拓殖大学 海外事情研究所

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国際情勢の分析をお届けします。 ホームページ: https://www.takushoku-kaiken.net/

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近づくゼレンスキー大統領の「悪夢の選択」  ウクライナ戦争の潮目が変わった

名越健郎(拓殖大学特任教授)  開戦から1年8カ月を経たウクライナ戦争は、ここへきて潮目が変わってきたようだ。戦況の膠着でウクライナ側が苦境に陥ったのに対し、長期戦に持ち込んだロシアが優位に立つ構図だ。  ウクライナ軍が6月に開始した反転攻勢が不調に終わったことや、イスラエル軍とハマスの大規模戦闘で米国のウクライナへの関心が低下し、軍事援助継続が不透明になった背景もある。  欧米諸国がウクライナに対し、ロシアとの和平交渉を打診したとの報道も流れた。ウクライナのゼレンスキー大

    • Seoul ADEXの開催

      梅田 皓士(拓殖大学 海外事情研究所助教)   2023年10月17日から22日にSeoul ADEXが開催された。Seoul ADEXの正式名称は「ソウル国際航空宇宙および防衛産業展示会」(Seoul International Aerospace & Defense Exhibition)であり、開催期間中には、約550社が参加し、航空関連の防衛装備品の他、韓国空軍の曲芸飛行チームである「ブラックイーグルス」によるデモ飛行をはじめとするエアーショーなども開催される。その

      • 台湾民衆党は生き残れるか?

        門間 理良(拓殖大学 海外事情研究所教授) 存在感を示す政党となった民衆党  2024年1月13日に実施された台湾の総統選挙で、民主進歩党(以下、民進党)公認の頼清徳・蕭美琴ペアが558万6019票(得票率40.05%)を獲得し当選した。中国国民党(以下、国民党)公認の侯友宜・趙少康ペアは467万1021票(同33.49%)、台湾民衆党(以下、民衆党)公認の柯文哲・呉欣盈ペアは369万466票(同26.46%)だった。同時に実施された立法委員選挙では、民進党が改選前62議

        • インド太平洋地域に対する米軍の戦略を読み解くために

          佐藤丙午(拓殖大学海外事情研究所所長・国際学部教授)  実は日米安保条約を素直に読むと、米軍が日本の防衛に協力するかどうかは、その時の政治判断が大きく影響することがわかる。第5条で「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」とあり、第6条で「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維

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        近づくゼレンスキー大統領の「悪夢の選択」  ウクライナ戦争の潮目が変わった

          戦争のできない北朝鮮

          荒木和博(拓殖大学海外事情研究所 教授)  北朝鮮はミサイルを撃てば撃つほど戦争できなくなる。  このところ偵察衛星だ米国全域をカバーしたミサイルだとやかましい北朝鮮だが、本当に偵察衛星として機能しているかどうかも怪しいというのが正直なところ。そもそも北朝鮮にとって偵察衛星に何の意味があるのだろうか。また、米国に届くミサイルで何をしようというのか。  ハッキングだ何だで一所懸命?金は稼いでいるのだろうが、だったとしても平壌ですら餓死者が出ているというあの国で弾道ミサイルを次

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          ワシントン宣言どう評価するか?

          梅田 皓士(拓殖大学 海外事情研究所助教)  「ワシントン宣言」と拡大抑止   2023年4月26日に米国ワシントンにおいてバイデン米国大統領、尹錫悦韓国大統領の間で米韓首脳会談が開催された。2023年は米韓同盟70年にも当たる年であり、それを記念する首脳会談でもある。  この首脳会談において「ワシントン宣言」が採択されたが、この宣言の中で最も注目されたのが、米国の韓国に対する拡大抑止への言及である。「ワシントン宣言」における核抑止について、韓国は「米国の拡大抑止を完全に

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          韓国防衛産業の今

          梅田 皓士 (拓殖大学海外事情研究所 助教)   韓国では、2022年の防衛関連企業の武器販売契約が過去最大に規模となり、韓国の防衛関連企業であるハンファ・エアロスペース、韓国航空宇宙産業、LIGネクスワン、大宇造船海洋、現代ロテムの主要5社の受注残高が100兆ウォン(約10兆1000億円)を超え、この5社は創業以来、最大の受注残高となったと報道された。  韓国は従来から、輸出主導型の経済構造であり、現在においても、韓国は、欧米、中国、東南アジアなどの広い地域に家電、自動車

