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牧野信一論2.0

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記事一覧

前は違ったのだ 牧野信一の『凸面鏡』をどう読むか⑤

 昨日は牧野の設定崩しに振り回された。  ちょんちょん軽めの足払いでけん制しておいて、掴…

小林十之助
13時間前

まだ兄弟がいるかもしれない 牧野信一の『凸面鏡』をどう読むか④

 昨日は、凸面鏡で親友の姿が歪み「鼻でか」が現れたと書いた。それにしても日本アイスクリー…

予測できたはずなのに 牧野信一の『凸面鏡』をどう読むか③

 結局人間の感情などというものは言葉で捉えたつもりでもそこから少しずつずれているものだ。…

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グワーンと鐘が鳴る 牧野信一の『凸面鏡』をどう読むか②

 三島由紀夫はそんなことを書いてみる。生殖は人間の生々しい一面であり、生物の本質だからだ…

十五秒足りない 牧野信一の『凸面鏡』をどう読むか①

 この作は大正八年四月のものとされているので、『ランプの明滅』よりも先に書かれた可能性が…

電源ボタンと音声の小 牧野信一の『ランプの明滅』をどう読むか②

 そんなことをしても無駄だ。  どうにもならない。  そうわかってはいるけれど兎に角昨日…

分裂させられる 牧野信一の『ランプの明滅』をどう読むか①

 牧野信一の記憶は当てにならない。このあたりの話はころころ変わる。それでもこの『ランプの明滅』は初期作品の一つではあるのだろう。  ここまで『闘戦勝仏』『爪』と読んできて、そのタイトルがあまり作品を象徴しないことが見えてきた。『爪』は『妹』『道子』『寝言』『冷笑』といくらでも別の題大がつけられそうだし、むしろ「爪」は主題に当たるところではないのではなかろうか。さて、では『ランプの明滅』はどうだろうか?  それはまだ誰にも解らない。何故ならまだ読んでいないからだ。  就職

うつかりしたことは云へない 牧野信一の『爪』をどう読むか⑤

 とにかくとても疲れた。すべてが無駄なことのようにも思えてくる。  寝ていて転んだものな…

おかしいのはどちらだ 牧野信一の『爪』をどう読むか④

 なかにはたまたまではなく、ものすごく悲痛な理由から私がこんな作品を今更読んでいるのでは…

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鵜呑みにしてはいけない 牧野信一の『爪』をどう読むか③

 家の前の庭にテントを立ててその中で犬を撫でる様子を通行人に見せびらかしていたおじさんが…

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この宇宙こそが問題だ 牧野信一の『爪』をどう読むか②

 昨日は「彼」が三日も本を読まないことがおかしいと書いた。よく考えると煙草と珈琲について…

小林十之助
10日前
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平凡すぎる彼の嘘 牧野信一の『爪』をどう読むか①

 本人の弁によればこれはどちらかわからないほぼ処女作の一つである。らしく書かれている。 …

小林十之助
11日前

比喩と来たか 牧野信一の『闘戦勝仏』をどう読むか⑪

 悟空は十分自覚的である。「俺は俺の為のみに快楽のみを求めて、君達よりも余程面白い思ひを…

小林十之助
12日前

計算が合わない 牧野信一の『闘戦勝仏』をどう読むか⑩

 牧野信一は侍女をして賽太歳を「王様」と呼ばせてみる。村上龍が『半島を出よ』で書いた通り、たとえ合理的な支配でなくとも、一旦支配されてみれば、人はその支配を受け容れるしかないのではなく、むしろその支配が不合理なものであればあるだけ、積極的に支配されようとするものであることを確認するように。しかし村上龍がしたお勉強を牧野信一はしていないだろう。牧野はさして深い考えもなしに、ただ自然に「王様」と書いてみただけかもしれない。  しかし悟空は佯狂の詩人ではない。ここでは賽太歳の残忍