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台湾での日々あれこれ

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台湾での生活のこと
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#エッセイ

人生はチューブのように

人生はチューブのように

「ちょうどさっき、別の部屋で出産が終わって。先生もうすぐ来れると思うんだけど。」
私の出産の準備は完了し、あとは医師を待つのみとなった。麻酔のお陰で痛くはないけれど、中からの圧力がすごいので、とにかく早く産みたかった。

程なくして部屋をノックする音が聞こえ、検診の時からお世話になっているリン先生が颯爽と入ってきた。直前まで別のお産を担当していたとは思えないほど爽やかだった。
「始めましょう。」

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言葉の持つイメージの違い

言葉の持つイメージの違い

破水した後にもう一つ、印象に残っているジェンさんとのやりとりがあったのを思い出した。 通訳のジェンさんは非常に日本語に堪能なのだが、この日、思わぬシチュエーションで違和感に遭遇した。

「2回目の出産だから覚えているかもしれないけれど、いきみ方を説明しておきますね。」
「はい。」
破水時の痛みが襲ってきたときはかなり慌てたが、助産師Aさんに麻酔を入れてもらってからは気持ちもだいぶ落ち着いて、ジェン

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私は不憫じゃありません

私は不憫じゃありません

麻酔のお陰で陣痛から解放されてからは快適に過ごしていた。
2回目の出産だから早く終わるだろうと期待していたのに、お腹の中の子はのんびりとしていて生まれる気配がなかなかなかった。そのため促進剤としてオキシトシンを点滴することになった。

この日は平日で、3歳の息子はいつも通り幼稚園に行っていた。夫は仕事を休んで朝から私と一緒にいてくれたのだが、息子のことを考えるとずっと立会いをしているわけにもいか

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お腹を痛めなくても母親です

お腹を痛めなくても母親です

「痛くないですか?」
通訳のジェンさんが私の部屋を尋ねてきた。ジェンさんはこの産院で日本語通訳を担当していて、私は妊婦健診の時から彼女にお世話になっていた。
台湾は日本人の在住者や観光者が多いからか、日本語で診察が受けられる病院がいくつかある。およそ半年ほど前、妊娠4ヶ月そこそこで渡台してきた時は「ニーハオ」と「シェシェ」くらいしか知らなかったので、日本語で受診できる産院があるというのは非常にあり

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