【BL二次小説(R18)】 共に堕ちて③
「や……辞めた……ってオメ……」
驚く荒北。
「……まさかまた、今度は猫でも轢いたのか?」
真剣な顔で質問する。
「ははっ。違うよ。嫌だなぁ。そんな深刻な話じゃないんだ」
新開は肩をすくめて言う。
「……モチベーションがさ、上がらなかったんだ。ずっと前からなんだ。……そう、箱学卒業してからずっとだ」
新開はバーテンにもう一杯カクテルを注文してから語り出した。
「燃え尽き症候群、ってやつさ。箱学のインターハイの時が、オレの頂点だった。大学でもそれなりの成績は出せたけど、惰性で走ってただけだ。……楽しくなかった」
「……」
荒北は黙って聞いている。
「寿一はそのままプロチームへ入ったよ。寿一の兄貴達がやってる、福富レーシングチームってとこだ。オレも誘われたけど……断った」
「……」
「一応、今でも実力は落ちていない。ただ……楽しくないんだ。速く走れても、何も嬉しくない。もう、箱学の頃のようなワクワク感が、全く無くなっちまった……」
カラン。
寂しそうな目をして、新開はグラスを回す。
「……オレも、同じだ」
「えっ……?」
荒北が口を開いた。
「……金城と待宮はさすが強豪校でエース張ってただけある実力者達だった。その二人のアシストやんのはすげェ充実してた。だが……」
「……」
「やっぱ箱学ン時ほどテンション上がらなかった。このままプロに進みてェ、って気にもならなかったし。しょせん、部活動止まりだった。待宮も卒業したら家業継ぐって言ってたし、オレももう……いいや、って」
「靖友……」
新開は、フッと笑ってグラスを持ち上げた。
「オレ達二人とも、晴れてチャリ引退、か」
「アア」
荒北もグラスを持ち上げた。
「箱学に」
「オレ達の青春時代に」
「「乾杯」」
カチン。
二人はグラスを合わせた。
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