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映画

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2022年4月の記事一覧

コーダあいのうたのログラインは素晴らしい!

遅ばせながら『コーダ あいのうた』を見てきました。 アカデミー賞主要3部門受賞、サンダンス映画祭の4冠に輝いた評判の作品ですね。 原作はフランス映画の『エール』で、それをリメイクしたようです。 正直この映画って、「見なくても面白いだろうな」っていうのがわかりました。前評判とか関係なく見たいと思わされます。 というのもログラインが秀逸すぎるんです。 ログラインとは作品の説明を一行で表現することです。 noteで何回か書いているんですが、このログラインが作品の面白さを

#22 インド映画についての愛を語る

 先日の「#21 インドについての愛を語る」の続編。  最近一緒に飲むたびに、あまりにもスケさんがNetflixいいよーいいよーとまるで呪いの如く囁くものだから、ついついわたしも「えーフリックスしちゃうよー」と返事をして、いつの間にかNetflixに加入してしまっていた。しみじみ適当な受け答えはするもんじゃないと思う今日この頃。  最初「フリックス」という言葉だけを聞いたときに、もしや「フリークス」(偏愛的なマニアあるいは変人のことを指す)のことかと思ったのだが、flic

再生

ナム・ジュヒョクはハマリ役に違いないとやっと観た。

原作者の田辺聖子氏は大阪文学学校の大先輩にあたるひとだ。 もちろんかなり昔の卒業生だから面識はない。 彼女の書く恋愛小説の凄さは現代にも通用する色褪せなさで並ぶ人はなかなかいない。 そんな人が書いたこの原作をずっと放置していた。犬童監督作品の大評判もアニメ化の評判も聞いていたけれど観なかった。 今回韓国版がU-NEXTに有料だけど入って主演がナム・ジュヒョクだと知ってやっとやっと観た。 静謐で詩のような作品になるだろうという予感があったからだ。 やはり、そうだった。 ナムジュヒョクをキャストに据える監督を信用して良かった。 私のジョゼはこの映画にする。 恋と愛の重さの違いも 時間にさらされる儚さも この映画のなかにある。

【その初恋は淡く純粋で恐ろしい】『ぼくのエリ 200歳の少女』感想

最近『ファイアパンチ』、『チェーンソーマン』の藤本タツキ先生が短編漫画を発表し話題になっていたが、その短編の元ネタの一つとして話題になった映画がある。 それが『ぼくのエリ 200歳の少女』という、2008年に製作されたスウェーデンの映画だ。藤本タツキ先生は、創作に関して多くの映画から影響を受けていることを公言しているが、この作品も観ていたということに驚いたし、筆者も大好きな作品だけに嬉しくも感じた。(まさか、この公開から10年以上も経って、ミニシアター向け作品がTwitte

映画「カモンカモン」完璧でない私たちの世界にみえた、未来への希望

今も思い出すだけで、目から涙がこぼれ落ちそうになってしまう。きっとこれから先、何度も観たくなる作品になるだろう。 マイク・ミルズ監督はいつも私たちに決して何か考えを押し付けるという事なく、人と人との関わり合いや、理解し合うということのむずかしさを示しながら、ひたすら模索し、微かだが確かな希望をみせてくれる。 独身で子供はなく、おそらく家族との関わり合いも薄く自由を謳歌してきていたであろう、ホアキン・フェニックス演じるジョニーが、突然甥をみることになる。 私自身にも子供は

新作映画『カモン カモン』と『パリ13区』の共通点がおもしろい!

楽しみにしていた映画が2本、同日公開となりました。 マイク・ミルズの新作『カモン カモン』とジャック・オーディアールの新作『パリ13区』。どちらも素晴らしく心に染みる作品でそして偶然にも共通点の多い作品でしたので2作品あわせて共通点とともに紹介していきたいと思います。 『カモン カモン』(4/22公開)ひょんなことから甥っ子のジェシーを預かることになったジョニーは、風変わりな少年ジェシーと時間を過ごすうちに心を通わせていく… という話なんですが、いやーしみじみ良かった。 大

