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被害妄想を克服できた日

 「俺は、あいつから攻撃されている・・。」
 
 だから俺は、あいつの憎らしいイメージが浮かび続け、あいつを攻撃する方法をあれこれ考えていた。
 また、あいつからいつ攻撃されるかもしれないと警戒し、あいつの出方を必死に想像して、夜もなかなか眠れなかった。
あいつとの戦闘に備えて、体じゅうに力が入り、歯を食いしばっていた。
 あいつが目の前にいる時は、戦うために俺の気分はハイテーションになり、疲れも痛みも感じなくなる不死身のような状態になった。
 
 「あいつのせいで俺は不利益を被り、俺の自由が邪魔されている。
俺は正しく、あいつは間違っている。
 だから俺の意見に反論するやつには、聞き耳をもたない。
 もし何かあるなら、力を持って打破してやる!」
 
 
 俺も、最初からこんな感じではなかった。
 他の人に俺の正直な気持ち・・特に親や身近な人と話すと、「それは絶対に間違いだ」と言い負かしてくる。語尾が荒く、俺を否定するような言い方をされるたびに、俺は俺の殻にこもってしまう。
 強い言葉で頭ごなしに言われた俺は、「俺を否定された」「攻撃された」と受け取ってしまし、同じくらいの勢いで「俺は正しい」と反発してしいた。
 
 
 こんな俺にも、あの人は俺の話を何もいわずに話を全て聞きいてくれ、「それはあなたの生き方で、価値観だと」と言ってくれ、変わらず付き合ってくれた人がいた。
 あの人と話をしていると、取り上げられた「見えない自信」が戻ってくる。
 「俺が大切にしている思い」を遠回りもしながらも聞いてくれるからだ。
  他の人と話すと、お互いの権利を守ろうと対立関係になるが、あの人は「共同」関係を作ってくれるので、なぜか俺の方から歩みよるような話や提案が出てきやすい。
 
 あの人と話をしていて、冷静に考えてみた。
 いつもころからか、疲れがたまってくると、つまらないことでもカッとしやすくなっていた。この頃から、不眠や食欲不振など身体の不調がでていた。
 
 最初は、疲れていても翌日には元気になり、嫌味の一言も、少しはストレスを感じるが、さらっと受け流せていた。
 この時、相手の攻撃力でいうと、「1の攻撃」くらい。俺のフルパワーが100としたら、100回攻撃されないと俺は倒れない。
 
 
 さらに疲労がたまると、不眠、食欲不振、頭の重さ、肩や腰の痛みなど体調不良が気になり始めていた。嫌味を言われると、カチン!とくる。寝てもスッキリせず、回復に2~3日かかる。以前ほどやる気も出なく、いろいろなことが面倒に感じるようになってきた。
 俺はどこかクヨクヨして、元気ではないこと、これまでとは違うことなどに、漠然と不安を感じながらも、人には心配をかけたくない、弱みを見せたくないと、俺自身が不調を否定し、ことさら頑張って仕事もして、元気アピールをしていた。
 この時、相手の攻撃力でいうと、「2~3の攻撃」くらい。俺のフルパワーが100としたら、30~50回攻撃されないと俺は倒れない。 
 
 このころから、臨戦態勢を取り続けるようになってきた。
 怒りの中、あいつが攻撃を受けるのではないかと警戒し、不安や恐怖を抱いてくる。さらに、次の攻撃を警戒し、「あいつ、今日も俺を無視するんじゃないか」などと、あいつの行動を追うことで、あいつの嫌なところがどんどん目についてくる。
 イライラと緊張が高まる一方で理性も働き、「冷静になれ・・」と俺自身に言い聞かせて我慢していた。同時に、理性が勝って一時的に感情を抑えれたとしても、時間がたつと、今度は強気に戦えなかった俺自身に険悪し始める。
 とても疲れやすく、あるタイミングで怒りが爆発して、大人げない対応したと自己嫌悪の繰り返しが積み重なっていく。
 
 
 最後は、相手の攻撃力でいうと、「4~30の攻撃」くらいになる。俺のフルパワーが100としたら、3~25回攻撃で俺は倒れてしまう。
 この時、俺は過剰な自責、不安感、無力感、負担感が現れ、うつ症状が現れ、まるで別人のようになり、「学校・仕事を辞めたい」「消えたい」「死んでしまいたい」と思う。
 あいつに会うと、殺し屋に遭遇したかのような恐怖や怒り、憎しみを感じる。
 この時の俺は、別人化している。
 
 
 最初の頃であれば、「その考え、おかしいのだは?」と言われると、俺も「そうかも」と考え直すことができる。
 しかし、疲労が重なり次の段階になると、理性よりも感情が強くなってきて、「俺は攻撃されている」「俺はダマされている」といった被害妄想に染まりやすくなる。
 
 
 
 あの人は俺に、
・眠れている?
・食べられている?
・疲れていない?
・頭が働くか?仕事がさばけているか?
・頭痛、腰痛、吐き気やめまいなど不定愁訴が続いていないか、
 身体のことを気にかけてくれた。
 
 そして、
・人が苦手になっていないか?
・過剰な不安感、自信低下、罪悪感はないか?
・やる気や興味が低下していないか?
・俺は搾取されている、不当な扱いを受けているなどの、被害者意識はないかと、心の事を気にかけてくれた。

 
 あの人によれば、俺が被害妄想者の時の、根本には「不安」があるとのことだ。
 確かに被害妄想者の俺の時は、かたくなに俺の信じている事を訴え、理解してもらいたいと思っている。俺の話を全部聞いてもらえることで、「俺は尊重してもらえた」と感じ、不安が安らいで「安心」できる。たとえ完全に同調してもらえなくても、不安が少し和らぎ、極端な思考が緩んでいくのが分かる。
 安心できるから、不眠も改善し、休養もとれ、理性が復活してくる。

 
 他の人は、「俺は間違っている」と全否定するが、
 あの人は、俺の価値観を押しつけても、俺の話を終えた後に、「あなたの言いたい事は分かったし、あなたの行動は認める」と俺の意見を尊重したうえで、「でも私は私の選択をする」とあの人の立場を言ってくれた。
 
 
 もし、俺が命がけで妄想を信じている場合は、疲労が深まるほどその考えは多くの場合に記憶化され、それが俺にとっての真実、事実として刻みこまれる。
 そして、真実、事実と俺が信じているものを否定され、その証拠を出されれば出されるほど俺は、「こいつは俺を陥れようとしている」と感じてしまうようだ。
 こんな時は、被害妄想的な思い込みの背景にある不安を少し緩めることはできても、俺の信念までは変えることは難しいのだ。
 
 
 
 俺は、この被害妄想を緩めるための「安心」行動を続けている
 
 とにかく8時間はごろごろ布団の中で寝ていて、疲れる前に休養するようにしている。
 そして、身体を緩めるように、ゆったりした呼吸や温かい飲み物を飲んだり、お風呂に入ったりする。
 何かあれば、好きなものを思いっきり食べ、音楽を聞いたり、ゲームや動画映画、映画や小説に没頭したり、軽い運動をしてみている。
 
 
 そして今の俺は・・
「あいつを、どうでもいい人」を感じている。

#あの選択をしたから

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