太陽が容赦なく照りつける2024年の東京。

雑踏の中を一人、うつろな目で歩く男がいた。
それは、半世紀前に自決したはずの三島由紀夫だった。

市ヶ谷に足を踏み入れると、かつての自衛隊駐屯地の跡地はビルに置き換わっていた。
三島は、面影のない変わってしまった街に戸惑いを感じた。

かつて自分の死体が横たわっていたバルコニーを見上げると、そこは観光客でごった返していた。

三島はバルコニーに足を踏み入れ、かつての忌まわしい記憶に苛まれた。

「忠誠に向かって死んだのだ…」

涙が頬を伝うのを感じた。

しかし、周囲の人々は彼の悲しみには全く気づかなかった。
彼らは自分たちの世界に夢中で、彼を幽霊のように透かして通り過ぎていった。

三島は市ヶ谷をさまよい、かつての面影を求めた。

しかし、それはもうどこにもなかった。

現代の東京は、彼が生きた時代とはかけ離れた、無機質で冷たい世界だった。

それでも、三島の心には東京への思いがくすぶっていた。

彼は迷いながら、かつて自分が住んだ家へと向かった。

明るい色に舗装されたアスファルトに立つと、彼は自分が歴史から取り残された存在であることを痛感した。

彼の名前は教科書に載り、文学史に刻まれながらも、彼はもうこの世の人ではなかった。

三島はため息をついた。
「私はここにいてはいけないのだ…」

彼は自分の家が取り壊されていた場所から立ち去り、半蔵門へと歩いていった。
現代の東京が受け入れられないことを悟ったのだ。

日が落ちると、三島はプリンス通りを歩き、皇居の堀端を歩いた。
水面に映る自分の姿を見ながら、彼は自らの死を受け入れた。

「私はもう、過去の人間だ…」

三島は空を見上げると、淡い星明かりが瞬いていた。
その光は、彼の魂が故郷へと帰っていく道筋を示しているように思えた。

星を見つめながら、三島は消え去っていった。
自らの死と向き合い、歴史の闇へと還っていったのだ。