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The Wooly Flossy Panic
「たいへんだ、たいへんだ」
あわてふためいてやってきたのは一匹のとかげである。
まるい目を満月のようにみはり、かぱりとまた口をひらく。
「とってもたいへんだ」
シャボン玉のあぶくさえ出そうなその風情に、黒つぐみが一羽、小首かしげて寄ってきた。
「どしたの。ミスターグリーン」
「どしたもこしたもない。メリーさんがとんでもないのだ。お空の雲をみーんなウールにしてしまおうと、世界中の羊から
イスパニア風の架空の都の話
ため息する銀、流されぬ涙湧く処ともうたわれる都だった。
――銀の、銀の、銀のつるぎを
バルベルデの都は、イスペラーニャの白熱の日のもと、午睡をむさぼる黒い女に似てよこたわる。滾々と湧く泉が鈍色の敷布をなし、垂れこめる雲と霧が薄闇のヴェールで彼女をおおう。
――ベルデのくろき滴にすすぎ
また湧水を縒った流れがいくつも、女の胸に重く冷えてこぼれる真珠めいて、きらやかに市街にちらばり、すぐにたば