星来 香文子(ほしな かやこ)

カクヨム、ノベプラ、iらんど等にてオリジナル小説を公開中。絵も描きます。漫画家アシスタ…

星来 香文子(ほしな かやこ)

カクヨム、ノベプラ、iらんど等にてオリジナル小説を公開中。絵も描きます。漫画家アシスタント経験あり。 <受賞歴> 魔法のiらんど大賞2021コミック原作大賞恋愛ファンタジー部門特別賞受賞、KAC2021&KAC2022多数入賞……他

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魔法のiらんど大賞2021コミック原作大賞恋愛ファンタジー部門特別賞受賞しました!

お久しぶりです。 星来です。 タイトルにもある通り、「祓い屋見習いと半妖の雪女」のコミック原作版が魔法のiらんど大賞2021コミック原作大賞恋愛ファンタジー部門特別賞…

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『月宮殿の王弟殿下は怪奇話がお好き』イラストまとめ

「そこに、君の死体が埋まっている」番外編④「そこに、誰が埋まっていたか」後編

 私は怖くて、その後、どうやって家に帰ったのか覚えていません。  そのことを誰にも話せずにいました。それまで、兄が羨ましくてつい、辛く当たっていたこともあったの…

「そこに、君の死体が埋まっている」番外編④「そこに、誰が埋まっていたか」前編

 昔から、この町の町長は世襲制でした。  堀さんという方が、古くは戦国時代からこの辺の土地を持っていたそうで、大工だった私の父は、よく堀さんの依頼でこの町の色ん…

「そこに、君の死体が埋まっている」番外編③「そこに、僕の死体が埋まっている」後編

 信じられなかった。きっと、何かの冗談だと思った。  そうだろう?  だって、僕たちはあんなに愛し合っていたんだから。きっと、恥ずかしいんだ。 「ごめん。でも、こ…

「そこに、君の死体が埋まっている」番外編③「そこに、僕の死体が埋まっている」前編

 いつからそこにいたかなんて、そんな昔のことは忘れてしまった。始まりはなんだっただろうね。気づいた時にはそこにいた。ただ、それだけだよ。自分が何者かなんて、知り…

「そこに、君の死体が埋まっている」番外編②「そこに、誰の死体が埋まっていた」後編

 日曜日になっても、月曜日になっても、龍起くんは帰ってこなかった。土曜日に一緒に遊びに行ったというクラスメイトは大勢いて、確かにカラオケをしたと言っていた。途中…

「そこに、君の死体が埋まっている」番外編②「そこに、誰の死体が埋まっていた」前編

 自然豊かな田舎の町。唯一の小学校は私たちの次の代から一学年一クラスになり、この町の人口のほとんどが今ではほとんどが高齢者。そのうち、人口はどんどん減って、町自…

「そこに、君の死体が埋まっている」番外編①「そこに、あの子の死体は埋まっていた」後編

 親として、犯罪を犯しているなら、それを正してやらなければならないと、そう思ったからです。母親として当然の行為です。  カメラはその日のうちにネットで注文して、…

「そこに、君の死体が埋まっている」番外編①「そこに、あの子の死体は埋まっていた」前編

 おかしな話ですよね。  元夫から、息子の遺体が見つかったと聞いた時、最初はとても驚きました。  親権も養育権もすべてあちらにあるとはいえ、あの子は————龍起は…

「そこに、君の死体が埋まっている」最終話 君

 小学校の裏山。六年前の記憶を辿って、腰の高さまで伸びた雑草をかき分けて、たどり着いたのはあの夏よりも荒廃が進んでいた秘密基地。あの日以降、きっと誰もここへ来て…

「そこに、君の死体が埋まっている」第6話 誰

 あの頃から六年も経っている。それも、小学五年生から高校二年生という成長期の真っ只中。まだまだ身長は伸びている。体つきや声も大人へと成長している。別人と思われて…

「そこに、君の死体が埋まっている」第5話 今

「僕は事故に遭う前の半年くらいの記憶がない。だから、君との間に何があったか、何も覚えていなんだ。君が四年生の秋に転校して来たことは知っている。でも、動画を見て僕…

「そこに、君の死体が埋まっている」第4話 拠

 堀龍起は、相変わらずあの大きな家に住んでいた。西洋風だったガーデンは六年前の白いテーブルと椅子がなくなって、アンティーク調のものに変わっていた。ピザ窯とコンロ…

「そこに、君の死体が埋まっている」第3話 嫉

 幸いにも、俺は堀の後ろの席だ。いつでも背後から刺し殺すことだってできる。ライターでも持って来れば、火を点けて燃やすことだって————体だって、あの頃は俺の方が…

「そこに、君の死体が埋まっている」第2話 再

 あの夏から六年。盆も正月も、一度もあの町には戻っていなかった。転校してすぐにバスケ部活に入り、部活を口実にして避け続けた。あの町で起きた出来事は思い出さないよ…

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魔法のiらんど大賞2021コミック原作大賞恋愛ファンタジー部門特別賞受賞しました!

