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DV男に起こった悲劇

彼は過去にとても困難な出来事があり、それが原因で彼は自分の国を出て他の国で勉強したり働いたりしていた。

その出来事は彼にも誰にもどうしようもなかったことで、彼の家族のそれが原因でずっと辛さや悲しみを抱えていて、普通の社会生活を送るのが困難なほどだった。

私にはそのような辛い経験はないから、初めて彼からその話を聞いた時はどう反応して良いのかわからなかった。
簡単に、分かるよとは言えないし、経験していないのにわからない。
ただ経験したら心が張り裂けそうに辛いだろうと想像はできる。

私なら立ち直れるか?
私の両親なら立ち直れるか?
いや、相当難しいだろうと容易に想像できた。

それでも人は生きていかなければいけない、そんな辛い過去を抱えて生きていくなんて悲劇だ。
でも生きていくしかない、ならば生きていくために働きすべきことをし続けなければいけない。

そんなことがあっても、こんなに頑張る彼を私は尊敬していた。

だから私はその事については自分から触れないようにしていた。

彼はその出来事を使い、僕はかわいそうな人間なんだ。
だから僕は何をしても許されるのだ。

そして私は、それを聞いてしまったがために彼をガラスのように扱うようになってしまった。

この出来事は私と出会うずっとずっと前に彼に起こった出来事なのに、DVが始まるとこの出来事さえも私のせいにするようになるのだった。

私と会う前の話なのに、私がこの件に絡んでいるはずがない。

そうだ、このように彼は私が絡んでいるはずのない、私には全く関係のない出来事すら私のせいにするようになる。

結婚前は若干他者に対してのダメ出しが多い程度だったのが、結婚するとその矛先は私に向かう。
それでも彼の中で納得いかないときは、私の両親に向かう。
そして次は私の祖父母に向かう。

彼はいつも彼が正しく、彼が正義だと思っている。
彼は思いやりがあり、全ての人の気持ちや考えていることを完璧に理解しているがために、全ての人をコントロールしている気になっているように見えた。

だがもちろんそんな訳はなく、そのうちの誰かが彼の思うように動かないとアイツはバカだ、クソだ、生きている価値がない、虫以下などと究極の悪口を言い始める。

そのような悪い言葉を私に言い始めたのは、結婚後だ。

それまでは悪い言葉は言ったことはなく、イライラしている様子も見たことがなかった。
彼が気に入らない時は、笑いながらオブラートに包んで赤の他人が注意すべき点を指摘する。
その頃から、かなり厳しいなとは思っていたが、彼自身自分にも相当厳しいのが一緒にいてわかっていたため私は何も言わなかった、言えなかった。

だって彼は完璧だったのだから。

私も日本で普通に教育を受け、受験や就職宣戦を潜り抜け、社会で働いてきた。
もちろん完璧ではないが、そんなに外れた常識を持っているとは思っていない。

海外に出てから日本のモラルはすごく高いと感じたし、私自身も仕事でステップアップしていたし、心許せる友人もいて、今生きている中では十分なトラブル回避できる術ももっていると思っていた。

彼はその全てを力一杯全否定してくる事になるのだった。

それが、彼が私をコントロールするための準備なのだった。
私に私は間違っていると知らしめ、私に自信を失わせ、外に出て他の誰かに自分を見せることがどれだけ恥ずかしいことなのか、私と言う存在がどれほど惨めで低俗な人間なのかを、彼は10年私に教え込む事になる。


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