【伊勢遷宮編】エピソード32　神御衣と御饗

第十一代天皇、垂仁すいにん天皇てんのうの御世みよ。

紀元前4年、皇紀こうき657年（垂仁天皇26）。

伊勢いせ神宮じんぐうが創建された。

天照大神あまてらすおおみかみ（以下、アマ）の御杖代みつえしろ、倭姫やまとひめ（以下、ワッコ）は、アマ様を祀まつるため、様々な準備をおこなう。

垂仁天皇こと、活目入彦五十狭茅尊いくめいりひこいさち・のみこと（以下、イク）たち家族と共に、解説が進められるのであった。　

イク「ということで、機はた織おりのために、八千千姫やちちひめを招まねいたよ。『やっち』と呼んでね。」　

やっち「お初にお目にかかりまする。私わたくしが『やっち』にござりまする。」　

ワッコ「では『やっち』殿どの、早速さっそくじゃが、アマ様の御お召めし物ものである、神御衣かんみそを織おってもらいたい。」　

やっち「うわぁぁ。大きな機屋はたやにござりまするな。まるで、高天原たかまのはらの機屋のようじゃ。」　

ひばり「宇治うじの機殿はたどのとも、呼ばれているのですよ。」　

ニッシー「それだけじゃないよ。磯宮いそのみやとも、呼ばれてるんだよ。」　

ひばり「えっ？　ニッシー？　機はたを織おる所ところなのよ？　どうして、磯いその字じが使われているの？」　

ニッシー「そ・・・それは・・・。」　

シロ「母上・・・。ロマンにござる。」　

ひばり「こ・・・これが、ロマンなのね。」　

やっち「ちなみに、私わたくしの先祖、天棚機姫神あめのたなばたひめ・のかみは『古語拾遺こごしゅうい』にだけ登場する神様なのですよ。」　

マス子「そないな書物が有るんですか？」　

するとそこに、忌部和謌富奴いんべ・の・わかとみぬ（以下、わかとん）が、颯爽さっそうと現れた。　

わかとん「有りまするぞ！　我われの子孫、斎部広成いんべ・の・ひろなりが著あらわした書物にござる。」　

ロミ子「何時頃いつごろに書かれた、書物にござりまするか？」　

わかとん「平安へいあん時代じだいの平城へいぜい天皇てんのうの御世みよに書かれた書物にござる。中臣なかとみの横暴おうぼう、許すまじの精神で、如何いかに忌部氏いんべ・しが、正統なる神祇じんぎを司つかさどる者であるかを書いた、素晴すばらしき書物にござりまするぞ。」　

イク「中臣なかとみとの喧嘩けんかは、平安時代まで続いてたの？」　

わかとん「大王おおきみ！　何なんという申もうされようか！　これも、全て、大王が、我われら忌部氏いんべ・しを重おもく用もちいてくださらなかったゆえでは、ありませぬか！」　

イク「ご・・・ごめんなさい。」　

ダッコ「でも、不思議じゃ。」　

ワッコ「えっ？　姉上？　如何いかがなされたのですか？」　

ダッコ「機はた織おりの神様と言えば、私たちの御先祖様でもある、栲幡千千姫命たくはたちぢひめ・のみことが、思い浮かぶのじゃが・・・。」　

カキン「天津彦彦火瓊瓊杵尊あまつひこひこほのににぎ・のみことこと『ニニギ』様の母上様に当たる神様ですから、我われらの先祖になるわけですね？」　

やっち「同一神どういつしんという説も有るようですぞ。」　

シロ「・・・となると『やっち』は、遠い親戚のようなモノか？」　

わかとん「まあ、ほとんど遠い親戚ばかりのような気も致いたしまするが・・・。」　

なにはともあれ、神御衣かんみそが織おられたのであった。

それから、しばらくして・・・。

ワッコの元に、五柱ごはしらの神がやって来た。

すなわち、吉雲建子命よしくもたけこ・のみこと（以下、くもた）。

大歳神おおとしのかみ（以下、としお）。

桜大刀命さくらとじ・のみこと（以下、さくら）。

大山祇神おおやまづみのかみ（以下、山やま）。

朝熊水神あさくまのみなとのかみ（以下、アサーク）である。　

くもた「ついに来たぜ！」　

としお「御饗みあえの時間ですぞ。」　

さくら「さあさあ、お食べくださいませ。お飲みくださいませ。」　

アサーク「山幸やまさち、海幸うみさち、全て揃そろえておりますぞ。」　

イク「えっ？　これは、どういうことなの？」　

ワッコ「エピソード561と562で、御饗みあえを奉たてまつってくださった神様にござりまする。」　

ひばり「そのようなことが・・・。娘が、お世話になりました。」　

山やま「良いのじゃ。わしらは『ワッコ』が大好きでな・・・。此度こたびも、無事に神宮じんぐうが建造されたので、祝いの宴うたげを催もよおさんと思おもうたのじゃ。」　

シロ「か・・・神々に逢あうとは・・・。」　

ニッシー「す・・・すげぇぇ。」　

ワッコ「では、御饗みあえということで、舎人とねりや采女うねめたちも呼よんで参まいりまする。」　

山やま「うむ。そうするが、良いぞ。」　

イク「なんか、凄すごい旅をしてたみたいだね。」　

ワッコ「左様さようにござりまするか？」　

ひばり「ワッコ？　これは、普通ではないのよ？」　

ワッコ「えっ？」　

ダッコ「感覚が、麻痺まひしてるのね。」　

こうして、五柱ごはしらの神による、再びの宴うたげが催もよおされたのであった。　

つづく