          拉致被害者家族の現在地

          荒木和博(拓殖大学海外事情研究所 教授) 「誘導尋問してんじゃねえよ」  Aさんが振り向くとそこには首から名札をぶら下げた初老の男が立っていた。  8月2日から14日まで、東京日本橋の高島屋百貨店で「めぐみちゃんと家族のメッセージ」という写真展が開催された。カメラが好きだった横田滋さんが北朝鮮に拉致される前の横田めぐみさんと家族の姿を撮影した膨大な写真の一部の展示である。主催したのは横田宅のある川崎市のマンションの有志らでつくる「あさがおの会」。全国で写真展などを続けて

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          ロシア、ウクライナが崩壊する「戦後未来地図」

          名越健郎(拓殖大学 特任教授)  ロシア・ウクライナ戦争が長期化する中、戦争終結後の両国の領域を描いた「空想未来地図」がネット上に拡散している。 「2025年のロシア」と題した地図(↑)は、ロシアがウクライナ戦争で敗戦し、少数民族が次々に独立してロシア連邦が分裂。約30の構成体に分割されるとしている。  それによると、新生ロシアはモスクワを中心とした欧州部の狭い地域に限定され、チェチェン、ダゲスタンなど北カフカスのイスラム民族は独立。極東のハバロフスク地方やアムール州の

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          台湾の防衛構想

          門間 理良(拓殖大学 海外事情研究所教授) はじめに  習近平は政権を掌握(総書記・国家主席・中央軍事委員会主席への就任)してからというもの、軍改革を強力に推し進めてきた。第二砲兵のロケット軍への昇格、サイバーや宇宙を担当する戦略支援部隊と統合的な後方支援任務を遂行する聯勤保障部隊の新編、七大軍区の五大戦区への改編、四総部(総参謀部・総政治部・総後勤部・総装備部)の解体と中央軍事委員会直轄の15部門制への改編による中央軍事委員会の指導力強化、陸軍指導機構の新編による陸軍

          日本人研究者が北京に行って安心ですか。拘束されませんか?

          富坂聰(拓殖大学海外事情研究所 教授) 質問 日本人研究者が北京に行って安心ですか。拘束されませんか? 答え 研究者に限らず中国にかかわる日本人の多くが抱く疑問です。 本来なら法律の専門家に尋ねるべきことですが、私なりに回答します。 拘束を懸念する根拠となる主な法律は「国家安全法」と「反スパイ法」です。とくに2023年7月の「反スパイ法」の実施から、メディアが過剰反応し、日本でも強い警戒感が広がりました。 ただ結論を急げば、これは少々過敏な反応といえるでしょう。

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          キャンプ・デービッドにおける課題と注目点

          梅田 皓士 (拓殖大学海外事情研究所 助教)  2023年8月18日に米国のキャンプ・デービッドにて日米韓首脳会談が開催される見込みである。バイデン政権発足以降、キャンプ・デービッドに外国首脳を招待するのは今回が初めてである。また、これまで日米韓の三ヶ国の首脳会談は国際会議に合わせて開催されてきたものの、今回は単独で開催される。このことから、三ヶ国の中でもホスト国である米国が日米韓の枠組みを重要視しようとする姿勢であると見られる。  日米韓の三ヶ国の枠組みは、その重要性につ

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          プーチン大統領の後継者は誰か

          名越健郎(拓殖大学 特任教授) ロシアは秋から政治の季節  ウクライナ侵攻を続けるロシアは来年3月17日に大統領選挙を控え、秋から「政治の季節」に入る。  大統領は軍最高司令官であり、プーチン大統領は続投しない場合、ウクライナの戦争指導ができないだけに、出馬は既定方針のようだ。  ロシアの独立系メディア「メドゥーザ」(7月18日)は、大統領府当局者の話として、クレムリンは、プーチン氏が80%の得票率で当選することを目指し、準備を開始したと伝えた。  秋に出馬宣言をする方針

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          謎だらけの外相解任の裏で中国外交への影響は僅かという不思議

          富坂聰(拓殖大学海外事情研究所 教授)  一カ月ほど動静が伝えられなかった秦剛外交部長が解任された。全国人民代表大会常務委員会が決定。国営新華社通信が伝えた。   理由は健康というだけで詳細は明らかにされていない。もちろん、これを額面通りに受け取る者はいない。  周囲が羨むスピード出世から習近平国家主席の鶴の一声で外相に抜擢され、わずか半年ほどで解任されたのだ。  秦の解任には内外から強い関心が寄せられ、定例会見では外交部報道官が質問攻めにされた。ネットにはそれ以上の

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