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蒲郡の海の小さな命〜ヤドカリの未来〜

小指よりも

小さな貝がらを拾って

じっと見つめていると

しばらくして何やら

もぞもぞと動きだした

小指よりも小さな貝がらから

さらに小さな顔がこちらを

恐る恐る見上げている

可愛らしいハサミで

果たして何をどうすれば

蒲郡の海で

生き残っていけるのが

心配になってしまうほど

凶暴な天敵から身を隠すには

不安になるほどの

小さな貝がらに

食事をするにしては

その小さな身体じゃ

餌を取るのは覚束ない

ようにみえるのは

僕の考えすぎなのだろうか

いやいや

げんに今僕の手のひらの上で

まごついているくらいなのだから

ややもすれば明日の朝まで

生き残っていられるかも

怪しいくらいだ

あぁ果てしなく広い海に

産み落とされて

その小さな身体で

命の危機を常に感じながら

生きていかなければいけない

ヤドカリの日常は

計り知れない

安泰だなんて

果たして望めるのだろうか

問いかけてみたいのは

彼にとっての幸せのあり方

無理な話かもしれないが

危ないと思ったのならば

すぐに逃げるんだよ?

おせっかいな話

かもしれないが

好きな相手が

見つかったのならば

明日にはもしかしたら

死んでしまう命かもしれないのだから

一期一会に情熱を注いで後悔のない

ヤドカリ人生を過ごすんだよ?

小さなヤドカリに比べれば

甘えと怠慢サボり癖が

染みついた僕なんか

弱肉強食の海の中じゃ

すぐに死んでしまうだろうに

あぁ情けなし

ヤドカリは生き残る為に

一生懸命に

僕の手のひらの上を

歩き回っている

力強さを感じる

彼ならば

きっとこの先も困難に

ぶち当たろうとも

もがきながらも乗り越えて

いけるかもしれない

打ち寄せる波に

手のひらをつければ

ころっと転がるように

流れに身を任せるように

滑り落ちていった

砂地の小さな砂利と

同じサイズの貝がらだから

すぐには見分けは

つかなかったが

それでも不規則に動く貝がら

がそこにはあった

辿々しくもしっかりとした

足取りで命の炎を燃やして

荒ぶる大海に揉まれながらも

生きていく小さな生命が

そこには確かに存在していた

小指よりも小さな貝がらに

宿ったさらに小さな身体の

ヤドカリの未来に

幸があらんことを

祈っている

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