【伊勢遷宮編】エピソード10　詫びた皇女

第十一代天皇、垂仁天皇すいにんてんのうの御世みよ。

紀元前4年、皇紀こうき657年（垂仁天皇26）。

天照大神あまてらすおおみかみ（以下、アマ）の鎮座地ちんざちを求め、一行は、瀧原宮たきはらのみやを創建そうけんした。

しかし「アマ」様が、ここではないと申もうされたので、再び旅立つことになったのであった。　

ワッコ「や・・・山やま越ごえになるとは・・・。」　

カーケ「ワッコ・・・。南へ、南へと進んでおるが、こちらで間違まちがいないのかね？」　

ワッコ「間違いかどうかなど、私には分わかりませぬ。ただ、南の方にこそ、求めるべき地が有るのではないかと感じる次第しだいにて・・・。」　

ちね「直感ちょっかん頼だよりっちゅうことか？」　

ワッコ「分わかりやすく申もうせば、そういうことになりまする。」　

武日たけひ「じゃっどん、皆みなも疲つかれてきちょる。そろそろ休んだ方が、いいじ（いいよ）。」　

ワッコ「左様さようにござりまするな。」　

乙若おとわか「あっ！　あちらに湧水わきみずが！　我われが汲くんで参まいりまする。」　

ワッコ「すまぬな・・・。」　

乙若おとわか「ささっ。どうぞ、お飲みくだされ。」　

くにお「拙者せっしゃたちも、湧水に与あずかろうぞ。」　

インカ「ふぅぅ。一息ひといき、つけましたな。」　

おしん「ところでよぉ。この湧水は、二千年後も湧わいてるって知ってたか？」　

インカ「なっ！？　まことか？」　

おしん「嘘うそ吐ついても、仕方しかたねぇべ。『倭姫やまとひめの神水しんすい』って呼ばれててよぉ、今でも、利用されてんだ。」　

ワッコ「私が飲んだことで、そんなことになるのか？」　

おしん「まぁ、仕方ねぇな。なんてったって『ワッコ』様は、この時代の『アイドル』だからなぁ。」　

ワッコ「アイドオ？」　

アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」　

市主いちぬし「ワッコ様！」　

ワッコ「ん？　如何いかが致いたした？」　

市主いちぬし「ここより南の地に、休める処ところを見つけもうした。そちらで、ゆっくり疲れを取りましょうぞ。」　

ワッコ「そうか・・・。では、そう致いたそうぞ。」　

市主いちぬし「では、紙面しめんの都合つごうで、早速さっそく、紹介致しまする。この大きな岩にござる。」　

オーカ「大きいだけやのうて、平ひらたい岩にあらしゃいますなぁ。」　

カット「大所帯おおじょたいでも、坐すわることが能あたいますな。」　

ねな「見晴みはらしも、いいわよ。」　

おしん「そういうことで、この岩は、乙女岩おとめいわと呼よばれるようになったんだ。」　

そのとき、村人たちがやって来た。　

村人（い）「ようこそ！　皇女ひめみこ様さま！」　

村人（ろ）「そして、玉串たまぐしを捧ささげまする。」

ワッコ「おお・・・。かたじけない。では、皆みなに『玉串たまぐし』の姓せいを授さずけようぞ。」　

村人たち「ありがたきかな！」×多数　

おしん「こうして、二千年後も玉串たまぐしさんが暮くらしてるんだべ。」　

くにお「ちなみに、この辺へんの地名は、三重県みえけん度会町わたらいちょう川上かわかみとの由よし。」　

カーケ「一之瀬川いちのせがわを下くだっているんだぜ。」　

ワッコ「とにかく、山の向こうに、開ひらけた処ところが有るようです。鎮座地に相応ふさわしき地かもしれませぬ。一休ひとやすみ済すんだら、そちらに向かいましょうぞ。」　

こうして、休憩きゅうけいを取った一行は、開けた地に向かった。　

しかし・・・。　

市主いちぬし「どこにも、良よき宮処みやどころとなる地は有りませぬな。」　

インカ「美しい地では有るのじゃが・・・。」　

ワッコ「だんだんと侘わびしい気持ちになってきた・・・(´；ω；`)ｳｯ…。」　

カット「ワッコ様！　挫くじけてはなりませぬ。」　

ワッコ「分かっておる。されど、こうも見つからぬとなると『アマ』様に申もうし訳わけない想いも沸わき起おこってくる。」　

カーケ「ワッコ・・・。」　

ワッコ「嗚呼ああ！　『アマ』様！　申し訳ござりませぬ！　この地では、良き宮処を探さがせずにおりまする！」　

おしん「こうして『ワッコ』様が詫わびられたので、この地は、侘野わびのと呼ばれるようになったんだ。和比野わびのとも書くぞ。」　

ねな「二千年後の三重県みえけん度会町わたらいちょう和井野わいののことよ。」　

ワッコ「解説は、もうよい・・・(´；ω；`)ｳｯ…。」　

一行は、どうするのであろうか？　

次回につづく