お久しぶりです。 星来です。 タイトルにもある通り、「祓い屋見習いと半妖の雪女」のコミック原作版が魔法のiらんど大賞2021コミック原作大賞恋愛ファンタジー部門特別賞受賞しました! わああああああああ三└(卍^o^)卍 特別賞ということで、コミカライズが確定したわけではありません(確率的にはめっちゃ低いです)が、KADOKAWA様のコンテストで受賞できたことはとっても嬉しくてですね!!!やばいです!!! 原作小説の方は、カクヨムなどでも掲載してい

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『月宮殿の王弟殿下は怪奇話がお好き』イラストまとめ

「そこに、君の死体が埋まっている」番外編④「そこに、誰が埋まっていたか」後編

 私は怖くて、その後、どうやって家に帰ったのか覚えていません。  そのことを誰にも話せずにいました。それまで、兄が羨ましくてつい、辛く当たっていたこともあったのですが、私は態度を改めました。  兄は、あんなことをして、あんなことをさせられて、私たち家族の生活を守ろうとしているのだと知ったからです。できるだけ、兄には優しく接するようになりました。  けれど、兄は高校二年生の時、突然死にました。警察は遺書が残っていたので自殺と判断しましたが、その内容は嘘ばかり。私はすぐに兄の

「そこに、君の死体が埋まっている」番外編④「そこに、誰が埋まっていたか」前編

 昔から、この町の町長は世襲制でした。  堀さんという方が、古くは戦国時代からこの辺の土地を持っていたそうで、大工だった私の父は、よく堀さんの依頼でこの町の色んな建物の建築に関わっていました。代々そうなのですが、この町では堀さん一家に誰も逆らえないんですよ。  もし、何か堀さんの機嫌を損ねるようなことでもしてしまえば、この町で普通に生活するのは難しいといわれていました。今は、だいぶ人口も減って、時代も変わりましたから、そういう圧力みたいなものも昔ほどはありませんが、一応、まだ

「そこに、君の死体が埋まっている」番外編③「そこに、僕の死体が埋まっている」後編

 信じられなかった。きっと、何かの冗談だと思った。  そうだろう?  だって、僕たちはあんなに愛し合っていたんだから。きっと、恥ずかしいんだ。 「ごめん。でも、こうでもしないと、理くんは逃げるだろう?」 「放せよ……!!」 「嫌だ、ねぇ、教えてよ。さっきの続き」  後ろから君を抱きしめ、肩に顎を乗せ、熱くなっている下半身を君に押し当ててた。それがあの夏の二人を彷彿とさせて、僕は幸せだった。実際に君に触れると、全然違う。君の体は思っていたよりずっと冷たくて、僕の体温で温めて

「そこに、君の死体が埋まっている」番外編③「そこに、僕の死体が埋まっている」前編

 いつからそこにいたかなんて、そんな昔のことは忘れてしまった。始まりはなんだっただろうね。気づいた時にはそこにいた。ただ、それだけだよ。自分が何者かなんて、知りはしない。ただ、そこにいた。ずっと。多分、この場所に名前すらなかったずっと前から。ずっと、ずっと、そこにいた。  いくつも時間が流れて、誰かがここに住み始めた。それから、死んで、埋められたり、放って置かれて、鳥や虫が彼らをついばんで、腐って、溶けて、土になる。風に流れて舞い落ちて、雨が降って、固まって、揺れて、流れて

「そこに、君の死体が埋まっている」番外編②「そこに、誰の死体が埋まっていた」後編

 日曜日になっても、月曜日になっても、龍起くんは帰ってこなかった。土曜日に一緒に遊びに行ったというクラスメイトは大勢いて、確かにカラオケをしたと言っていた。途中で帰ったらしいが、その後の足取りは、まったく不明だった。田舎のこの町には、防犯カメラなんてほとんど設置されていない。  そして、もう一人、龍起くんと一緒にいなくなったのが、五月に転校して来たという山中理くんという同級生だった。警察署で山中くんの母親と会ったけど、山中くんは小学四年生の秋から小学五年生夏までこの町で暮らし

「そこに、君の死体が埋まっている」番外編②「そこに、誰の死体が埋まっていた」前編

 自然豊かな田舎の町。唯一の小学校は私たちの次の代から一学年一クラスになり、この町の人口のほとんどが今ではほとんどが高齢者。そのうち、人口はどんどん減って、町自体がなくなっていくんだろうなと、子供ながらにふと考えたことがある。どこにでもある田舎。土地は広いから、大型ショッピングモールだけはあって、町外からやってくる人はいるけれど、そこまでの町。こんな町はどこにでもある。  けれど、そんなこの町の中に、唯一、一軒だけ次元の違う家があった。  先代の町長の家だ。まるで洋館のよう

