マガジンのカバー画像

映画

32
運営しているクリエイター

記事一覧

1917

全シーンをワンカットで撮影しているかのように作られた話題作。すごい臨場感で、まるでゲームをプレイしているかのような体験だった。
パラサイトも話題になっているけれど、どうやら反日のメッセージが含まれているらしく観るのを躊躇した。
一人の兵士が命懸けでメッセージを伝えに行くというシンプルな物語の中に様々な感情、葛藤、ドラマがある。喜びも悲しみも、生身の人間だからこそ味わうことができるわけで。
AIの時

もっとみる

マチネの終わりに

原作が壮大な話なので映画で再現することは難しいのではないだろうか?という不安があったのだけど、最初から最後まで美しいクラシックギター の音が流れていて心が洗われる作品だった。聖書のくだりが無かったのは残念だったが宗教色を抜いたのはきっと大人の事情があったのだろう。

映画版の「幸福の硬貨」のメロディーラインが素晴らしくて蒔野と洋子の距離感を絶妙に表現していた。きっと福山雅治は猛特訓したに違いない。

もっとみる

メタリカ交響楽団

世界一のヘヴィ・ロックバンドとサンフランシスコ交響楽団との共演が映画館で全世界同時上映された。20年来のMETALLICAファンである僕も当然のことながら行ってきた。スケールの大きさに感服しながらも改めてMETALLICAの楽曲の素晴らしい音圧に酔いしれた。

ジェイムズはこれからアルコール依存症の治療に専念するということで、早く復活してまた世界中のファンの前に元気な姿を見せてほしい。

ある船頭の話

オダギリジョー監督の一人の年老いた船頭を中心とした物語。なんというか感想を言うのが難しくて体に沁みる作品。あっという間の130分だった。ティグラン・ハマシアンの主張しすぎない天才的なピアノも素晴らしく、映画館にいながら異世界へと連れていかれるような不思議な余韻が残った。この混沌とした世界で優しさに触れたければ、トイチのような何者でもない人間に会うといい。そんなふうに思った。

Carmine Street Guitars

『カーマイン・ストリート・ギター』という映画を観た。NYで建築現場から出た廃材を集めてギター作りをしている職人の話。

木を愛し、今どきスマホもパソコンも使わない。パンクでキュートな弟子がいて高齢の母親が店番をしている素敵なギターショップ。日本にはこういうお店はなかなか無いかもね。ビル・フリーゼルや故ルー・リードといった大物ミュージシャンも来店している。

店主の飾らないナチュラルな人柄が、そのま

もっとみる

グリーンブック

実在した天才ピアニスト、ドン・シャーリー。彼は音楽の才能だけではなく心理学、典礼芸術の博士号を持ち8ヶ国語を話すことができた(どんだけ天才なんだ)

そんな大天才ですら黒人であるという理由だけで差別されてしまうなんて本当に恐ろしい時代だ。ドンの相棒であるトニーとの友情も実話で、この二人の交流は生涯に渡って続いたそうです

こういう人種差別を描いた映画がアカデミー賞に輝くことは大きな意味があると思う

もっとみる

人生は引き算

今年は日本とフィンランドの外交樹立100周年。「かもめ食堂」は大好きな映画で二回くらい観た。映画の中で印象に残ってるセリフがある

「やりたい事をやってていいわね」

「やりたくない事をやらないだけです」

足し算的な考えは常に「不足している自分」からスタートする。でも、引き算にすることで「等身大の自分」が徐々に見えてくる。無駄なもの、いらないものを少しづつ降ろしていくことで軽やかな人生を送れるよ

もっとみる

ル・アーブルの靴磨き

正月はアキ・カウリスマキ 監督の映画をたくさんレンタルした。本当にこの人の作品はハズレが一つもなくて全部が面白い。村上春樹さんもアキ監督の大ファンらしく、わざわざフィンランドまで足を運んだという話も頷ける

アキ・カウリスマキ 作品の主人公はいわゆる下流暮らしの人が多い。これは監督が上流階級には興味がないという理由と、弱気を助け強きを挫くというフィンランド人の反骨精神が関係しているからではないだろ

もっとみる

スター誕生

ストーリー展開も脚本も特に突出した展開はないのに、こんなに感動するのはなぜだろう

レディー・ガガの圧倒的な歌声が魂に訴えかけてくる。これを観て何とも思わない人は人間性を疑ってしまうほどに。当初はクリント・イーストウッド監督とビヨンセのコンビで撮影する予定だったらしいのだけど、このコンビで本当に良かったと思う。ブラッドリー・クーパーとレディー・ガガは二人ともイタリアの血が流れているらしく息もピッタ

もっとみる

ボヘミアン・ラプソディ

腰痛持ちにとって135分の映画を観るのは苦行に近い。だが、この映画はそれ以上の充足感を僕に与えてくれた

イギリスという国は本当に不思議だ。決して経済が豊かでもないし軍事大国でもない。国土も人口も日本より少ない。それなのになぜ、こんなにも偉大なバンドが多いのだろう?イギリス人は魔法が使えるのではないかと思えるほどに、シェイクスピアを始めとする偉大な芸術家を多く排出してきた

Queenのフロントマ

もっとみる

ビブリア古書堂の事件手帖

日本人の二人に一人は本を全く読まないらしい

本に対する愛が伝わってくる作品。夏目漱石の「それから」と太宰治の「晩年」をめぐり物語が動き出す

どんな人間も、限りあるページに綴られた一冊の本のような存在なのかもしれない。

自信モテ生キヨ 生キトシ生クルモノ スベテ コレ 罪ノ子ナレバ(太宰治)

坂道のアポロン

人気コミックの劇場版。

長崎の高校生がジャズを通して友情を育んでいく物語。僕には「親友」と呼べる人がいないからとても羨ましく感じるけど「友情は一生モノ」という劇中の言葉には少し違和感を覚えた

友情なんてかなり脆いと思う。僕にもかつて多くの仲間がいたけれど今は誰とも連絡を取っていないし、高校生の時にいちばん仲が良かったアイツが今どこで何をしているかも知らない。おそらく彼らとはもう一生会うことは無

もっとみる

勝手にしやがれ

ゴダールの映画の凄いところは観衆を日常の世界からいきなり異次元の世界へ連れて行ってしまうような、魔術的な魅力である

まず、この映画で注目すべきところは主人公ミシェルの服装。これは1950年代に流行した実存主義者のファッションを完璧に再現している。実存主義者とは第二次世界大戦後に不安定だったパリで定職に就かず、人生に目的も持たず、その日暮らしをしながらカフェやクラブにたむろしている若者たちのこと。

もっとみる

ハナレイ・ベイ

原作に忠実でセリフも少なく、とても美しい映画だった。村上ファンじゃなくてもじゅうぶん楽しめる。が、やはり小説と合わせて読むともっと味わい深くなると思う

正直、観る前は「サチ」と吉田羊がどうしても結びつかなくて不安だったけど、そんな心配を軽く吹き飛ばしてくれた吉田羊の演技力は本当に素晴らしいと思う

「死」という重いテーマをこんなにもナチュラルに、肯定も否定もせずに表現している作品は珍しい

誰も

もっとみる