見出し画像

夫のちんぽが入らない/こだま

他の人との性行為は上手くいくのに、旦那さんとの性行為のみ上手くいかない女性のエッセイ本である。

 
タイトルから下ネタを連想してしまうかもしれないが、下ネタがメインの内容ではない。

 
こだまさんは母親から罵られたり叩かれたりして生きてきて
田舎過ぎて学校での閉鎖的な人間関係も上手くいかず
大学進学を機に一人暮らしを始める。

その際、同じアパートに住んでいたのが旦那さんで
お互いに短期間で惹かれ合い
性行為が上手くいかないものの
それを知りつつも結婚する。

 
お互いに教員として働き、結婚生活は穏やかなものだったが
ある日、旦那さんが風俗通いをしていることを知ってしまう。
「自分の体が旦那さんを満足させられないのが悪い。」と知らないふりをして
自責が止まらないこだまさん。

 
また、こだまさんは担任をしていたが
学級崩壊をして精神的に追い詰められ、見知らぬ男性と次々に体を重ねることに。
旦那さんも、こだまさんも夫婦生活は穏やかなものなのに
パートナー以外とは性行為が上手くいくという切なさを改めて感じてしまう(この間も、夫婦感で頑張るが、やはり上手くいかずに空しさが残ってしまう)。

  
やがて、旦那さんも仕事ストレスからパニック障害になってしまう。

そして夫婦で性行為をしなくなって、こだまさんと旦那さんはより精神的な結びつきを強くしていく。

 
 
内容はこういったもので
「普通になりたいのに普通になれない人の苦しみ」がひたすらに書いてある本なのだ。

 
 
この本はタイトルのインパクトから気になりつつも
賛否両論ということも知っていた。
「夫婦で性行為が上手くいかないからって夫婦揃って外で発散している。何が純愛だ。」
私はそんなレビューを読んで
読むのを躊躇っていたが
文庫化し、読むことにした。

 
…読んでみて、本当に驚いた。

 
メインは虐待された子の心理や、仕事が上手くいかないことで病んでいく人の心理ではないか。
思いがけずに作者に感情移入してしまう自分がいて
一気に読んだ。
読みやすい文体でもある。

 
旦那さんが外で風俗通いをする。

私は仕方ないと思う。
性欲はあるのだから。
旦那さんはいちいち奥さんにそれを伝えているわけではないし
特定の誰かと浮気や不倫しているわけではない。
そして夫婦関係は良好。いいじゃないか。
段々、夫婦は男女から妻と夫になっていき
好きという感情量や質と性行為の頻度のバランスは崩れていく。
かえって、外で発散してくれた方が楽と思う女性も少なくはないだろう。

 
男性器が入らないと分かりながらも結婚し
初給料で指輪を買い
夫婦でケンカ一つない。

いい、旦那さんじゃないか。

 
そして、こだまさん。

精神的に追い詰められるとセックス依存になりやすい。
やはり、特定の誰かと浮気や不倫しているわけではなく
あくまで見知らぬ人と性行為のみなのだ。

 
あくまで相手から求められた時のみ相手が求めるままという姿に
レビューでは「気持ち悪い」と批判が多いが
虐待された過去や
学級崩壊をしてズタボロな心身で
誰かにすがりたくなるのはそれこそ「普通」ではないのか。

 
旦那さんと同業者だからこそ悩みを打ち明けられずに追い詰められていく様が痛々しく
ストレスで体調を崩していく自分と重ねてしまった。

 
 
色々とありつつも、「これが私なんだ、私達夫婦なんだ。」と肯定できるようになって本を書くまでの
こだまさんの心情を思うと 
とても切ない一冊だった。

画像1


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?