K. -h. I.

本業は固体物理学の実験屋です。最近、アマチュア無線に復帰しましたので、それに関して書き…

K. -h. I.

本業は固体物理学の実験屋です。最近、アマチュア無線に復帰しましたので、それに関して書き綴ってみたいと思います。

マガジン

  • TS-820V(S改)のレストア

    TRIO (Kenwood)の無線機TS-820V(S改)をレストアしました。

  • カーボン釣り竿直接給電アンテナに関する考察

    近頃話題になっているカーボン釣り竿直接給電アンテナについて、理論的に考察し、シミュレーションを行いました。さらにアンテナを試作して、このアンテナの可能性について論じました。

  • 上級ハムを目指す人へ

    第2級アマチュア無線技士(2アマ)の無線工学の基礎問題を、高校物理と高校数学の範囲で解いてみる試みです。

最近の記事

学生時代の挑戦

 書棚を整理していたら、学生時代に受けた第2級陸上無線技士の試験問題が出てきました。結果は残念ながら科目合格。有効期限はもう30年以上も前に切れていますし、これを最後に無線従事者の試験を受けていません。問題には書き込みも残っていて、苦戦した跡が伝わってくるようでした。私は応用物理学科に進み、固体物理学で学位を得ることになるのですが、この試験を受けたときにはもちろんそんな将来が来ることを微塵とも想像していませんでした。  応用物理学科でも電子工学の講義は必修だったし、大学院の入

    • 100均「ON AIRランプ」で遊ぶ(その2)

       先日、100均「ON AIRランプ」で遊ぶという記事を投稿しました。TS-820の送信時に外部VFO端子に出てくる電圧を利用して光らせるというのは簡便で良いのですが、やはりアマチュア無線家らしく、電波を検出して点灯させてみたくなります。しかし、そんなに難しくないとたかをくくっていたのが大間違いで、試作品はまったく使い物になりませんでした。最終的にできた回路図を示します。 この回路は高周波をダイオードで検波して、トランジスタをスイッチングさせているだけです。この検波回路を動

      • 科学の否定、あるいは断末魔の叫び

        先日、記事の一部を切り取って内容を改変する手口という記事を投稿したら、さっそく反応がありました。 曰く、「何故、アイヌに縄文人のDNAが一番多いかは何度も的場塾で説明されているのですけどね。」とのこと。そして、的場塾第60回のリンクが示されています。 「学者・研究者が言えない」という言いまわしは陰謀論でよく見ますね。真実なるものが隠されていてそれを知っているのは自分だけだという印象を与える決まり文句です。  科学を含む学問の営みにおいて大事なことは、それぞれの学問はその方

        • 100均「ON AIRランプ」で遊ぶ

           hamlife.jpに「<全国の「Seria」で販売スタート>100円ショップで買える! ミニサイズの「ON AIRランプ」が話題に」という記事が掲載されてから、このランプを手に入れたという報告やら電波が受信できたときだけ光るような改造をしたやら、盛り上がりを感じます。私は流行りものには弱いのですが、たまたま入手することができましたので、まずは電池を入れて点灯してみました。 外見の雰囲気は良いのですが、光が均一に届いていないので少々不自然です。まずはここから改善を試みます

        学生時代の挑戦

        マガジン

        • TS-820V(S改)のレストア
          4本
        • カーボン釣り竿直接給電アンテナに関する考察
          4本
        • 上級ハムを目指す人へ
          16本

        記事

          記事の一部を切り取って内容を改変する手口について

           2022年6月に『DNA解析と「アイヌ民族否定論」―歴史修正主義者による先住民族史への干渉』についての補遺という記事を投稿しました。この記事では、ある医師が、分子人類学者が書いた書物から引用する際に一部を省略することによって引用内容とは逆の結論を導き出したり、引用の要約と称してあたかも自説が引用元に書かれているかのようにすることを通じて歴史的事実を歪曲する手口を紹介しました。さらに、この医師が書いた方法を用いて、当時の道議会議員が議会で「アイヌ民族否定論」を公言したことも紹

          記事の一部を切り取って内容を改変する手口について

          VX-8Dに秋月電子のGPS受信機(AE-GPS)を接続する

           Standard (ヤエス)VX-8Dは50/144/430MHzに対応したハンディトランシーバーで、APRS機能も標準装備されている高機能なモデルです。しかも純正オプションのGPS受信機を取り付けることができます。しかし、現在ではこのGPS受信機を手に入れるのは難しく、ネットオークションを探してもなかなか見つかりません。この無線機を手に入れたときにはAPRSに興味がありませんでしたが、先日の記事で書いたようにTNCのROMをUIDIGIに差し替えてAPRSのデジピーターと

          VX-8Dに秋月電子のGPS受信機(AE-GPS)を接続する

          APRSに挑戦(その2)

           無線機とPCを接続してAPRSが使えるようになったことを前回の記事で書きました。とはいえ、PCを1台占拠させるのは仰々しいので、TNC (Terminal Node Controller)を手に入れて、ROMを差し替えることでAPRSの機能をもたせることにします。IW3FQG Marco Savegnago氏によるUIDIGIというファームウェアが公開されていますので、今回はこれを用いることにしました。  実はこのためにTasco製のTNC-220をネットオークションで手に

