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奏心声音

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奏心声音④

奏心声音④

少女の友達は ヨークシャテリアのサク
2人はアイコンタクトで会話をする

僕にはそれが全く理解できない

今朝も サクは少女の膝でウトウト……

ふと少女が サクの顔をのぞき込む
2人の目が合う
2人で目を細めて
頷き合う

少女は立ち上がり
トリミング用のくし を探し出す

「せっかく寝ていたのに ……」
僕は少女にそう伝える

「綺麗にして欲しいって言ってるの」
少女はそう 私に訴える

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奏心声音⑬

奏心声音⑬

ほんのり陽気な朝
目覚めた時の心地よい風
控えめな日差しが窓から差し込む

こんな日は必ずいつも思い出す

少女と出会った朝も確かこんな朝
控えめな日差しと同じように
少女が控えめに僕に挨拶をする
「こんにちは」
声を聞いた初めての日だった

はにかんだ笑顔が可愛くて思わず抱きしめたのを覚えている。
それから少女とたくさんの話をした
好きな動物 好きなお菓子 卵焼きの味

見えていた訳じゃないが

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奏心声音⑫

奏心声音⑫

母の日
色とりどりのカーネーションでどこも賑やかだ
さんな花々には目も触れず
少女は黙々と歩く

一体何を考えているのか

少女にとっての母親とは
一度そういえば聞いたことがある

少女は全くその会話に興味を示さず
話が続かなかったことを思い出した

今日の母の日についても問い掛けない方がよさそうだ
僕はそう思いながら
少女の後ろを歩く

ふと立ち止まって振り向いた少女
『これがいいな』

少女の

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奏心声音⑪

奏心声音⑪

静かな夜も カエルたちの声で賑やかになり
帰路に着くための道も
心なしか 陽気な気分になる

長い休みが終わり
溜まった仕事におわれ
疲れきった身体を引きずりながら歩く道の先に
小さな影

カエルの声に打ち消され
音もなく近づくその影

はっきりと見えた時その影の中に
笑顔が映る
僕の帰りを 待ってくれる少女
心が軽くなる瞬間を味わえるこの時間が
僕は大好きだ

この季節のカエルの声が
少女に届

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奏心声音⑩

奏心声音⑩

いよいよ五月
そろそろ衣替えでもしておかなければと
重い腰を上げる僕

四月の終わりに祖父を亡くし
気がつけばGWも後半
この連休で少女とのお出かけを数日予定していたが
それどころではなくなってしまった

そう思いながらまず衣替えをと思い少女に声をかける
去年の服がほとんど切れないくらいに少女は成長している
子供ってすごい生き物だな・・・
1年という時の速さに驚き
成長の速さに感動

ひとしきりや

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奏心声音⑨

奏心声音⑨

新緑色を求めて画材屋で
少女が選んだ色

萌え出ずるわかばの色
確かにいい色だ

少女もこれから色々な体験をし
たくさんの景色を見て
まだこの 薄萌黄色のように
たくさんの可能性を秘めている
そう思うと 自然と笑みが浮かんだ

4月も今日で終わってしまう
出会いもあれば 別れもある
僕は 運命とか巡り合わせを信じている
そう
少女とも 運命的な出会いだった

離れてしまうと寂しく思う人とも
これで

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奏心声音⑧

奏心声音⑧

鶯の子供だちが
しっかりと美しく春を奏でる今日この頃

僕は夕方に少女と散歩することが日課になっている
心地よい風と
目に映る風景で季節を感じる少女の瞳は
毎日同じコースを歩いていても輝いている

何を思いついたのか
少女が僕の顔をのぞきこんでこう伝えてきた
「色鉛筆が欲しい」

綺麗な緑の葉っぱを指さしながら
色を塗る仕草

キラキラとした笑顔で
足をばたつかせ
「早く!早く!」

「もちろん!

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奏心声音⑦

奏心声音⑦

今更ながら少し紹介をしておこう
僕……ぼく
少女……娘

少女に出会ったのはかれこれ4年ほど前
色んな事情で我が家にやってきた
そして何故か今 僕と少女と二人きりの生活

少女は2年ほど前から言葉を話せなくなった
大人の事情で
不本意な事情聴取と
不本意な支配により
ある日を境に 言葉を話すことを辞めてしまった

いわゆる
【雉も鳴かずば撃たれまい】なのだ

大切な友人が二度と共に走り回れない身体

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奏心声音⑥

奏心声音⑥

最近お絵描きにハマっている少女のために
色鉛筆を買ってみた

僕が知っているのは24色くらいだが
画材屋に行くと驚くほどの数の色が並んでいた

200色 色鉛筆……
一体どんな色があるのか少女と覗き込む

ひときわ少女は青色に興味があるらしく
目を輝かせて 手話で伝えてくる
晴れた空は 綺麗な青色
雨の日の空はくすんだ青色
季節によっても空の色は微妙に違うと
そして海の色もまた
季節によって色

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奏心声音⑤

奏心声音⑤

心地よい音が隣から聞こえる
少女のいつもの寝息

僕はその寝息を聴きながら
たまっていた編集画像をまとめていく
子守唄のように
気持ちよく 心地よく
素敵なリズムを刻む

時々ふと目を覚まして
僕の方を見ながら
こう言うんだ

「雷の音? 雨の音?」

今夜はとても腫れていて静かな夜
でも僕は少女に言う

「酷く嵐の夜だね……」

音のない世界っいったいどんな世界なんだろう
僕には想像もつかな

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奏心声音③

奏心声音③

(。_。`)コク
コクリ……コクリ

眠そうな少女を僕は後ろからそっと眺める
なにかに熱中しながら
いつも決まってこの時間コクリコクリ……

眠さに耐えながら
なにかに熱中している少女を
(カワイイな……)と思いながら眺めている
この時間が僕は好きだ

そして今日もその時間がやってきた

ほらね
またコクリコくりしている
今日こそは
少女のその表情を 見たい!
そんな衝動にかられて 僕はそっと

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奏心声音②

奏心声音②

子鳥のさえずりで目が覚める休日
こんなに穏やかな朝は何ヶ月ぶりだろう

耳を澄ませば
歌うような子鳥の鳴き声
窓かから朝の光が差し込み
心地よい朝の訪れを教えてくれる

ふと横に目を向けると
いつもと変わらぬ少女の寝顔と
心地よいリズムを刻む寝息
なんて幸せなんだろう

いつものように少女の好きな目玉焼きと
シュガートーストを用意しながら
1人幸せを噛み締める

半熟の黄身を純白でふんわりとした白

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奏心声音①

奏心声音①

心が乱れるほどの騒音に

耳を塞いで怯える少女
「ねー 足音が近づいてくる……」

そう言って震えていた
「誰かの叫び声が聞こえる……」

そう言って少女は
暗闇の中で私に助けを求める
落ち着かせてあげなくては
わたしは少女の癒しの場になりたかった
そっと 抱きしめて言う
「大丈夫……誰もいないから」

しかし少女の震えは止まらない

両の手で少女の頬を包み込み
笑顔で包み込むと
安心したように

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