見出し画像

【読書】転換点: 社会的流行の仕組み

スマホやパソコンから古くはルーズソックスやたまごっちなど、特定のモノやサービス、アイデアは、ある日から突然、爆発的に使用者が増え出し、まるで疫病が蔓延するがごとく社会全体に爆発的に拡散していく。その社会現象に切り込み、体系立ててそのプロセスを整理したマルコム・グラッドウェルの一冊。

記事要約

  • 特定のモノ・サービスが爆発的に社会普及することがあるが、その現象はepidemics/伝染病の感染拡大パターンに類似。

  • 伝染病ではある日を境に感染が爆発する。この転換点/tipping pointに到達するには、3つの原則が観測される。

  • モノやサービスを売り出したい人にとっては参考になる気がした。




1.本の紹介

今日の一冊は「The Tipping Point - how little things can make a big difference」(2000年刊行)。邦訳あり(「ティッピング・ポイント―なんとなくして「小さな変化」が「大きな変化」を生み出すか」2000年刊行、飛鳥新社)。

米国コラムニストであるマルコム・グラッドウェル(Malcolm Gladwell)著。

マルコム・グラッドウェル
マルコム・グラッドウェル(出典: Britannica

ある日爆発的に売れ出した商品、すごい勢いで広がっていったサービスなどにフォーカス。なぜそのモノ・サービスがすごい勢いで社会に拡散したのか、その要因を突き止めた一冊。

随分古い映像だが、著者が本の概要を対談形式で説明している。著者は少し緊張気味である意味新鮮。

2.本の概要

物語はハッシュパピーという靴の話から始まる。米国で大昔によく使用されていた靴だが、90年代にはもうすっかり下火になり生産自体ストップするかどうかまで来ていた。しかし90年代半ば突如として人気が復活し始めた

ハッシュパピー
ハッシュパピー

この手の現象は何も靴に限ったことではなく、美味しいけどたいして人が入っていなかったレストランが爆発的な人気を博すようになる、たいして売れてなかった本が急に売り上げを伸ばしてベストセラーになる、治安の悪かった町が、ある日を境に治安が良くなり始める等の現象が観測される。

それはなぜか?

これらの現象は、epidemics/伝染病の感染拡大パターンに下記の点で類似しているという。

  • ウイルスのように、人から人へと伝わっていくところ/contagious

  • 様々な小さな要因(例: 病院がない、金がない、抵抗力が下がっている等々)が積み重なって伝染拡大していくところ、

  • ある時点(tipping point/転換期)を迎えると爆発的に伝染しだすところ

そして特定のアイデアなり商品なりが、伝染病のように爆発的に普及しだすtipping pointに到達するには、3つの原則が観測される。

  1. 少人数の法則/ the Law of Few

  2. 粘着性ファクター/the Stickiness Factor

  3. 文脈の力/the Power of Context

第一に少人数の法則/ the Law of Few。アイデアや商品が、類いまれなる社会的ギフト/social giftsを持つ人間の目に止まる必要がある。それはすさまじい人脈を持つConnector(例: インフルエンサー?)だったり、人脈はないが誰からも信頼されるほど確信をもって物事を分析し説明してくれるMaven/物知り(例: 出木杉くん?)、人々を容易に説得できるSalesmanだ。

第二に粘着性ファクター/the Stickiness Factor。これは、アイデアや商品自体の質は同じでも、それの見せ方や構成等、ほんの些細な仕掛けを盛り込むことで人々の記憶に残りやすいようにする(粘着性をあげる)ことを指す。

第三に文脈の力/the Power of Context。伝染病の拡大はウイルス性質自体もそうだが、それ以上に、人々の影響状態や医療サービスの質、季節等の環境に左右される。都市の犯罪率も、都市空間の劣悪さ(Graphitties, broken windowsなど)と、相関関係がある。そして育児環境にしても、良い家族に生まれたが劣悪な地域で育つ子供の方が、劣悪な家族だが良い地域で育つ子供より、非行に走りやすい(つまり子供を取り巻くコミュニティーが大事)。

以上の理論的考察を踏まえて、特定の靴がバカ売れした話、売れてないライターが書いた本があれよあれよという間にベストセラーになっていった話、文脈の力を使い、町中の壊れた窓ガラス修復&落書き削除により犯罪率を下げたNYシティの話、そして有名人による自殺が社会的に伝染する話などが盛り沢山。

興味深かったのは、人が覚えられる限界値としての7という数字があるという研究と人が他人と有意義な関係を築ける人数として150迄という研究結果だが、詳細は割愛。

3.感想

さすがのマルコムさん、もとジャーナリストだけあって読ませる文章を書く。テーマに関していくつか仮説を立て、既存研究や一例を活用してそれを立証していく書き方。

本の内容はマーケティングを考えさせられる話。どうしたら自分の売り出したいものをバズらせられるか。そのためには人が必要であり、商品自体も一捻りさせて、適切な時と場所を選ぶ、ということだ。適当にやってたんじゃダメ。色々と参考になる。

最後に一言

結構面白い本。サクッと読めるので目をとおしてみるのも悪くない。

なお、どう著者は社会的成功をおさめる人々の傾向と要因を分析した「Outliers」書いているが、こちらの方もおすすめ。


なお本記事は、あくまで私がポイントだなと思った部分のみ書き出しまとめているだけです。この概要記事がきっかけとなり、この本に興味を持っていただけたら幸いに思います。


あわせて他の記事もご覧いただけたら幸いに思います。


この記事が参加している募集

推薦図書

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?