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[自分史] 定年退職後の模索期1
ついにCDを買う決心をしてCD屋に行くとぼくと女性店員だけだった。しばらく店内を探しても見つからなかったので、その女性店員の方へ行って「アジアンカンフージェネレーションってありますか」と尋ねた。一瞬彼女は思案したがすぐにその場所に案内してくれた。8枚ほどあった中でベストアルバムを選んで彼女のところへ持って行く。幾分嬉しそうな感じが素振りに出ていた。袋にCDを入れる時にフンと笑ったような気がした。ぼ
もっとみるセント・ヴィクトワール山の見える丘の家の離れにて
十九歳のころ、なんて世界は優しくぼくを包んでくれていたことか、奇跡のようだ。ぼくが十九歳の時、世界は1972年だった。テルアビブ乱射事件で岡本公三がぼくのイノセンスを破壊したが、それはまだ遠くの出来事で半分夢心地のままでいられた。その頃ぼくの身の回りは不思議に解放された、自己表現に溢れた時代のエポックを迎えていた。セント・ヴィクトワール山の見える丘の家の離れは、自己表現を育てる繭の働きをした。その
もっとみる中学から大学までの自分史
中学生の頃の自分を思い出していた。自我が芽生える頃がほとんど中学の頃と重なるように思えるのは、多分中学に入って環境が変わり、小学校の時とは全く違うタイプの同級生との接触が自分に向き合うきっかけを作るからではないだろうか。小学校の同級生は同じような仲間だったのに、中学では日常的に違いに気づかされたり、場合によっては圧倒されたりする。
ぼくの時代の中学にはいわゆるガキ大将がいた。ケンカに強く大柄であ
学習参考書を読んだ日
無限にある本から一冊だけを選んで読むことの充足感について。ぼくの中学3年生の夏休みは、高校受験勉強に集中して毎日家にこもって勉強していた。確か5教科まとめた分厚い受験用参考書を一冊買ってきて、ノートを取りながら1ページずつ読んでいった。その一冊だけをとにかく読んでその中の練習問題を解いていった。どういうわけか集中できた。ラジオはつけていたと思う。ニッポン放送の深夜の「オールナイトニッポン」を欠かさ
もっとみる自我崩壊の危機と本との出会い
文学との出会いと自我崩壊の危機の時期は重なっている。自我崩壊の危機の時期は生涯3回ある。高校1年次に最初世界文学全集と出会い、10冊ほど読み進んだあと現実感覚がおかしくなって登校拒否の事態を招いたのが1回目。サラリーマン生活中盤で、社長からのパワハラで鬱になってその回復のために読んでいた時期が2回目。そして定年退職したあと、居場所がなくなり精神的な基盤を求めるために地元の読書会サークルに入ることに
もっとみる[自分史] 定年退職後の模索期2:公民館読書会との出会い
共働きだったぼくたちは同じ年に会社を退職する約束だった。妻が3歳下なのでぼくは定年後2年間は延長して同じ会社で勤めることにしていた。ところが2年目に配属になった部署はあまりにも過酷な環境に思えて妻との約束を破ることになった。当然猛反対を受けたがそれを押し切ってもぼくは退職したかった。妻が60歳になる歳まで(ぼくが62歳から63歳になるまで)の1年間は昼間は自分だけがフリーの状態になって、それまでの
もっとみるずっと待つ人に救われた
受け止めるためには君の何倍もの心の深さが必要だと
気づかされた時にはもうぼくの方はボロボロだった
君は自分の無邪気さの、奔放さに無関心だった
可愛いからといってぼくの心を弄ぶのは
ぼくの想像を超えていたのに
ぼくはけなげにもクールに構えすぎていた
そんなに強くはなかったことに
君がいなくなって思い知らされた
あれから君以上の人に出会わなかった
みんな慎重だった
無防備に、無鉄砲に自分を投げ出して