記事一覧
「わざわざ」という渦。
30年来、東京と長野県蓼科の2拠点生活だったけれど(と言うより、東京に暮らしつつ週末やまとまった時間ができた時に蓼科に行くが正確)、去年の夏の終わりに、思い切って東京の引き払い蓼科に腰を据えた。蓼科から、仕事があれば東京でのミーティングにも地域での撮影にも出かけるけれど、ここにいる限りたっぷり時間もあるし、「丁寧に暮らす」ことを大切にしている。となると、なによりだいじなのは食。野菜・肉・調味料・乾
もっとみるもっとみんながシアワセになるビールのCMがないものか?
「広告はこんなにバリエーションがあるのに、日本のビールって味が似たり寄ったりだな」つい10数年前まで、そう思っていたような気がする。それはそうだろう、メジャーなブランドのビールと言えば、ほぼピルスナー一択なのだから。味が似て、当然なのだ。
例えばニューヨークのビールサーバーがたくさん並んでいるバーなら「アンバーエールかな?いや、今日はペールエールだ!」などとチョイスするのは当たり前だし、ベルギーの
ビール広告は、マーケティングの墓場か?
すっかり秋めいてきて、さすがにビールのCMもおとなしくなってきたようだ。もっとも「おとなしくなった」のはオンエア頻度で、たまに見かけるそれは相変わらずけたたましい。派手なタレントを使ったり、聞き覚えのある音楽でインパクトを狙ったり、うまそうな泡の見せ方に工夫を凝らすのは、どのCMも同じだ。その、「どのCMも同じ」傾向に、最近気になって仕方がないことが出てきた。とにかくタレントにやたらと「うまい!」
もっとみる小林亜星さんを偲んで「責任を取るクリエイティブ」
数日前、作曲家の小林亜星さんの訃報がメディアやネットを駆け巡った。多くの顔を持つ亜星さんだが、いまも人々の記憶に残る息の長いCMソングの作曲者として有名だ。そのなかの一曲、「積水ハウスの歌」は歌詞やアレンジを変えて「現役」で、そのCMディレクターとして何か書き残しておきたいという思いに駆られている。
オリジナルは1970年の作曲とオンエア。積水ハウス創立10周年のCMソングのようだ。いま聴くと、そ
SONY BRAVIA 4K「美へのこだわり」篇(2013年)
ベテランのCMディレクターともなれば、仕事を依頼される時は制作会社のプロデューサーが旧知の仲か、クライアントや担当のクリエイターがぼくを信頼してくれているか、何か手がかりがあるものである。でも、この時は違った。知らないプロデューサーだし、クリエティブのスタッフにも思い当たるところがない。冷やかしじゃないのか?「いえ、スケジュールさえ合えば頼みたいそうです」とマネージャー。そのクライアントの仕事は
もっとみる畳をめぐる旅の第2章へ。
2/26〜3/2、青山で開催した「しあわせが変わる、明日の畳展」が無事に終了した。少し時間が開いたけれど、根本的なことを振り返っておこうと思う。
そもそも、なぜ、畳プロジェクトなのか?
最終日のトークショーでも誰かに質問された。「今村さんが、畳のことをやろうと思った理由はなんですか?」と。2016年5月に、山形は寒河江の鏡畳店を訪ねた時から始まって、6月末にはい草の収穫の様子を見に熊本の八代に行
T1/4は、畳をもっと地域に根ざしたものに変えていくかもしれない。
ある時、鏡さん(山形・寒河江の畳店4代目)に何気なしに聞いてみた。「本当に山形ではい草が育たないの?」
「い草は、高温多湿を好むから、山形のような雪国ではとても無理ですよ。」そんな答えが返ってくるのだと思っていたら、「いや、昔は田んぼの畦に自生していたらしいです」とあっさり予想を覆された。
い草の長さは、100〜150センチ。長ければ長いほどいいい草だそうだ。中心部の、色や太さが安定した部分
え!? T-Quarterですか?
T1/4のネーミングは、関橋英作さん。いや、それ以前に、畳屋さんたちと畳のブランド「TATAMI-TO」の名付け親でもある。
関橋さんとぼくは、ほぼ同じタイミングで山形にある東北芸術工科大学の教授に就任したが、そんなこと知る由もなく、学食でバッタリ会って「何しているんですか?」と顔を見合わせた。お互い、長い業界歴のなかで旧知の仲だったが、向こうは広告全体を指揮するクリエイティブ・ディレクター(そ
T1/4は、いかにして生まれたか?
T1/4と表記して、T-Quarterと読む。TATAMI-TOで開発した1/4サイズの畳だ。
デザインは、手工業デザイナーの大治将典さん。「畳表やい草を使った新商品を開発していただきたい」とご相談したのが、確か2017年2月頃。数ヶ月して、「通常の畳を1/4サイズにしたものをデザインしたいが、どう思いますか?」と打診があった。
その時、頭をよぎった感想は、率直に言って、「ずいぶん安直なアイデ