「そこに、君の死体が埋まっている」番外編①「そこに、あの子の死体は埋まっていた」後編

 親として、犯罪を犯しているなら、それを正してやらなければならないと、そう思ったからです。母親として当然の行為です。  カメラはその日のうちにネットで注文して、操作も簡単なものを選びました。ペットや小さい子供の様子を離れたところで見守るのに使うものです。今時、みんな使っているもので、買っても何も不審に思われることはありません。  そうして、私はあの子の部屋での様子を監視するようになりました。そうしたら、あの子……やっぱり、変だったんです。学校から普通に帰って来て、部屋で勉強

「そこに、君の死体が埋まっている」番外編①「そこに、あの子の死体は埋まっていた」前編

 おかしな話ですよね。  元夫から、息子の遺体が見つかったと聞いた時、最初はとても驚きました。  親権も養育権もすべてあちらにあるとはいえ、あの子は————龍起は高校二年生です。今年の初めに一度会った時、身長は百七十五センチを超えていました。私の身長なんて、もう何年も前に追い越されてしまっていたのに、警察署で見せられたあの子の骨は、どう見ても小さかったんです。多分、私と同じくらいの身長でした。小学生五年生の頃だったと思います。あの子がそれくらいの身長だったのは……  遺体が

「そこに、君の死体が埋まっている」最終話 君

 小学校の裏山。六年前の記憶を辿って、腰の高さまで伸びた雑草をかき分けて、たどり着いたのはあの夏よりも荒廃が進んでいた秘密基地。あの日以降、きっと誰もここへ来ていない。南京錠のかかった、錆びついた緑色のトタンの扉。  周りに落ちていた適当な石を掴んで、無理やり鍵をこじ開ける。彼を埋める時に使った大きなシャベルは、雨で洗い流されて、泥も血も残っていない状態だったのを、この小屋の中に放り投げた。とても重たくて、翌日ひどい筋肉痛になったことを思い出した。  埃まみれで転がっていたそ

「そこに、君の死体が埋まっている」第6話 誰

 あの頃から六年も経っている。それも、小学五年生から高校二年生という成長期の真っ只中。まだまだ身長は伸びている。体つきや声も大人へと成長している。別人と思われてもおかしくないほどに変わっているのだから、違うのは当たり前のことだ。その過程で、黒子が薄くなった可能性もなくはない。黒子なんて手術で消すことができる。でも、それでも、これは違う。  俺は、違うと思った。そう、感じた。理由はわからない。ただ、違う。そう感じた。よく似た別人。彼のふりをしている偽物だと思った。 「何するん

「そこに、君の死体が埋まっている」第5話 今

「僕は事故に遭う前の半年くらいの記憶がない。だから、君との間に何があったか、何も覚えていなんだ。君が四年生の秋に転校して来たことは知っている。でも、動画を見て僕たちのが愛し合っていたことがわかった」  堀の話によれば、事故の衝撃で記憶がないのは五年生の春頃から事故にあった夏休みの間と、意識不明で入院していた数日間。俺が最初にこの町に転校して来たのは四年生の秋頃で、その年の秋と冬の記憶はある。そもそも、記憶喪失であることが判明した時は、その記憶すらなかったらしい。自分が何者か

「そこに、君の死体が埋まっている」第4話 拠

 堀龍起は、相変わらずあの大きな家に住んでいた。西洋風だったガーデンは六年前の白いテーブルと椅子がなくなって、アンティーク調のものに変わっていた。ピザ窯とコンロが増えているのは、料理研究家だという新しい母親の影響だろう。  部屋の位置は変わっていない。二階の南向きの窓がある部屋だ。朝は決まって、七時に起きてカーテンを開け、眠そうな表情でその日の天気を確認している。家を出るのは、七時五十分。学校までは徒歩で約二十分ほど。朝のホームルームが始まるのは八時二十分からだが、いつもゆっ

「そこに、君の死体が埋まっている」第3話 嫉

 幸いにも、俺は堀の後ろの席だ。いつでも背後から刺し殺すことだってできる。ライターでも持って来れば、火を点けて燃やすことだって————体だって、あの頃は俺の方が小さかったが、今は俺の方が大きい。バスケ部で鍛えていたし、体力も俺の方が上のはずだ。だが、俺は堀と心中するつもりはない。  校内で、それも教室で堂々と人を殺してしまっては、こいつを殺しても待っているのは別の地獄だろう。俺には未来がある。まだ、十六歳だ。うちは無駄に長寿の家系だから、日本人の平均寿命くらいは最低でも生きる

「そこに、君の死体が埋まっている」第2話 再

 あの夏から六年。盆も正月も、一度もあの町には戻っていなかった。転校してすぐにバスケ部活に入り、部活を口実にして避け続けた。あの町で起きた出来事は思い出さないように、必死に部活に打ち込んで、部活を引退した後は、高校受験を口実にして……  全部、あの夏に置いてきた。  俺のところに、警察が訪ねてきたことは一度もない。  テレビやネットで山中で死体が発見されたというニュースを目にしたときは、彼のことじゃないかと何度も不安になったが、彼の死体は、まだ見つかってはいないようだった。