マガジンのカバー画像

hideT短編集

14
空いた時間に短編作品はいかがですか?
運営しているクリエイター

記事一覧

What is Human?

ロボット三原則が実装され、安全なはずのアンドロイドが殺人を犯した後、機能停止して壊れる。 そんな事件が頻発した。 なぜそんなことが起こるのか? 文字数(本文のみ):約8000字  読書時間目安:12分 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆    1  誰かに見られているような気がして、サヤカ・フリーセンは足を止めた。そして辺りを見まわす。  高層ビルが建ち並び、その合間を縫うように飛行型タクシーが行き交っている。  煌びやかなネオンに彩られた街中を歩く人々も、どこか忙しな

「短編小説」Rain doll

「あめふり少女」の都市伝説には悲しい理由が……。 恐くないホラーです(^-^*) ※表紙画はエブリスタのお仲間、熊野菜名さんが描いてくれたイラストを使用しています。  文字数(本文のみ):約7500字  読書時間目安:12分 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆   1 都市伝説  「雨ふり少女の伝説?」  城木良幸は顔を顰めながら聞き返した。  「ああ。この場所ではたまにあるらしい。どこからともなく『あめふり』の歌が聴こえてくることが。女の子の声でね。それも、地の底か

「短編小説」Crow's egg

20××年ヨコハマ。 犯罪組織により絶体絶命となった刑事ランス。 そしてその相棒のアイリス。 2人に数奇な出来事が……。 本文文字数:約7513文字 読書時間目安:12分 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆    1  くそっ、ここまでか……。  廃墟ビルの一室で、ランス・イシモリは悔しそうに顔を顰めた。  体から力が抜けていくのがわかる。同時に血液もドクドクと流れ出ていく。  「さすがのタフガイ刑事もここまでのようだな、ランス」  あざ笑うかのような声。ドン・オガ

「短編小説」暗殺者達

 廃墟となった遊園地に深夜、死刑囚が集められた。いったい何のために……? 本文文字数:約7450文字 読書時間目安:12分 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆   1  ついに、最後の一人になっちまった……。  坂口龍一は走っていた。深夜、廃墟となった遊園地を……。  いったい何が起こっているんだ?  月の光が、動きを止めて久しい遊具の数々を照らしていた。  錆びついた観覧車は年老いた巨大生物のような姿で、必死に逃げまわる龍一を見下ろしている。  夜空にひびが入っ

「短編小説」告白をする者

大物政治家の暗部を探る公安捜査官の島津浩一は、フリーライターから情報を得た。 しかし、たまたま居合わせた女性警察官の利香とともに拉致されてしまう。 はたして、彼らの運命は……? 文字数(本文):約7766字 推定読書時間:12分 久しぶりの短編です。改名後、初作品となります!! よろしくお願いします(o_ _)o    1    「告白者が殺された?」  嶋津浩一は目を見開きながら聞き返した。  「ああ、そうだ。安川晋三郎の元支援者だ。政治的な思想に共感していた

「短編小説」毒先祖

充が目を覚ますと、そこには武者が…… 文字数(本文):約5520字 推定読書時間:10分 久しぶりの短編です。 ぐうたらママさんからのコメントをヒントにさせていただきました。 1  まいったな……。  浅井充は頭を抱えた。  「それ」には目を覚ましてからすぐに気づいた。見えないふりをしていたのだが、いつまでもこのままというわけにもいかない。  一人暮らしのワンルームマンションだ。浅井は壁際のベッドの上で寝たふりをしながら、もう一度チラリと「それ」を見た。気づかれ

「ショートショート」やくそく地蔵

小さなお地蔵さんがくれた、ささやかな奇跡……。 文字数:約2530文字  読書時間目安:5分  あっ!  七海はちょっとした段差に躓きよろけた。  体勢を立て直そうと慌てながら手を振ったので、肩からかけていたバックが落ちてしまう。  「ああ~! やっちゃったぁ……」  ため息をつく。やれやれと思いながらバッグを拾った。確認してみるが、幸いなことに汚れたり傷ついたりはしていない。  転ばなかったのは、運が良いってことですよね、やくそく地蔵さん?  軽く会釈する七海

