記事一覧
〝封印が解かれた〟一瞬の旨さ
〝旨さを閉じ込めた〟は、食の世界でよく見られるフレーズです。そこには造り手の想いやこだわり、独自の調理技術や加工方法が存在します。
せいろで蒸された「点心」も、その一例。「点心」とは、中華料理における小籠包やシュウマイのことですが、せいろで蒸すと、直接水や油に触れずに加熱されるため、食材の旨味成分や水分が逃げにくく、風味豊かな仕上がりになります。
せいろのフタをあけるやいなや、ジューシーで甘酸
コルクのカビは、ワインの守護神
一般的に「カビ」と聞くと、多くの人が家の壁や食べ物に生じる不快なものとして想像しがちです。しかし見方を変えれば、カビは驚くべき益をもたらす存在にもなります。とくに食品業界では、カビを利用してチーズの風味を深める熟成プロセスが知られています。チーズだけでなく、実はワインの世界においても、カビは黒子の役割を果たしています。
ボトルのコルクに発生したカビは一見すると問題の兆候にみえるかもしれませんが、
シャンパーニュの「厚み」とは何か
シャンパーニュは、その独特な製法と洗練されたイメージで世界中にその名を知られています。シャンパーニュを特徴づける表現の一つに「厚み」という言葉がありますが、これはビールや日本酒、焼酎など他のお酒にはあまり使用されることのない表現です。では、シャンパーニュの「厚み」とは具体的になにを指しているのでしょうか。
シャンパーニュの「厚み」とは、その味わいの深さや複雑性、そして口当たりの重厚感を示します。
餃子とかけてシャンパーニュととく
餃子とかけてシャンパーニュととく。その心は、どちらも〝ガス〟が旨さの決め手となります。餃子においては、強火でジューシーな焼き上がりを得るためにはガス(火力)が必要です。一方、シャンパーニュにおいては、瓶内二次発酵でボトル内で生じたガス(炭酸)が、その豊かな泡立ちと繊細な味わいを生み出します。両者ともに、その調理や醸造過程での〝ガス〟がクオリティを左右するという点で共通しています。
今夜は、まるで
古樽から紡がれるフレーバー
ウイスキー愛好家たちがその独特の風味と製造過程に魅了される理由のひとつは、「古樽」の利用にあります。この繊細な酒の多様性と深みを引き出す重要な要素である古樽の選択は、独自のアロマと味わいを大きく左右します。
この業界の革新性と伝統を象徴するかのように、シェリー樽、ビール樽、ラム樽など、世界各地でもちいられた多彩な樽がウイスキー製造に再利用されています。なかでもシェリー樽を使用したウイスキーは特に
フライドポテトに合う最強酒
シンプルながらも多くの人々を虜にするフライドポテト。塩気とカリッとした食感で、さまざまなドリンクとのペアリングが楽しめます。しかし、数ある選択肢のなかで「フライドポテトに合う最強酒」をわたしが選ぶとすれば、それはおそらくシャンパーニュとなりそうです。その理由を3つの視点から述べたいと思います。
まず第一に、繊細な泡立ちとのコントラストです。
シャンパーニュの繊細で細かい泡立ちは、フライドポテトの
大阪で「くわ焼き」を召し上がれ
みなさま、「くわ焼き」をご存知でしょうか。くわ焼きとは、農作業用の〝鍬(くわ)〟を鉄板にし、その上で野菜や肉を焼くという料理のことです。いうまでもなく鍬とは、田畑を耕したりならしたりする、平たい鉄に柄(え)のついた農具。その昔、野良仕事の合間に、捕った野鳥を鍬の上で焼いて食べたことがその名前の由来だそうです。思わず、「なんで鍬の背で焼くねん!」とツッコミを入れたくなるところですが、いかにも大阪人ら
もっとみるプイィ・フュメの守備範囲の広さ
フランスを代表する白ワインのぶどうの品種といえば、シャルドネとソーヴィニヨン・ブラン。香りも味も、両者はさまざまな点で相違があります。
たとえば、香りが控えめなシャルドネよりも、ソーヴィニヨン・ブランはハーブ系のみずみずしい香りが特徴です。味わいにおいても、栽培地域ごとでの差が大きいシャルドネに比べると、酸味が強く、柑橘系の風味がソーヴィニヨン・ブランの代名詞といえるでしょう。
なかでも、ソー
日本の白身魚の楽しみ方
訪日される外国人のみなさまへ。日本の白身魚の魅力とその召し上がり方をご紹介します。ひらめ、たい、クエ、ふぐ、のどぐろ、金目鯛など、日本ではさまざまな種類のおいしい白身魚が楽しめます。これらの魚は独特の食感と淡泊な味わいが特徴で、日本の料理文化では大切にされています。
特筆すべき点は、これらの白身魚は非常に多様な食べ方で楽しめる点です。刺身や鮨としての〝生〟から、焼く、煮る、蒸すなど、食べ方の選択
トレーサビリティに本気で向き合うメゾン
トレーサビリティとは、商品の生産から消費までの過程を追跡することを意味します。近年では安心・安全意識の高まりから、自動車や電子部品だけでなく、医療や食品まで幅広い分野に広がっています。
トレーサビリティの推進に最も近いシャンパーニュ・メゾンといえば、「テルモン」。ギフトボックスの廃止、再生ガラスのボトル使用、再生エネルギーおよびバイオマス燃料の100%実現、オーガニック栽培への取り組みなど、ES
「苑」と「円」を通じて育まれる「縁」
日本の焼肉店で多く目にする「苑(えん)」という屋号は、深い意味を持っています。この漢字は、広々とした庭園や公園のように、人々が集まり、楽しく素敵な時間を共有する場所であることを示唆しています。「苑」を冠する場所は、人と人との「縁(えん)」を結び、深める場所ともいえるでしょう。
こうした「縁」の形成において、アルコールは昔から効果的な役割を果たしてきました。とくにワインは、その豊かな香りと味わいで
アペリティフのすすめ
フランスでは夕暮れとともに、アペリティフを楽しむ時間が訪れます。アペリティフとは直訳すると「食前酒」ですが、広義では食前酒を楽しむひとときそのものを意味します。
この風習は、18世紀末の貴族社会からはじまり、やがて階級を超えて国民全体に広がりました。いまやフランス人にとってアペリティフは単なる食前酒ではなく、会話を促す重要な〝儀式〟であり、友情を深める親交の場としての役割を担っています。
今夜は