栗山 心

小説家、俳人、ハロウィン生まれ 一眼レフ初心者ですが 、基本、冒頭の写真は自分で撮って…

栗山 心

小説家、俳人、ハロウィン生まれ 一眼レフ初心者ですが 、基本、冒頭の写真は自分で撮ってます Novel Jam2021Online 最優秀作品賞受賞、イグBFC3 二回戦出場、第9回漂流紀行文学賞優秀賞

マガジン

  • 俳句

    自作の俳句をまとめています

  • 魔法のワンピース「妄想ワンピースシリーズ」

    『年を重ねて美しく、自分の足で颯爽と』をモットーにしているウォーキングインストラクターで、なおかつ、着るだけでマイナス5キロ痩せ見えの魔法のワンピース®︎代理店『Rana』を主催している友人の、ワンピースのお客様用に、短いお話を書かせていただいています。このご時世、なかなか新しいお洋服を買いたい気持ちにならないかもしれないですが、少しでも明るい気持ちになれたら、と思います。 Rana https://www.facebook.com/profile.php?id=100008326688288 https://line.me/R/ti/p/%40ynr5038t

最近の記事

Bar 記憶

 バー記憶があったのは、急行の止まらない私鉄の駅だった。  駅裏の狭い道を行った、雑居ビルを下りた地下の突き当たり、昼間やっているのは、スナックに居抜きで入ったインドネパール料理店と、フィリピン家庭料理の店だけで、そのどちらもが定休日の日には、夕刻になって、ようやくここが廃墟ではなく、開店している店もあることが分かるようなタイプの場所にある。  付近の空気が微かに湿っているのと、小学生の頃を思い出させるプールの匂いがしているのは、地下に、この辺りでは老舗のスポーツクラブがある

    • 北向き 

      当日出されたお題に従い、二十分で千字までの文を書く「千字戦」第一回に参加しました。 一対一のバトルで一戦目は負け、二戦目の「開いている」がお題の、この作品で五位に食い込めました。 「北向き」  いつもどこからか冷気が入ってきた。夏でも首筋にひやりとしたものを感じた。  築四十年の新しいとは言えない一戸建てだったから、建具が古びて、ガタが来ているのだろうと、あちこち見てみても、おかしいところはどこにも無かった。建物も裏側はかつての農道で、街角には誰が差しているのか見たことは

      • 熱海句会の想い出

        もうずいぶん経ってしまいましたが、この10月は「熱海で開催される句会に参加しませんか」とお誘い頂き、最高に素敵な方々と最高に素敵な時間を過ごしたのが、今年のとても大きな想い出です。 通ひ路を見失ひをり草の花  心 光源氏になったつもりで詠んだこの句を、ゲストの方が「これは恋愛句ですね」と読んでくださったのが、一番うれしかったです。一切説明していませんが、ちゃんと通じた、と。俳句は読者を信じて作る、を実感しました。 マチネーとソワレの間とろろ飯 とろろ汁亡き友の声したやう

        • 季語警察

           「暑いねえ、もう夏だねえ」  ―はあ?もう二ヶ月前から夏だけどな。  問いかけに、ついそう答えてしまいそうになるので、気候の会話は極力したくないが、馬齢を重ねるごとに、病気と天気の話は避けられなくなり、というか、スポーツに興味無し、ペット無し、宗教や戦争は言わずもがな、子や孫や配偶者の話は下手をすると、配慮を欠いた自慢に聞こえ、近隣のゴミ出しに関する問題は人によって温度差の異なるSDGS的な問題を内包し、ジェンダーに対する思いもしかりで、初対面だったりすると計りきれず、知ら

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        • 俳句
          6本
        • 魔法のワンピース「妄想ワンピースシリーズ」
          4本

        記事

          犬目温泉

          ブーンという低い音が、どこかでしている。  室内の灯りは、常夜灯、というには明る過ぎ、本を読むには暗過ぎる。足元に気を付けながら、三分の二ほど空いている女性用休憩室の、適当なリクライニングチェアに潜り込み、薄いひざ掛けをかぶったのは、午前二時を過ぎた頃だった。  体は疲れているのに、頭は妙に冴えていて、眠りは簡単に訪れそうになく、効き過ぎた暖房のせいで、湿っていた髪はもう乾き、マスクから出た目元も、指先もかさついている。ハンドクリームは地下のロッカーの中で、五階のここから、取

          過去作品について

          2019年のブンゲイファイトクラブ本戦に出した作品を、最近、とても好きだ、またこういうのを書かないのか、と言ってもらえたことがあり、改めて読んでみると、自分的にはアラが目立ってしまい、恥ずかしい。 6枚で書く大会、というのが発表された時点で、自分で書きたいことと、共感してもらえることを考えた結果、恋愛要素を出してみたけれど、今なら違うアプローチするかな、と思ったり。4年で少しは成長しているんでしょうか。悩ましい。 こちらにあるので、良かったら読んでみてください。 ブンゲイ

