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世界の見方が変わる!──柄谷行人『世界史の構造』読書感想 #1

「或る読みびとの無用の記」、読みびとのまさきです。

今回から、いよいよ一冊本を取り上げていきます。最初に取り上げる本は、柄谷行人の『世界史の構造』という本です。なぜこの本をご紹介したいかというと、最近読んだ本の中で、「なるほど、世界ってこうだったんだ!」と深くなうなずいてしまうような、それぐらい深い学びの多い一冊だったのです。世界の見方や、歴史の見方も読む前と後ではだいぶ大きく変わったのではないかという実感があります。

柄谷行人『世界史の構造』岩波現代文庫

とても1回だけで語り尽くせないので、何回かに分けて、記事にしていきます。なお、この本の全てを説明するには自分の能力や知識に余るところもありますので、その点もご了承ください。あくまで読みびとなので、読んだ感想としてご覧いただけると幸いです!


■柄谷行人について

まず柄谷行人という人物について触れておきます。おそらくトップランナーとして、日本の思想界を引っ張ってきた方のお一人でしょう。この方を何で知ったかというと、いくつかの哲学の入門書などを読むと、たびたび柄谷行人の書籍が引用されておりました。いつかこの方の本に挑戦してみたいなと思っていたのです。

年齢は今年83歳になられるということですが、最近注目されたのは、2022年に哲学のノーベル賞と言われる「バーグルエン賞」を日本人で初めて受賞されたことでした。受賞理由は、「現代哲学、哲学史、政治思想に対する極めて独創的な貢献をされた。さらに、混迷するグローバル資本主義と民主主義国家の危機、めったに自己批判が伴うことのないナショナリズムの復活という今の時代において、その作品は特に重要である」ということでした。政治的、思想的な知見がないとなかなか理解が難しい受賞理由ではありますが、やはりこの賞を日本人が受賞されたという、この誇り高い人物に対して、私たち日本人は彼が何を成し遂げたのか、なぜ彼が世界で評価されているのかということを知っておくことは大事ではないかと感じています。

■柄谷独自の概念「交換様式」について

では、この『世界史の構造』という本だけではなくて、多くの本を通して、彼が独創的だと言われているのはどういうことなのかに迫っていきます。特に独創的だと言われているのが、「生産様式」ではなく「交換様式」という概念で歴史の展開を捉えたことにあります。

「生産様式」というと、いわゆる「ものづくり」ですね。例えば、農業において、農村で誰がどういう風に生産して、それをどう分配して、民衆が生活を営んでいったか、という話です。それが近代に産業革命などが起きて、大量生産になり、今の資本主義が定着した時代に至るというよくある流れです。その「生産様式」を研究してたのがマルクスで、マルクスが歴史の見方として、「生産様式」を軸に据えていました。柄谷行人がそれに対して、「いやいや、生産では説明しきれない、交換で捉えないと、世界の歴史というのは語れないのではないか」ということを彼は提唱したのです。「交換様式」というと、難しく聞こえますが、実はこれによってとてもわかりやすく各時代を見ることができるようになったのです。

特に原始社会、つまり狩猟採集とか、遊動生活の時代においては、「交換」でなくては説明できないことがたくさん出てくるのです。歴史をきちんと捉えていくにはその原始時代もしっかりと入れ込まないといけない。しかし、この時代は、生産をしていないので、「生産」では説明ができない。「交換」という行動からでないと当時の生活を説明ができないのです。

この概念の提唱はすごい貢献だと思います。我々の未来にとっても、素晴らしい発見なのではないかと考えられます。我々はずっと生産し続けなければならないという妄想の中で生きてますが、それを「交換という概念だけでも世の中を作っていけるんだ、そういう未来を描いていくことができるんだ、生産をもうこれ以上しなくてもいいんじゃないか」といった、そういう希望を私たちに託してくれているような概念だと感じました。

「交換様式」の詳しいところは、また次回記事にしていきますので、今回は助走としてお話しさせていただきました。

それではまた次回お楽しみください。

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