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『タタール人の砂漠』ブッツァーティー著(岩波文庫):図書館司書の読書随想
「この人生からすべてを望むことなどできはしないんだ、諦めなきゃあならんことだってあるさ……」
作中で、とある人物が主人公であるドローゴに向けて言った言葉だ。
本作を最初に読んだのは五年ほど前だろうか。中年と呼ばれる年代の只中にあった時だ。
当時でさえこの言葉は深く胸に突き刺さった。
年を重ねるにつれ、人生の残りの年月や体力、気力の減衰を勘案し、この世には諦めなければいけないこともある