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「嘘八百」の語源を調べたら、古事記のスサノオまで遡ってしまう話。

今日、友人と話していて、
こんなツッコミをすることがあった。

「まったまた〜、そんな嘘八百〜!」



そう言ってすぐに、私は思った。


(待って、嘘八百の八百ってなんだ?)



会話の途中だったが気になった。
そうして友人に言った。



「ねぇ、嘘八百の八百って由来なに?」

「八百?たしかに」


ここですぐに調べない。
議論がしたい。
調べてはいけない。
検索ではなく思索をしたい。


そういうわけで考えてみた。

九百ではダメなのか?
八百と言うからには理由があるはずだ。
八百がつく言葉を考えてみる。

・八百万の神

・八百屋

八百だ。

なんか数が多いものを表現してるっぽい。ということは、めちゃくちゃたくさん嘘をつくことから転じて「嘘八百」となったのでは?


「そ、それだぁ!」

となった。


さぁ、検索して答え合わせをしてみる。
すると出てくる出てくる。



嘘八百とは、ウソがいっぱいという意味、
あるいは言っていることのすべてが嘘であるということ。

「八百」という数字は、「八百万(やおよろず)の神」という言葉があるように誇張表現。神様だと「万」が付くが、そこは人間のこと、八百屋の店先に並ぶ品物程度の数のウソで押さえて、とても神様のつく「ウソ八百万」には及ばないと遠慮しているのである。
引用 : 笑える国語辞典


なんか、合ってるくさいぞ。

となると「八百」という数字が、なぜ数が多いことの比喩表現として使われているのかが疑問になる。調べを進めると、なんと「古事記」にたどりついた。


日本における「八百」の初見

文献上の初見は『古事記』上巻の「天(あま)の岩戸」の段にある「八百万神、天(あめ)の安(やす)の河原に神集(かむつど)ひ集ひて」である。

このほかに同様の総称として八十諸神(やそもろかみたち)、八十万神、八十万群神(もろがみ)などが『日本書紀』『万葉集』などにみえる。

いずれも「八」が多数を意味し、本居宣長(もとおりのりなが)は『古事記伝』で「八百万は、数の多き至極を云(いへ)り」と述べている。
引用 : コトバンク


どうやら「八」には「数が多い」という意味がそもそも込められているらしい。さらに「あらゆる方面の」という意味も入っているんだとか。「2の立法数(三乗)が8」なので「全ての方角の」または「広がり」を持つ数字。また「八」は末広がりなので、縁起のいいものとして古来から好まれたらしい。なんかぽいぞ。思えば、様々な日本語にもその形跡は見てとれる。

・八岐大蛇(ヤマタノオロチ)

・八方美人

・八百屋

・八重桜

・八百八町

・八咫の鏡

・千代に八千代に

・八つ裂き

・四方八方

・八方塞がり

・八つ当たり

・七転び八起き


さらに古事記を調べると、
なんと、日本最古の和歌はこうらしい。

八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに
八重垣作る その八重垣を
(作 : 須佐之男命)
引用 : 古事記

意訳)
幾重にも重なりあう雲が立ち昇る
ここ出雲に立ち昇るのは
八重垣のような雲だ。

妻と住む宮にも
八重垣を作っているよ 
そう八重垣を。
(byスサノオ)


Oh My Gosh!

マジかよ、byスサノオだ!
スサノオじゃねーか!!!

神だ。神が詠んだ歌だ。どんだけ「八」を連打してくるんだスサノオ。でも、仮にスサノオが本当にこう詠んでいたのだとしたら、スサノオがいた頃にはすでに「八」という文字には「数が多いさま」の意味が込められていたことになる。もう分からん。



とまれ結論は、

「八」は日本古来から「数が多い様子」を表すもので、古事記にもそれが見てとれるのである。




ちなみに、ここの記事が「八」について、吐くほどまとめてくれている。暇な時間に是非読んでみてほしい。

▶︎東洋経済オンライン


最後に「八百万の神」に関する私の好きなエピソードを紹介して終わりたい。もう「嘘八百」は関係なくなっちゃった。


▶︎アメリカ人と八百万の神

あるところに、日本語を勉強するアメリカ人がいた。彼はキリスト教徒なので一神教。信じる神は1人しかいない。日本の宗教観を学んでいると「八百万の神」という表現に引っかかるものを感じたという。

「なぜ八百なんだ?九百ではダメなのか?っていうか日本には神多すぎジャナイ?」

先程の私と似た疑問だ。
なので、友人の日本人に聞いてみたらしい。

「なぜ日本人は八百万の神と表現するのか?」

質問された日本人はにこやかに答えた。

「八百には、数がたくさんという意味が込められていて、日本人はあらゆるものに神の存在を感じるんだ。木々や海、花や風など、全てに神を感じるんだよ。手に持ってるペンにさえもね。つまり『Everything 神』なわけさ」

そう聞いたアメリカ人は「なるほど」と妙に納得したらしい。



何か形容しがたいが、私はこのお話が好き。




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