
名前の

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ー詩と形而上学ーNo.33

ー詩と形而上学ーNo.33

この夏のこと

駅前から堤防に向かって歩いたその先にある
カーブミラーに映った黄昏
その、ブルーモーメント
被写体として最適化された
青の導きに身を任せながら
嫋やかな名画を透かしたような
嘗ての時代の肖像画を眺めている
黄色のスケッチブックを一枚破いては
機械的に折り畳んでいる

飛行機として秋空に放したその紙は
螺旋としても楕円としても不十分なまま
何かを語りかけるようにして
東部戦線の戦場で

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