「助けて」と言いたい人ほど、声を上げることが難しい
ずっとずっと、遠い昔の記憶。あれはたしか私がまだ幼稚園生のころだった。なにかをして父親を怒らせた私は、父親に体を強く床に押し付けられたことがある。父親を怒らせるとよくあることだった。その間、母親は我関せずにいる。私が泣いて助けを求めているなか、ラーメンを食べていることもあった。父親のあの殺気めいた表情を思い出しては、今でも恐怖で体が震えてしまう。ギャンブルばかりでほとんど家にいなかった父親との記憶といえば、こんなものばかりだ。
虐待を、そして虐待によって救えなかった命をひと