          APRSに挑戦(その2)

          観測王DS-8706の画面キャプチャ―

          岩通のデジタルストレージオシロスコープDS-8706にはRS-232C端子から画像データを出力する機能があります。ただ、古い機種なので、取り込むためのソフトウェアをどうするかという問題が解決しなければなりません。BMPファイルならデータのフォーマットが簡単なので、Pythonで読み込むプログラムを書いてみました。 # Iwatsu DS-8706 Screen Copy via RS-232C# 2024 Feb. 27 by K. Inagakiimport serial

          観測王DS-8706の画面キャプチャ―

          U/VHF FM機が来ました

           APRSのためにオールバンド・オールモード機を占有するのはもったいないので、2mFM機で適当なものを物色していました。ネットオークションを眺めてみると、意外といい値がついているのはやはり需要があるからなんでしょう。そんな中で全く入札されていないICOM IC-2300がありました。外観も悪く、付属品も揃っていません。最低入札価格を入れてみたらそのまま落札してしまいました。  商品が届いて開封してみると、いかにも使い込んで埃まみれの無線機と、自作のコンデンサーマイクが入ってい

          U/VHF FM機が来ました

          ゆるい勉強会2014-1

           縁あって、2024年1月27日に開催された、ゆるい勉強会@あけまして勉強会2024で話す機会をいただきました。IT関連の勉強会なので直接関係はないのですが、たまには異業種の方々の話を聴いて刺激を得ることができればと思い、せっかくなのでアマチュア無線と絡めて自分がどのていど沼にはまっているのか吐露しました。以下にスライドを挙げますので、どんな話なのか雰囲気だけでも感じていただければと思います。 de JM8SMO (スライド14は時間のため割愛)

          ゆるい勉強会2014-1

          APRSに挑戦

           ふとしたきっかけで、APRS (Automatic Packet Reporting System)を始めてみることになりました。何事も食わず嫌いというのはよくないので、まずはシステム構築から運用まで一通り試してみようという思いからです。  APRSとは無線とインターネットを融合させて、通信パケットをサーバーに集約してその情報を共有するシステムです。たまたま所有していたハンディ機(VX-8)がこの機能を持っていたので、これを端末として実験することにしました。無線とインターネ

          APRSに挑戦

          IC-706のマイクコネクターにパドルを接続する

          ICOMのIC-706にはマイク端子のup/downを利用して電鍵やパドルを接続することができます。 抵抗2本と3.5mmジャックがあれば簡単に作ることができますので、回路図に従って作ってみました。 なお、本体と接続するコネクターはLANケーブルを流用しました。別の無線機とパドルを共用する際に、背面のコネクタを使わなくていいのは便利です。 #つくってみた

          IC-706のマイクコネクターにパドルを接続する

          CWopsに入会しました

          北海道ハムフェアに、CW Operatorsという集まりのブースが出展していて、そこで1枚のパンフレットをいただきました。そこには次のようなことが書いてありました。 この文を読みながら厳しい入会条件だなと思っていたら、ブースを運営していたJN1THL田沼氏が詳しく説明してくださいました。入会するためには、会員になっている方と交信して推薦してもらうというプロセスを経る必要があります。毎週、高速モールスで交信する時間(CWT)が設定されていて、会員外でも参加できるので、まずその

          CWopsに入会しました

          QNHと単位系

           無線通信ではQで始まる略号をよく使います。アマチュア無線では使いませんが、航空無線を聴いているとQNHというQ符号が頻繁に登場します。これは空港で測定した大気圧で、QNH2980と言えば、気圧が29.80 inch Hgであることを意味します。航空機はこの数値を基準として気圧から高度を知ることができます。  物理学で重要な考え方に、人間が都合によって持ち込んだ便宜的なものと自然界は独立しているというものがあります。この場合では、気圧という物理現象はどんな単位を使って測ろうが

          QNHと単位系

          バーチカルアンテナを建てる

           アマチュア無線で使われるアンテナにも各種あって、それぞれ特徴が違います。バーチカルアンテナは教科書では出てきますが意外となじみがないかもしれません。同じ原理でもグランドプレーン(GP)アンテナのように市販されているのを見たことはありません。さらに言えば、GPアンテナが使えるのならば、そちらを使うほうが有利です。バーチカルもGPも、地表もしくはそれに見立てた面(これがグランドプレーンです)に対して垂直に1/4波長の導体が立っている構造をしています。給電点インピーダンスは約36

          バーチカルアンテナを建てる

          Memorandum: fr24feed and dump1090-mutability

          Since I bought a Raspberry Pi, I built an ADS-B feeder for FlightRader24. In this article, I assume the reader has experience building his/her feeder. I also assume the Raspberry Pi has been configured to work with the Raspberry Pi OS versi

          Memorandum: fr24feed and dump1090-mutability