家族は夫・4歳息子・豆柴きなこ。うつ病療養中。目標は『自分に優しく過ごせるようになるこ…

家族は夫・4歳息子・豆柴きなこ。うつ病療養中。目標は『自分に優しく過ごせるようになること』

記事一覧

【小説】ワーママ!vol.2-2

前回の話はこちらから。 その後も、何度か“亜美さん”の都合がつかない時にシッターとしてアルバイトに呼ばれた。真波が予想以上に公佳に懐いたという点も大きかった。 …

鈴
5年前
4

【小説】ワーママ!vol.2-1

2.田嶋公佳 二十五歳 パートナー・子供有り 「キミちゃん、おかえりなさーい!!」 玄関を開けると、真波の元気な声が出迎えてくれた。 「真波(まなみ)、ただいま。お米…

鈴
5年前
1

【小説】ワーママ!vol.1-2

前回の話はこちらから。 復帰して最初の一年は、はっきり言って殆ど記憶が無い。 咲良は毎週のように風邪を引き、発熱し、時に感染症にかかって保育園を休んだ。その度に…

鈴
5年前

【小説】ワーママ!vol.1-1

1.国立映美 二十九歳 シングルマザー 「申し訳ありませんが、お先に失礼します!」 国立映美(くにたちえみ)は同僚達にほぼ九十度の角度で頭を下げると、素早く職場を後…

鈴
5年前

【小説】しあわせ

私は幼い頃、「しあわせ」を「しやわせ」と言っていた。 美味しいものを食べた時。 遊園地に行って楽しかった時。 欲しかったものを買ってもらった時。 「しやわせ~」と言…

鈴
5年前
3

【小説】あの日の君

今日も暑い。 外ではシャワシャワシャワと蝉の声が響いている。 まるで木そのものが鳴っているかのような大きな音だ。 その音を聞きながら、千鶴子(ちづこ)は線香を灯した…

鈴
5年前

【小説】おにぎり屋一粒種

「はぁぁ、つかれた…」 無意識に声が漏れる程に、美帆は疲弊していた。 担当している仕事にトラブルが発生し、ここ10日は終電ギリギリでの帰宅が続いている。 夕飯は、同…

鈴
5年前
【小説】ワーママ!vol.2-2

【小説】ワーママ!vol.2-2

前回の話はこちらから。

その後も、何度か“亜美さん”の都合がつかない時にシッターとしてアルバイトに呼ばれた。真波が予想以上に公佳に懐いたという点も大きかった。
ほぼ毎日、真波から「今日はキミちゃんは来ないの?」と聞かれると百合香に苦笑まじりに言われ、とても嬉しかった。
百合香を好きということもあったが、それ以上に真波が可愛く、成長を見守りたいという気持ちも大きくなってきていたのだ。
また、バイト

もっとみる
【小説】ワーママ!vol.2-1

【小説】ワーママ!vol.2-1

2.田嶋公佳 二十五歳 パートナー・子供有り

「キミちゃん、おかえりなさーい!!」
玄関を開けると、真波の元気な声が出迎えてくれた。
「真波(まなみ)、ただいま。お米研いでおいてくれた?」
「バッチリだよー。あ、ママは打ち合わせで遅くなるって。さっきLINEあったよ」
「うん、私にも届いてた。てか、グループLINEじゃん。じゃあ先に私達だけで食べてようか。今日は鍋だよ」
「やったあ!鍋の美味し

もっとみる
【小説】ワーママ!vol.1-2

【小説】ワーママ!vol.1-2

前回の話はこちらから。

復帰して最初の一年は、はっきり言って殆ど記憶が無い。
咲良は毎週のように風邪を引き、発熱し、時に感染症にかかって保育園を休んだ。その度に映美は早退してお迎えに行き、咲良が回復するまで会社を休むことになる。
運良く病児保育の枠が取れても、病院を受診した上で預けに行かなくてはならない為、遅刻は免れない。病院が混んでいた時などは、お昼頃に這々の体で出社し、休憩を取る暇もなく数時

もっとみる
【小説】ワーママ!vol.1-1

【小説】ワーママ!vol.1-1

1.国立映美 二十九歳 シングルマザー

「申し訳ありませんが、お先に失礼します!」
国立映美(くにたちえみ)は同僚達にほぼ九十度の角度で頭を下げると、素早く職場を後にした。
昼休みが終わり午後の仕事に取り掛かったところで、娘の咲良(さくら)の通っている保育園から映美の携帯電話へ着信があった。
咲良が発熱したので迎えに来て欲しいという連絡だ。
片付けなくてはならない仕事は幾つも残っていたが、同じ

もっとみる
【小説】しあわせ

【小説】しあわせ

私は幼い頃、「しあわせ」を「しやわせ」と言っていた。
美味しいものを食べた時。
遊園地に行って楽しかった時。
欲しかったものを買ってもらった時。
「しやわせ~」と言いながら“にしゃっ”と笑った私の顔を、父も母も微笑みながら「とっても可愛かったよ」と語ってくれた。

私が就職した年、父母は交通事故で他界した。
実家のクローゼットに仕舞われていたアルバムには、「しやわせ」な顔をして笑う私の写真が年齢順

もっとみる
【小説】あの日の君

【小説】あの日の君

今日も暑い。
外ではシャワシャワシャワと蝉の声が響いている。
まるで木そのものが鳴っているかのような大きな音だ。
その音を聞きながら、千鶴子(ちづこ)は線香を灯した仏壇に頂きものの最中を供えた。
夫の敏明(としあき)が亡くなって5年が経つ。
定年退職後も嘱託として勤め、その後も雇いのマンション管理人の求人を見つけて働いていた。亡くなったのは、そこを退職してすぐのことだ。

「散歩に行く」と家を出た

もっとみる
【小説】おにぎり屋一粒種

【小説】おにぎり屋一粒種

「はぁぁ、つかれた…」

無意識に声が漏れる程に、美帆は疲弊していた。
担当している仕事にトラブルが発生し、ここ10日は終電ギリギリでの帰宅が続いている。
夕飯は、同期の夏希が差し入れてくれるコンビニ弁当かファストフードだ。
外に食べに行く余裕が無い訳ではないが、少しでも早くトラブルの元となったバグを修正したい。
なので、夏希の好意はとてもありがたいし、毎日違うもの(一昨日はハンバーガーセット、昨

もっとみる