          過去作品について

          となりまちのたまちゃんへ

           高校の途中まで住んでいたのは静かな町で、不便だったせいか、小学生の頃は、週に一度は母に連れられて、歩いて下北沢に買い物に出かけた。今は跡形も無くなった驛前市場が多かった。だからたまちゃんは、となりまちに住んでいる女の子。  『永遠なるものたち』で、たまちゃんが書くのは、失われてしまった世界。1993年生まれだから、平成生まれなのに、何故かもっと昔のことを描いているみたい。昭和生まれの自分がどこかで体験したことのように思える。  感想文を書きたかったけれど、読んでいる間に何

          となりまちのたまちゃんへ

          ブンゲイファイトクラブオープンマイク

          俳句を載せています。 https://twitter.com/p_a_w_books/status/1596080162487275521?s=46&t=uHrFUP8FpvgMLC8P5QtttQ

          ブンゲイファイトクラブオープンマイク

          第9回漂流紀行文学賞優秀賞受賞

          第9回漂流紀行文学賞 一般の部に「一葉の。」で優秀賞をいただきました。ありがとうございました。 第9回漂流紀行文学賞 入賞者発表! | 砂浜美術館 (sunabi.com)

          第9回漂流紀行文学賞優秀賞受賞

          イグBFC3参戦中

          https://twitter.com/ikareigBFC3/status/1586297192033136640?s=20&t=s3uqicochwn0MihLU7IGqQ

          イグBFC3参戦中

          西行の旅衣

           「あなた、刺さってるわよ」  後ろから声を掛けられた。振り向くと老婆が立ち去るところだった。年齢に不似合いな猛スピードで。  え、なんだろう。体を回してみても、何かが刺さっているのは見えないし、刺さるという言葉から想像するような痛みは、どこにも無かった。日中はまだ暑いというのに、早くもダウンコートを飾るショーウインドウに半身を映しながら、近くにあったショッピングビルのトイレに飛び込んで、鏡の前に立ったが、何も無い。ここまで来る間に、不審な眼差しを向ける人もいなかった。聞き間

          西行の旅衣

          森を見ないで木を見よう~ちょんまげツンさん流ボランティア

          「知ってますよ。サッカーの日本代表の応援してて、慈善活動してる人。(ちょんまげ姿の)目立つ格好だから有名です」  即答だった。  インタビューさせて頂くことが決まった時に、「サポーターのツンさんって人、知ってる?」とサッカー好きの知り合いに聞いた時の答えだ。ちょんまげに甲冑で無かったら、そこまで印象に残っていただろうか。ドンキの仮装コーナーで売っていそうなカツラと、手作りに見える甲冑は、周りに強烈な印象を残している。  ツノダヒロカズさん、ちょんまげサポーター、通称ツンさん

          森を見ないで木を見よう~ちょんまげツンさん流ボランティア

          バラと飛行船 回想色々

          演劇企画ニガヨモギさんの「バラと飛行船」を鑑賞。 「星の王子様」のオマージュ作品とのことで、慌てて岩波少年文庫を引っ張りだす(昭和42年発行)。前日までの一か月、小説講座の課題、投句、公募の小説とずっと書き続けていて、脱力感が凄い。読みながら、劇場へ。三河島の元映画館、という名の小屋は、本当に元映画館で、観劇を決めたのはこの場所に惹かれた要素も強い。三河島は最近、カレー文脈で語られることが多く、まず「三河島」で調べたら、電車の大事故のことが出ていて、真剣に読むうち、昔の人気

          バラと飛行船 回想色々

          宇宙の灯台守

          #創作大賞2022 宇宙の灯台守               栗山 心  「緊急事態、緊急事態」  「地球に巨大な惑星が接近中。衝突推定時刻は五日後の午前九時四十五分」  サイレンが鳴り響き、無機質な声が異常事態を告げる。  「艦長、どういたしましょう」  「ええと、君は誰だったかな」  「クルーの田中です、艦長」  「うむ、田中くん。君のような女の子じゃ話にならんな。上の人を呼んで来なさい」  「私がこのエリア担当ですが」  「そうか。仕方ない。ひとまずここに乗組員を集

          宇宙の灯台守

          アイスロード

          10年ほど前にカナダにオーロラを見に行った時、そろそろ閉鎖される時期前のアイスロードに行きました。この映画を観て、その時の感覚が蘇りました。「アイスロード」、とてもドキドキハラハラの王道アクション映画で楽しかったので、ふと思い出して、三年前に書いたアイスロードをテーマにした小説を載せておきます。 ​「アイスロード」              栗山 心  ごみは道を探していた。  雲が垂れ込めた暗灰色の空。針葉樹の森。山々の連なり。人の気配は無いが、彼方を大型トラックが疾走

          アイスロード

          穴ホールコーポレーション

          穴ホールコーポレーション          小さな盆の窪がぽこりとへこんでいる。首筋は汗ばみ、黄色い帽子は背中に、顎の下でおさまるべきゴム紐は口の中で、ガムのように噛んでいる。伸びて波打ってしまう。また付けなおさなければならない。帽子用では事足りず、割安なパンツのゴムを使う。買い置きがまだあっただろうか。  はるちゃん帰るよ。うん、もう少し。  砂場でしゃがむ息子に声を掛ける。自然と触れあうという方針で、園庭は四季の草花に溢れ、入り口には桜が、砂場には金木犀が程よい陰を作る

          穴ホールコーポレーション