「ショートショート」Call

本文:1930文字  読書目安時間:4分 表紙画:ぱくたそ より  スマホが鳴っている……。  伸也はベットの上で舌打ちした。意識はまだ微睡みの中だ。  仲間とかなり飲んだ。明日は大学も休みだし、バイトもないので、朝のんびりできる。だから、夜中まで飲み続けていた。  うーん、と唸り、泥のようになった身体をもぞもぞと動かす。  おかしいな……?  泥酔していたとは言え、通知音や電話に眠りを邪魔されないよう消音にしていたはずだ。  怪訝に思いながら、スマホを手に取

「短編小説」巌流島異聞

デッドボールを受けて気を失ったプロ野球選手元村。 彼が目を覚ますと、そこにはなぜか侍が……。 文字数:約6600。読書時間目安:11分。 1  蒸し暑さに目が覚めると、草木が生い茂る場所に倒れていた。おそらく山中だ。  「な、なんだ、ここは?」  元村隆は、まわりの異様さに目を見張り、跳ね起きる。  夜だった。しかし、月明かりが照らしてくれるので暗さはそれほど感じない。星々が、これまで見たことがないほど輝いていた。  夏の夜――こんなに美しい星空なんて、生まれて

「短編小説」破滅の雨音

2×××年――。 人類は滅亡の危機に瀕していた。 荒廃する環境、そして人の心……。 しかしそんな中にも、誇りや希望を失わない者達がいた。 文字数:約8000。読書時間目安:14分弱。 1 危機    何年も前から人が住めなくなった集落の跡地――。  その地面を打つ雨音が、微かに聞こえ始めた。  まずいっ!  リオナ・ツキオカは息を呑む。空を見上げ、赤茶けた雲がそこまで迫っているのを確認した。彼女のセミロングの黒髪が、湿り気を帯びた風に揺れる。  少し離れた場所

「短編小説」心花

……これは、ちょっとした御伽噺。 刑事としてがんばる智樹。そして、不思議な少女、心花。 2人は遠い過去から結ばれていた……。 文字数:約9500字 推定読書時間:約15分  ……これは、ちょっとしたお伽話。 1 再会  三上智樹は重くなった体を引きずるようにして、帰路についていた。  疲れた……。  刑事の仕事は激務だ。横浜の繁華街を含む管轄ともなると事件も多い。  警察官になりたての頃は、刑事に憧れたんだけどなぁ。  何とか30才までに所轄署の刑事となった

「短編小説」夏 痕

定年間近の老刑事、重松弘。彼の右前腕には傷痕があった。 遠い夏の日の出来事……その記憶が蘇る。 文字数:約8000字 推定読書時間:14分弱 1 座間警察署捜査課  「覚えていますか?」  重松弘がコーヒーを飲み終え窓の外を眺めていると、城崎拓哉が隣に立ち徐に訊いてきた。  座間警察署捜査課の一室だ。2人して、丹沢山系の雄大な景色を眺める。  「何をだい?」  彼に視線を向けながら、重松が訊き返す。  「あれは何年前でしたっけ? その右腕の傷……」  「ああ

「短編小説」只者になりたい男

とある理由から「暗殺者」をやめ、立派な一般庶民を目指すことに決めたアカマ。そのために、凄腕の美人暗殺者にある依頼をする。 はたして彼は、普通に生きていくことができるのだろうか? 文字数:約8000。読書時間目安:14分弱。 1 決意?  今日から俺は、一般庶民だ。もう、殺しはやらない。  うらぶれた路地を歩きながら、アカマは何度も自分に言い聞かせた。  数時間前、トムに最終連絡もした。  もう俺には依頼しないでくれ、と……。  アカマは暗殺を生業としていたが、悪

「短編小説」チャンピオンだよ!

事件を起こして逃亡したプロボクサー、富樫巧。 しかし、それには事情があった――。 文字数:約8000。読書時間目安:14分弱。 小説投稿サイト「エブリスタ」に公開中の「First challenge」を改題し、多少手を加えています。 1 富樫巧 逃亡  目を覚ますと、すでに明け方になっていた。遠くの空が白んできている。  富樫巧は、慌てて上体を起こした。  狭く汚い公園のベンチだ。逃げまわってたどり着き、一休みするために腰掛けたのだが、つい寝入ってしまったらしい。