【伊勢遷宮編】エピソード11　野菜を作ろう

第十一代天皇、垂仁天皇すいにんてんのうの御世みよ。

紀元前4年、皇紀こうき657年（垂仁天皇26）。

天照大神あまてらすおおみかみ（以下、アマ）の鎮座地ちんざちを求め、一行は、侘野わびのに至いたった。

二千年後の三重県みえけん度会町わたらいちょう和井野わいのである。

しかし、良よき宮処みやどころは見つからないのであった。　

ワッコ「嗚呼ああ・・・。『アマ』様に申し訳ない。」　

カーケ「謝あやまっても仕方しかたがないんだぜ。このまま、一之瀬川いちのせがわを下くだるしかないんだぜ。」　

乙若おとわか「カーケ様の申もうされる通りにござる。じっとしていても、何も始まりませぬぞ。」　

ワッコ「そうじゃな。進むしかないのじゃな・・・。」　

こうして一行は、川を下る形で、北へと進んでいった。

すると、何者なにものかが現れた。　

何者なにもの「よっ！　俺おれか？　俺は、久求都彦くくつひこだ。『クッピ』と呼んでくれ。」　

ワッコ「クッピ？」　

クッピ「そうだ。久具都比古くぐつひことも書くぜ。」　

ワッコ「して、汝いましが国くにの名は何なんぞ？」　

クッピ「久求くぐの小野おのだぜ。」　

ワッコ「では、久求くぐの小野おのに、久求社くぐ・のやしろを建たてようではないか！」　

ちね「なんで、そうなるんや？」　

おしん「仕方ねぇべ。『倭姫命世記やまとひめのみこと・せいき』に、そう書かれてるんだべ。」　

クッピ「祭神さいじんは、俺だぜ！」　

市主いちぬし「二千年後も建っておるのか？」　

クッピ「当たり前だろ。その名も、久具都比賣くぐつひめ神社じんじゃだぜ。三重県みえけん度会町わたらいちょう上久具かみくぐに鎮座ちんざしてるぜ。」　

武日たけひ「ん？　姫ひめになっちょるじ！？　どういうことっちゃ？」　

クッピ「実じつは、久具都比売くぐつひめも祀まつられてるんだぜ。ちなみに、俺と姫は、この地の水と五穀ごこくの神様と言われているぜ。」　

オーカ「されど、何故なにゆえ、姫の方が、社名しゃめいになってますのや？　お迎むかえした、汝いましの名であるべきやと思いますが・・・。」　

クッピ「何故なにゆえかと問とわれても・・・。」　

ねな「何故なぜって？　ロマンだからよ。」　

アララ「あらら・・・。そういうことになっちゃった。」　

クッピ「と・・・とにかく、良き宮処を知ってるぜ。付ついて来きな！」　

こうして一行は、言われるがままに付いて行った。

すると・・・。　

クッピ「ここが良き宮処だ。」　

ワッコ「ここ？　一体、何処どこなのじゃ？」　

クッピ「そういうことは、こいつに会あってからにしろ！」　

ワッコ「こいつ？」　

そこに現れたのは、園作神そのつくるかみ（以下、そのる）であった。　

そのる「初めまして、姫様。野菜やさいを作る御園みそのを献上けんじょう致いたしますぞ。」　

ワッコ「御園みそのとは、畑はたけのことじゃな？　されど、何故なにゆえ、野菜なのじゃ？」　

そのる「この野菜は、ただの野菜ではありませぬ。」　

ちね「ちょっと待まてぇ！　『ただ』やないっちゅうことは『金かね』かかるんか？」　

そのる「そういうことではありませぬ。『アマ』様にお供そなえする野菜にございます。」　

ワッコ「それは、素晴すばらしい・・・。では、汝いましのために社やしろを建てようぞ。」　

カット「こうして、園相社そのう・のやしろが建てられました。」　

くにお「候補地は、園相そない神社じんじゃにござる。」　

インカ「祭神は、曽奈比比古命そないひこ・のみことにござりまする。」　

そのる「我われのことですぞ。」　

オーカ「初めから、曽奈比比古そないひこで登場すれば良かったのではありませんか？」　

そのる「ここは『倭姫命世記やまとひめのみこと・せいき』の記述に従したがった方が良いと思った次第しだいです。」　

オーカ「なるほどなぁ。」　

ワッコ「して、鎮座地は？」　

乙若おとわか「三重県みえけん伊勢市いせし津村町つむらちょうにござりまする。」　

そのる「更さらに詳くわしく言うと、津村町つむらちょうの白木しろきに鎮座しておりますので、地元じもとの人たちは『白木しろきさん』とか『しろきの宮みや』と呼んでおりますぞ。」　

こうして、畑を献上された一行は、更に進んでいった。

そして・・・。　

ワッコ「何と素晴らしい野原じゃ。目弖野めでのと名付なづけようぞ。」　

野原に感動する「ワッコ」。

それより、良き宮処は見つかるのであろうか？　

次回につづく