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日記

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2020年9月の記事一覧

2020年9月30日(水)

昨年まではこの日は、所属していた物流センターの棚卸が行われる日で、例年ほぼ同じ手順でやっているけれどもそれでも規定量の緊張感が事務所には走っていたけれども、異動した今年はそれとは無縁の緩やかさだった。本当に上半期の最終日か? 上司も隣人も休暇だったので、私の在宅勤務も極めて穏やかに進行した。井伏鱒二の【駅前旅館】が読まれ、語っている「私」と語られている「私」の微妙な距離の突き放しが面白く、その距離

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2020年9月29日(火)

秋葉原に行ったのは久しぶりのことだった。等間隔に立ち並び、ひとたび目を合わせようものならつかつか距離を詰めて話しかけてくる呼び込みの一群は、貴様らはポケモントレーナーか? ハナダシティ北部のゴールデンブリッジか? と糾弾したくなるものだったが、かといって一切眼中にありません。みたいな態度を取られる、というか、いかなる態度も取られないというのも、それはそれで得も言われぬ気分になるのだった。ドバイ送り

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2020年9月28日(月)

新宿はランチの選択肢が選り取り見取りだね。っていうフェーズは終焉を迎えつつあって、ここ最近は、少なく見積もっても週に三回は、事務所の隣の薬局で総菜とお握りあるいはパンの類いを購入して食べている。ポイント一倍の日なんて存在するんですか? という頻度でポイントが五倍または十倍のフェアをやっていて、ポイント増分の日にお得感を感じるというよりも、ポイント平常の日に損害を被った気分にさせられる。気に入りの卵

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2020年9月27日(日)

理容室では極力沈黙で場を満たしたい側の人間なので、散髪されているあいだは基本的には眼を閉じているのだけれども、かと言って不機嫌であるとか髪を失っていく過程ですでに造形に不満を持っているというふうに思われたくもないから、極めて柔和な印象を与えるように心掛けた眼の瞑り方を心掛けていて、きっとその試みは成功していてこの上なく穏やかな表情を私は浮かべているのだろうが、目をつむっているのでそれを見ることはで

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2020年9月26日(土)

新しいリュックが購入されて、それを見越して小さいサコッシュで出かけていたので中身をそれごと移し替え、新宿駅からの帰路に早速背負われた。猫背のわずかながらの矯正を促してくるような背の固いリュックで、とても好ましく頼もしかった。特に荷物を詰め込まなくても自立する、というこれだけは譲れない条件は、そうでないリュックで過ごしたこの三ヶ月間で得た教訓でもあった。生活に即して各ポケットに収める物品の位置をまず

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2020年9月25日(金)

五連休明けの出勤とはいえ、今週は昨日働けばあとは今日一日しか残っていないということはわかっていたので、感覚としてはそれなりに楽、というか、通常通りの五連勤が何食わぬ顔やってくる週が明けた月曜日のほうが鬱屈の度合いが強いことが予想されたのだが、結局その立てられた予想に今日から苛まれていたので、何やらすっきりしない気分の一日を過ごしていた。昼飯には気まぐれに大陸系の、という形容が一般的なのかは知らない

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2020年9月24日(木)

乗っている電車が新宿駅のホームに滑り込んでいくときの、方々に延びている線路がぎゅっと凝縮して束なっていく様子を、降車するために手にしていた文庫本をリュックの所定の位置に仕舞い込みながら眺めるまでもなく眺めるわずか数秒に奇妙に高揚することも、じつに一週間ぶりのことだった。最近乗っている電車はその中でも端のほうに位置する十四番線だから、束ねられた線路のほとんどを視界に収めることができそれはそれで壮観で

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2020年9月23日(水)

影響を受けたラーメン屋を訊かれれば、落合の児ノ木とこたえるだろう、というくらいここの純煮干はおいしくて、この五連休の最後を飾るにふさわしい地点だった。そこへは東中野から歩いていったのだが、途中で無為におりるには頃合いの坂道があったので最短と思しき道順を外れてそこを下り、徘徊することになった住宅街にはひっそりとした小公園があった。そこには小公園には置かれるべきでない規模の遊具が所狭しと置かれていて、

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2020年9月22日(火)

論理の名の下には反論できないけれども、感覚においては承服しかね、またその拒絶が正当なものであることは不思議と確信されている、という類いの言説が世の中にはいくつもあって、その代表例が、チーズバーガー二つを購入して重ねればいいのだからダブルチーズバーガーなど不要だ、という片腹痛い主張である。畳に横腹を押し付けながら聞いていたお笑い芸人のラジオのアーカイブで今日耳にした論争だけれども、それより以前、私が

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2020年9月21日(月)

世間の大半の人間は今日という日を迎えたその瞬間に連休の折り返しを通り抜けたことになるのだろうが、水曜日も休暇を取得している私にとっては、まだ連休の半分が残っているという愉悦の気分を持続させることについて、そこからまだ半日の猶予が許されていた。しかもその半分は、ほかの人間のそれよりも長い時間を指している。そう思うだけで心に余裕がもたらされた。その後、とても濃厚な一日を過ごすことができたという気分でい

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2020年9月20日(土)

微妙に残る前日の酒と、両足の甲の不可解な筋の痛みのせいで、終日家に留まらざるを得なかった。トイレットペーパーが不足している家だったので、胃腸の調子を制御する必要があった。前日の夜、三鷹駅で一旦済ませておいたのは、酔っている人間としては最大限褒められるべき好判断だった。横たわり、長嶋有の新刊を読んでいた。面白いのだが、日々の観察による気づきの滑り込ませ方が露骨というか、気づきの説明が作中に溶け込んで

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2020年9月19日(土)

校正の初校が送られてきたので、目を通す。誤字脱字の多さに辟易しました。それから川口に住んでいるかつての同期の家に行く。赤羽から歩く。荒川を横断する橋を渡りきるとそこは埼玉県だった。荒川の河川敷にはテニスコートがあったが、コートと川の流れを隔てるネットは低くまたその距離も近いので、ロブを打つ際に腰の回転が足りないか、逆に捻りの度が過ぎると、簡単にテニスボールは着水するので、東京湾の河口には、黄色い球

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2020年9月18日(金)

思い立ったが吉日ということで、サイクリングロードを延々と見られるオンデマンドを契約した。ツールドフランスが開催されていて、その録画放送を見ながら自宅で作業をした。ロードレースは、蛍光色のジャージを着こんだ数組の集団が自転車で風光明媚な外国を走っている姿や、それを応援する牧歌的な外国人を眺められればそれで良く、細かいルールや戦略やチームや選手のことは、別段わかる必要もなく、むしろわからないままで眺め

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2020年9月17日(木)

久々に、と言っても二年ぶりくらいに会った会社の人間があからさまに老け込んでいて、老け込んだなあこの人、と思う人に会うのは久々だったので、人は老け込むものだということを思い出した。決算の打合せで、その老け込んだ人間と、私の上司がとても親しげかつ上下関係を感じさせない口調で話していたので、このふたりは同期なのだろうか、ということばかりを考えていたら打合せが終わっていた。