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"おまえ、ニルヴァーナとか好き?”


”さよなら、ニルヴァーナ”-窪 美澄


全くこの本の背景を知らず 古本屋で目に止まったから ただそれだけでこの本を読みだした私は 読み進めるにつれて -これがノンフィクションであったら もしそうだったらどうしたらいいのだろう ノンフィクションでなければいいのに-  という不思議な焦燥感に駆られた。


読み終わってから 解説を読んでそれがノンフィクションであると知り 暫く言葉を発することが出来なかった。 それくらい 重く 苦しい作品であった。


当時14歳の少年Aが7歳の女の子を殺し 彼女の一部を教会に置く という事件を軸に 普通では交わることのなかったであろう三人と少年A それぞれの視点で話は進んでいく。小説家を目指すも上手くいかず少年Aが出所後暮らすという街で妹の子供の世話を押し付けられ生きる意味を見失う女 少年Aであるハルノブ様にネットで出会い恋に落ち追っかけをする女子高生莢 事件の被害者である光の母親 性的興奮を動物の中身を開くことで感じる少年A   国家から手厚く守られる少年Aをそれぞれが追い詰めていく。それは憎しみがゆえであったり 愛がゆえであったりする。


作中 母と子の関係性が多く描かれる。 全員の視点で 彼らと母の関係が 彼らの人格の形成に大いに関わっていることがわかる。娘を殺した少年Aを憎みながらも 自身も母との関係に問題を持ち 少年Aの母親に完全な責任を押し付けられないでいたり 阪神淡路大震災で父親を亡くし 母親は働いていて寂しさを感じるゆえに光の母親になつく莢 妹夫婦にうんざりし 幼い頃は感じられなかった自分への興味を今になって感じる女

そして何よりも 小さい頃からカルト施設を転々とし 母親に女としての影を感じすぎ 性的趣向がねじ曲がった少年A

この四人には どこか深いところで 共通している部分があると感じさせられる。



身を削りながら事件についてを小説にしようと決心した女は 知れば知るほどボロボロになっていく。 涅槃を意味するニルヴァーナという言葉は この物語を取り巻く独特な雰囲気を作り出し 登場人物達をこれでもかと縛り上げる。


これほどまでに 苦しい もうこれ以上進まないでくれ 知らないでくれと 心が締め付けられたのは初めてだった。



作中に登場する小説家のように 窪美澄さんは心を削られなかったのだろうか。



事件を多方面からフォーカスし 最後はぐちゃぐちゃになってパッと消える そんな話であった。私の拙い言葉では きっとこの胸の詰まりは書ききれない。けれど終始 頭の中をぐちゃぐちゃと そう ぐちゃぐちゃと掻き回される作品だった。



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