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思い出の中の蒲郡の海

海に行きたいと

父親に言えば

決まって連れて

行ってくれたのは

蒲郡の海だった

生き物を

見るのも捕まえるのも

好きだった僕には

竹島水族館もあり

砂浜や岸壁を彷徨う

蟹やフナムシが

わんさかいる蒲郡は

ワクワクするものが

いっぱいある場所だった

父親にとってもまた

子供を遊びに連れて行くには

岡崎から近いしちょっとした

ドライブにもなりぴったりな

場所だったのかもしれない

波音と海鳥の声

潮の香りとワクワク感

僕が初めて行った海は

覚えている限りの記憶を

たどれば蒲郡の海だった

満潮から干潮になり

岩場のあちこちには

海水が溜まって

陽光を受けてきらきらと

していた

閉じ込められた

小さな世界には

逃げ遅れた小さな生き物達が

さらに小さな暗がりに

密かに潜んでいたりした

それを探し出して

捕まえるのに

小さな僕は夢中だった

上手く捕まえられない時は

父親に頼んで

手伝ってもらって捕まえたり

してバケツの中に

小さな蟹がいっぱい集まって

かさこそと動くのをみると

嬉しかった

イソギンチャクを指で

つつけばひらひら踊っていた

触手が引っ込んでいくの

みるのは面白かったし

一頃からとんと

見なくなってしまったが、

(それは僕の興味が海では

なくなり蒲郡の海に行く機会

が減ってしまったからなの

か)

ヒトデが20年くらい前には

蒲郡の海には竹島の

浜辺にはいっぱいいて

星型の先端を指で摘んでは

捕まえたりしていた

奇妙な形の生き物は

裏側に小さな触手が

いっぱいあって

ウニョウニョとやたらに

動いてるのを見たりするのが

楽しかった

生き物に対する好奇心は

蒲郡の海が養ってくれていた

小さな頃の

僕は目を輝かせて

あちこちの岩場を

ワクワクしながら

覗きこんでいた

あれから僕も

だいぶ歳を重ねて

今や自分で車を走らせて

蒲郡に行くようになった

父親に連れて行って

もらっていた

あの頃の蒲郡の海は

月日の移り変わりとともに

変わって行ってしまった

船着場は埋め立てられ

観光客用の駐車場になり

竹島水族館のある建物に

入っていた土産物屋さんや

カフェはシャッターを下ろし

タコの滑り台は跡形も

無くなり代わりに芝生が

敷き詰められて

子どもたちのはしゃぐ姿は

打ち寄せる波の向こうに

きえてしまった

思い出の中の蒲郡の海と

今目の前に広がる蒲郡の海

変わらないように見えて

しっかり変わってしまった

風景の中に

僕が小さな子どもの頃に見た

景色を心のどこかでまだ

探してしまっている

自分がいる

変わってしまった景色の中で

未だに変わらずに残っている何かを

あの頃の蒲郡の海がまだどこかに

残っているのだと信じている

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