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実家で発掘したダサい服から令和版「ネオダサTシャツ」を作って売ってみた。

「ねぇ見てあのTシャツ、ダサ〜!」

「やば。ダサいっていうか、時代...!!中二病じゃん」


そんなヒソヒソ声が聞こえてきたのは、とある電車内。
私の隣に座っていた若い女性二人が、向かい側に座ってうたた寝をしている男性をチラっと見ながら話していた。

ははぁ。なるほど。まぁ、確かに。


彼の着ていた長袖のTシャツは、なんというか懐かしいテイストのデザインだった。
中世ヨーロッパみたいな筆記体とも古文書ともつかない特徴的なフォントの英字がたくさん書かれていて、十字架や血痕のようなピシャっとはねたペイント模様と天使(悪魔?)の羽みたいなものが各所にあしらわれ、襟元にはスタッズと紐。

世代の人は「あ〜わかる〜〜!」となったり「うわー昔そういうの着てたわ〜」となったりするだろう。
確かに今はあまり見ないテイストだが、おそらくあれが流行っていた頃はそんなような服がいっぱい売られていたし、街でもよく見かけていたように思う。


ネットでも時々話題になったりする今は「ダサT」の烙印を押されているこの手のTシャツだが、要するにあれは今、時代が過ぎ去ってしまっただけで一時期はダサいどころか、片田舎の小学生や中高生がファッションセンターしまむらやイオンなんかでも手に入れられるくらい量産されていた「流行のテイスト」だったのだと思う。

そしてその流行が去った今、それを見ると「ほげ〜!今見るとダサ〜!」となるのだと思われる。「いや、当時もダサかったよ」という声はさておき。好みはそれぞれだ。

あの時代のなんだかダークネスなものに憧れを抱く「中二病」というワードも、今思うと一つの時代の流行りだったように思う。
今の中学生にも「我こそは闇に召喚されし者...」みたいな自分の世界に入り込んで楽しむ若者はいるのだろうか。近くにそれらしい年代の知り合いがいないのでわからないが、あの頃ほど多くない気がする。


それでは今の流行、おしゃれとされている服(Tシャツ)ってどんな感じなんだろう。
昔よりも多様化が広がり色々な方向性があるとは思うが、ざっくりとしたテイストで言うと、よく見るのは無地やシンプルなワンポイントだったり、フォントだとカフェのメニューボードのようなさらりとした文字とか、ちょっと不思議なゆるめのキャラクターや、線画っぽいイラストが描いてあったりするデザインなんかだろうか。

音楽にリンクさせてみると、あの頃がヴィジュアル系全盛期なら、今よく見るのは言うなればシティポップ調といった感じ?
流行に詳しくもなければ、日々そういう研究をしているわけでもないので合っているかはわからないが、私の感覚でいうとそんなイメージだ。

そしてふと思った。


あれって、たとえばあの「ダサT」と呼ばれるデザインに盛り込まれた情報を、私が想像したような今っぽい(?)テイストで変換したらどうなるんだろう。ダサいTシャツは今風のTシャツになれるのだろうか。

また私のくだらない妄想が広がる。
よし、それでは往年の「ダサT」から、令和版「ネオダサTシャツ」を作ってみようではないか。
そうと決まればまず、元となるいわゆる「ダサい」Tシャツを入手する必要がある。


お〜あるある。
ネットで「中二病 Tシャツ」と調べただけでも、DEATHとか謎の英語がふんだんに散りばめられたTシャツが表示された。
とはいえ、特定のお店やネットショップなんかのTシャツを持ってきて「お!あった〜!」とダサいTシャツ呼ばわりするのはちょっと気が引ける。どこかに出処がわからないそんな服はないものか...。


...ある。
絶対、実家にある。
「実家はネタの宝庫」なんて話をどこかの対談でも耳にしたが、まさにそれだ。

そしてナイスタイミングなことにお盆休み。
そんなわけで私は先日帰省した際、嬉々として実家の兄の部屋のタンスを開けた。

あった。

これこれ〜!
真ん中のあたりなんて赤と白が殺し合い過ぎてもはやどっちも読めない。
DJ. FREEだけかろうじて読める…。
羽根はやはり定番のようだ。


ほほほほ。
そうそうこういうやつ。なつかしい。
電車で見たような、全体的に文字やイラストが入り乱れているのとはちょっと違うが、これもなかなか時代感があって面白い。
兄の昔の服を広げニヤニヤしていると、それを見た母が言う。

「あんた何してるの?」

「いやー、ちょっと訳あって昔のこういうTシャツを探してて...」

「そんなの、あんたのとこのタンスにも入ってるよ。よく〇〇ちゃんからお下がりもらったりしてたじゃん」

母はタンスの奥の方から2、3着新たな兵器を出してきた。

念願の(?)紐付き!
骸骨世代…古代エジプトあたりでしょうか?


