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長期経営計画のすすめ Ⅰ.方針_1.目的を決める



①長期経営計画は なに? で、なぜつくるのか?

中期経営計画の定義においては関連する多くの論文があり、そこで様々な定義がされています。しかし長期経営計画の定義は学術的な観点含め少ない印象です。そこで私なりの定義は以下となります。

『長期経営計画とは、わが社が長期的に実現したい未来、およびその時の事業構成を明らかにし、それを実現するための計画である』

そして長期経営計画を構成する要素については、このnoteの最後に記載している目次であり、今後、その内容を連載していきます。

では、これまで長期経営計画をつくってなかった経営者が、なぜ長期経営計画をつくろう!と思うのでしょうか。私のこれまでの経験から、その動機やタイミングは3つあると考えます。

一つ目は『やりたいことの出現や変化』です。

「将来、こんな社会を実現したい」「社会の中でわが社はこうありたい」「この問題を自分たちの手で解消したい」という思いが生まれたり、思いが進化したり、変化したりした時に、どうすればこの思いは実現するのかを考えます。そしてテーマ的にも長期的な期間を必要とすることが多くなり、長期経営計画を策定していくことになるでしょう。このような、やりたいことの出現や変化が動機となるでしょう。

二つ目は『不安の解消』です。

長期的な業績への不安、つまり足元の業績に問題はないけれど、この業績が3年後、5年後、10年後も継続するのかという不安です。

そして、その不安の原因となっている市場への不安、つまり事業を行っている市場が今後も成長していくのか、維持できるのか、衰退していくのかという不安です。

さらに顧客の変化への不安です。自社が提供している価値が減少していく、もしくは同じ価値を安くで提供する競合が出現する、あるいは自社の製品やサービスが不要となるようなイノベーションが起こる。このような長期的な不安に対する解消が動機となるでしょう。

三つ目は『経営者の交代』です。

新たに経営者になった人は、これまでの経営者の取り組みを受けて、自分はこうしよう、このように改革しよう、という考えが生まれるでしょう。そんな時には自分が考えていることを可視化し、長期的な方向性を示していくことになります。

また今の経営者が社長交代を考えた時には、より良い状態で次の経営者にバトンタッチしたいと思うでしょう。事業基盤を安定させたり、財務状態を改善させたいと考えるはずです。このような、経営者の交代がタイミングとなるでしょう。


②誰のためにつくるのか?

経営者が長期経営計画をつくろうと決めた時、この計画は一体、誰のためにつくるのか?と考えると思います。私はその対象は3つだと考えます。

一つは『自分のため』です。

①で記載した3つの動機やタイミングは経営者自身から内発的に生まれたことであり、長期経営計画が完成したときには不安が和らいだり、意欲が高まったり、さらなる責任感がわいたりすることでしょう。

二つ目は『社員のため』です。

今の会社が好きで不満もなく長く勤めようと思っている社員だとしても、5年後、10年後、20年後も自社が安泰なのか、多少は不安があるでしょう。

また国内の生産年齢人口が年々、長期的に減少することは予測されており、社員にとって転職の機会は増えるでしょう。

また人の価値観は多様化しており、自分の価値観にあった会社で働きたいと思う社員は増えるでしょう。

そんな社員たちに向けて、自社が実現したい社会や、大切にする価値観、成長への道筋や業績の安定などを長期的に示すことの重要性は、どんどん高まってくるでしょう。

三つ目は『株主や取引先のため』です。

上場企業だと株主への定期的な報告が求められます。業績結果や見通し、短期的な戦略の報告は必要ですが、株主は長期的な計画も期待します。この経営者は会社を長期的に大きく成長できるのか?、そのためにどのような計画を立て、投資を実行していくのか? について、とても関心があるでしょう。

金融機関も融資先の企業が長期的にどのように成長しようとしているのか?、そのためにどれだけの資金が必要になるのか? はとても関心があるでしょう。経営者としては長期経営計画を示し、金融機関に理解いただき、資金を確保しなければいけません。

また仕入れ先には今後も長期的に安定的に材料等を提供してもらうために、協業パートナーには安心して一緒にビジネスを継続していくために長期的な計画を作成し、説明することはプラスに働くでしょう。


③計画は実現するのか?

ビジネスを取り巻く環境が大きく、早く変化する中、5年や10年も先の計画をつくって実現するのか?というのは、率直な意見だと思います。私の回答は『実現する可能性が高い』です。

そもそも計画をつくらなければ実現する、しないはありません。よって、つくったけれども実現するのか?という問いになるのですが、労力や時間、費用を費やし、社員を巻き込んでつくった計画は、経営者自身や作成に関わった方々の中で大きな存在感が生まれます。つまり意識するようになるのです。人は意識すると、それがうまくいっている、うまくいってないと評価するようになり、うまくいくように行動を起こします。行動を起こせば、そこに変化が生まれ、変化に対応していけば、成果につながっていきます。

実務的な話をすれば、長期計画といえど、最終的には今期や来期やるべきことのアクションに落とし込みますし、定期的にモニタリングし、毎年見直していくことになります。経営者や経営幹部になる方は、つくった計画は成し遂げたい、見直しながらも到達したい、と思う方が多いでしょう。その意志が長期計画を実現に近づけていき、結果、実現する可能性が高くなると考えています。

念ずれば通ずる。私は期間が長くなろうとも、できる限り具体的にイメージできれば、実現する可能性が高くなると考えており、長期経営計画をつくる意味は必ずあると信じています。


【目次(案)】

Ⅰ 方針
1.  目的を決める ←今回
2.  期間・更新を決める ←次回

3.  体制を決める
4.  スケジュールを決める
5.  アウトラインを決める
Column 事例を調査する

Ⅱ 企業戦略
1.  現状のビジョン・ミッション・バリューを確認する
2.  過去の全社業績を分析する
3.  現在の事業ポートフォリオを可視化する
4.  経営資源を可視化する
5.  メガトレンドを調査する
6.  今後のビジョン・ミッション・バリューを決める
7.  企業ドメインを決める
8.  目指す事業ポートフォリオを決める
9.  成長戦略を決める
10. 新規事業・M&A戦略を決める
11.  一次業績計画を策定する
12.  一次投資枠を設定する
13.  全社一次要員計画を策定する
14. TOPマネジメントを決定する
15.  企業戦略を事業戦略に展開する
Column 事業承継に向けた長期経営計画

Ⅲ 事業戦略
1.  過去の事業業績を分析する
2.  現在の製品ポートフォリオを可視化する
3.  外部環境を分析する
4.  企業戦略を理解する
5.  ミッション・バリューの見直しを検討する
6.  事業ドメインを決める
7.  目指す製品ポートフォリオを決める
8.  成長戦略を決める
9.  売上計画を精緻化する
10. 要員計画を精緻化する
11. 投資計画を精緻化する
12. 損益計画を精緻化する
13. ロードマップ・KPIを決める
14. 事業戦略を企業戦略へフィードバックする
Column 経営計画の先行研究

 Ⅳ 計画完成
1.  売上計画を確定させる
2.  投資計画を確定させる
3.  要員計画を確定させる
4.  採用計画を確定させる
5.  組織計画を確定させる
6.  人材育成計画を決める
7.  新規事業・M&A計画を決める
8.  リスク管理計画を決める
9.  IT投資計画を決める
10.  財務三表計画を決める
11.  ロードマップ・KPIを決める
12.  モニタリング計画を決める
13.  コミュニケーションを開始する
Column 社員がワクワクする長期経営計画

最後に副業で経営している会社と私の著書を紹介をさせてください。


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