自分を救済するのは自分でしかないー「Dear Evan Hansen」鑑賞

どうやったら、人を蹴落とせるか。どうやったら、自分が報われるか。 ふとした時に、「ここにいるよ」とヌッと顔を出すのである。人間性を疑うような、陰湿で悪質なもう一人の自分が。 そういう自分のことは、確かに認識はできる。いるのはわかっている。でも、さらけ出すことって、ほとんどの人ができないんじゃないかと思う。 醜悪すぎる自分が怖いんじゃない。そういう自分を晒すことの方が怖いんだ。本当の自分を誰かに見られたら、もう、生きていけないとすら感じる。世界中から嫌われる。もう絶望しか

ゴッドファーザーシリーズを見終えて改めて思うこと【午前10時の映画祭】

往年の名作をスクリーンで上映してくれる『午前10時の映画祭』。4月1日から4月28日まで上映されているゴッドファーザーシリーズを全て観終えたが、改めてマイケルの人生に感じ入ってしまった。 マフィアになりたくなかった筈なのに、最後まで抜け出すことはできなかった。ファミリーは築けたが、真の家族を最後まで手に入れることの出来なかった男。マイケルは最期何を思っていたのだろうか。 どのシリーズもラストカットは、マイケルの孤独を浮き彫りにさせているのが秀逸(PART1はマイケルが名実

+7

2022年個人的に楽しみにしてる作品

「残像」(Powidoki)ワイダ監督の遺作…

「残像」(Powidoki) それは、アンジェイ・ワイダ監督の遺作… 残像(Powidoki)「残像」(Powidoki)-2016年(ポーランド映画)99min 監督:アンジェイ・ワイダ(Andrzej Wajda,1926 - 2016/ポーランドの映画監督)  脚本:アンジェイ・ムラルチク アンジェイ・ワイダ キャスト:ボグスワフ・リンダ、ゾフィア・ヴィフワチ 巨匠アンジェイ・ワイダ監督の遺作ワイダ監督作品、世代(1954)、地下水道(1956)、灰とダイヤモンド(

解釈:地下水道 - Kanał - ワイダ監督

解釈:地下水道 - Kanał -地下水道(Kanał)は、1956年/ポーランド-96min 監督:アンジェイ・ワイダ(Andrzej Wajda,1926 - 2016/ポーランドの映画監督)  脚本:イェジ・ステファン・スタヴィンスキー キャスト: ザドラ中尉:ヴィンチスワフ・グリンスキー コラブ:タデウシュ・ヤンチャル デイジー:テレサ・イジェフスカ 抵抗三部作の2作目アンジェイ・ワイダ監督を著名にした、抵抗三部作の2作目だ。それら、抵抗三部作は、ドイツ軍支配化のポ

世代(Pokolenie)解釈:アンジェイ・ワイダ監督

世代(Pokolenie)解釈:アンジェイ・ワイダ監督世代(Pokolenie/ A Generation) 監督:アンジェイ・ワイダ(Andrzej Wajda,1954年公開 -ポーランド映画)-83min 脚本/原作:ボフダン・チェシコ キャスト:スタフ:タデウシュ・ウォムニツキ、ドロタ:ウルシュラ・モドジニスカ、ヤショ:タデウシュ・ヤンチャル、ヤヌシュ・パルシュキェヴィッ、ロマン・ポランスキー 抵抗三部作巨匠アンジェイ・ワイダ監督デビュー作で、地下水道、灰とダイ

解釈: 鉄の男 -Człowiek z żelaza-

解釈: 鉄の男 -Człowiek z żelaza-鉄の男(Człowiek z żelaza)1981-ポーランドの映画-152min      アンジェイ・ワイダ監督(Andrzej Wajda,1926 - 2016/ポーランドの映画監督) 脚本:アレクサンドル・シチボル=ルィルスキ(Aleksander Scibor-Rylski) キャスト: ヴィンケル(グダニスク放送局):マリアン・オパニア マチェック/ビルクート(かつての労働英雄):イェジー・ラジヴィオヴィッ

#8 映画についての愛を語る

 昨日は3回目ワクチン接種の副作用により、ほぼ一日仕事にならなかった。いやなるにはなったが、頭がぼーっとしている。前回も接種した時は、熱が出てベットの上でゴロゴロしていた。ただ天井を眺めて、事前に備蓄していたカロリーメイトを頬張る。久しぶりに食べると、悪くない味である。ちなみに好きな味は今も昔もフルーツ味。 * いつだって高揚する  そういえばかつて緊急事態宣言が発令された時、自分は果たして何をしていたかなーと思い返す。ただただ、ひたすら映画を見ていた。1日に3本くらい