うひょー。
なんとなくメンズの方が多いのかななんて思って自分のことを棚に上げ兄の引き出しばかり探していたが、私のコレクションもなかなかアツい。
もらいものだなんて言っているがしっかりもらっているので、おそらくしっかり着ていたのだと思われる。記憶の改ざんとはおそろしい。
どうやら私も血塗られた過去を持つ、闇に生まれし者(?)だったらしい。


ちなみに撮影を拒否されてしまったが、そんな服を引っ張り出してきてくれた母は、基本的に子どもたちが置いていったまだ着れそうなTシャツを部屋着にしている。
母がその日着ていたTシャツには、胸元に大きく「EQUIPMENT」と書かれていた。なんのこっちゃ。
両家のご挨拶なんかでこれを着てこられてはぎゃあ!という感じだが、今の私にとってはまさしくネタの宝庫でありがたい。


さて、資料はそろったものの、予想以上にフォントが特殊過ぎて全く読めないものもある。
一体何と書いてあるのだろうか。
カメラで瞬時に翻訳してくれるアプリを使ってみるも、イマイチその全容がわからない。

ペオピー…誰。
なんかすごいの、食べるらしい。
それは、猛烈に、ひぇぇ〜
恐れ、言うの?言わないの?

うーん、どうしよう。
情報が読み取れなければそれを元に今風に変換することができない。

自分では解読できず翻訳アプリでもお手上げだったため、私はネイティブスピーカーの友人にこれらの写真を送りつけて何が書いてあるのか聞いた。

「なにこの英語。多分何の意味もない文章。逆に書いた人すごい」

私は、友人が爆笑しながら解読してくれた謎の英文を翻訳サイトにつっこんだ。そして、なんとか読み解けた中でいい感じになりそうだと思った候補は以下3点だ。


てっきりもっと「漆黒の」とか「絶望」みたいな闇っぽい英単語がランダムにいっぱい並んでいるのを想像していたのだが、我が家のコレクションはどうやら文章になっているものが多いらしい。
なかなかむずかしいな。
3つから吟味した結果、私はこの服をテーマに新しいデザインを考えてみることにした。

選ばれし文言

夢が悪い。
危うく出会うというのは、原動力のあることです。
再登場
危険なユニット

作った人が記したかった意味合いとは異なっているかもしれないが、何の意味もないとお墨付きをもらっているので、この翻訳のまま日本語を素直に読み解くことにする。

夢が悪い。
→まぁ、要するに悪夢だ。悪い夢を見ているんだね。ふむ。

危うく出会うというのは、原動力のあることです。
→うーん、わからん。原動力のある...って?何?
…原付?危険なバイクと遭遇みたいなことでいい?
盗んだバイクで走り出す?

再登場
→再登場ね、ほう。総柄か何個か同じモチーフがついてるデザインにすればいいのかしら。

危険なユニット
→危険なユニットってなんだろう?装置?なんかの集団?
日本語的に「ユニット」と聞くと二人組なイメージもある。危険なコンビとは…。ハブとマングース?犬猿の仲?

そんな感じでうまいこと絵面にできそうな妄想をもんもんと考える私。


はい、決めました。
令和版解釈としては「危険なユニット(犬と猿)が原付に乗ってるのが何度も出てくる悪夢」ってことでいいでしょうか。
そうしましょう。だってよくわかんないんだもん。
よし、じゃあこれをちょっと不思議なゆるい感じで、線画っぽく、シンプルな絵で、シティポップな感じにするときっと今風になるはずだ。


そんな激しめの拡大解釈のもと、私が考えた「ネオダサTシャツ」のデザインがこちらである。



さっきの情報を絵にするとこういうことだよね?

おしゃれかどうかはさておいて、一応情報は盛り込めた気がする。


ぺた


さて、実際に印刷されたイメージを見てみたくて試しにBASEのTシャツ作成ページに貼ってみた。
おぉ、Tシャツにのせただけでなんだかそれっぽくなったような気がしなくもない。

よし。無事我が家のダサいTシャツ(パーカー)を令和版「ネオダサTシャツ」にしてやったぜ。

なんてことを実家でひまつぶしにやっている間に終わったお盆休みなのでした。夏休みの自由研究と工作を一緒にやった気分。
そんな2022年の夏。


【おまけ】

せっかく作ったので、調子に乗ってそのままBASEでネオダサTシャツを売ってみることにした。
しかもわざわざ謎の4色展開。42色もカラーバリエーションがあってついつい選ぶのが楽しくなってしまった。(その割に似たり寄ったりな地味色チョイス)

ダサTショップ、はじめました。


デザインもさることながら、価格も3000円というなかなか可愛くないお値段である。
私すら持っていないこのネオダサT、誰かの心にずがーんと刺さって売れる日は果たして来るのだろうか...。
ちょっとおもしろがって見てみようと思う。

BASE、初めて触ってみたけど手軽に作れて面白いなぁ。
またTシャツ、作ってみようかな。



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