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小生書いてみたよ小説

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何か“降りてきた”ら、書きます、小説。
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外猫、荒野を目指す

外猫、荒野を目指す

その猫は野良の子だった
時々見かけるので気になっていた
母猫のお腹に潜り込むシャイな子だった

その母猫がいなくなって1週間
私とツレは、
帰り道で野良の子に出会う度、
コンビニで買った子猫フードと水を
紙皿に入れてあげていた

どうにも母猫は帰って来そうになかった
家族に何度も飼いたいと相談したが
猫アレルギーの両親は無理だと言った
ツレの家はいいと言った様だが
乗り気ではなさそうで
「うちでは

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植物は地球を侵略しにきたとしたら

植物は地球を侵略しにきたとしたら

雨が降ってゐる

この言葉を見て「あ…」と言った方、
文学好きですかな

それは良いとして

私は湿気が嫌いです
体に不調にきたすこの代物、
今は除湿という機能があるから
何とか…何とかスッキリもできますが、
除湿で冷えるにはまだ早い4月の田舎、
我慢しかないのが虚しいです

今日はずっと雨なので、
ゴミを外にある
ダストボックスに入れるだけでも大変で
ため息ついて2回行ってきました

この湿気、

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亡くした父の年齢+3年

亡くした父の年齢+3年

私の父は癌で死んだ
胃癌、肺癌、
それ以外にも転移が激しく
定年を待たずして病院で亡くなった
3日後が誕生日だった

私は子供の頃から
父と似ていると言われていた
周りのいろんな人から言われた
性格、体格、
その他諸々よく似ていると

私は抵抗していたが
否定出来ない所もあった
胃が悪い所だ
なので、こう思っていた

同じ様に死ぬな
但し、
女は男より狡い分長生きする
そう…父の亡くなった歳+3年

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夢を語れない、一握り以外の俺は

夢を語れない、一握り以外の俺は

この春、もう高校生になる

受験が終わったのは良いけど
志望校に合格できたのは良いけど
ウキウキした気分になれない

SNSを指でなぞれば
ニュースだってすぐわかる

母さんがため息ついてたのが
増税増税増税…の話だろうし
父さんが意気揚々と会社に行ってたのも
昇進があってから2年くらい
何だか疲れていて
いつも何かを考えてる顔だ

子供だってわかる

世の中
道が出来ていて
行く先が見えている

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ホラー短編

ホラー短編

「行ってきまーす!」

まさか家に車が突っ込んでくるなんて
思わなかったわよ

私のみぞおちからバケツ程の血が落ちた

得にならなくても

得にならなくても

損得勘定して生きてますか
悪くないですよ
ある程度の生活水準を保ちたいなら
お買い物だってそう、
仕事だってそう、
これは得になるだろうか?
これは損するんじゃないか?
天秤にかけたりしながら
常に考える事が大事です

でも得にならなくてもいい生き方もありますよね
自分の得にはならなくても
誰かの得になっているかも知れない
自分が辛くて堪らない事もないなら
それでも良いよね
その方が良いよねと思え

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外猫、荒野を目指す

外猫、荒野を目指す

その猫は野良の子だった
時々見かけるので私は少し気にしていた
母猫のお腹に潜り込むシャイな子だった

その母猫がいなくなって1週間
私とツレは、
帰り道で野良の子に出会う度
コンビニで買った子猫フードと水を
紙皿に入れてあげていた

どうにも母猫は帰って来そうになかった
家族に何度も飼いたいと相談したが
猫アレルギーの両親は無理だと言った
ツレの家はいいと言った様だが
乗り気ではなさそうで
「うち

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黒と赤

黒と赤

寒いですね

寒いとあの日の事を
うっすら思い出します
だんだん薄れてはいるものの
忘れならない日の出来事です

…聞きます?

その日の天気予報は
晴れで暖かいと言ってました
だから少し薄着して仕事に行きました

終業時刻になり
落ち着いていた私は
勤務台帳に時間を記入してから
お疲れ様でしたと部屋を出ました

あれ?冷えてる?
そう思ってドアを開けたら
まぁ、寒いこと!
その日の服装を心から後

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思い出

思い出

どうしても
口の中の乾きが癒えず
胃薬ばかり飲んでいた
何故胃薬かというと
胃が弱いから
でも飲んでも駄目だった

どうしたんだろう私
歯も弱ったのか
微妙な揺れを感じ
加えて重圧的痛みもあった

よく眠っているのに
頭は硬まる一方で
起きようとしても
体が沈んでいる様だった

何となく
鼻も詰まる
目は瞬きを忘れた様に
閉じたままだった

そうだった

私、息してない

私、死んだんだよね
何だ

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おうまがどき

おうまがどき

その日は学校で用事を頼まれて
普段より帰りが遅くなった
春が来たといっても
夕方から夜に近付くと
寒いし暗くなるし
目がぼんやりする

おうまがどき…?
洋ちゃんが言ってたけど
洋ちゃんは私の母の妹、叔母ちゃんで、
こわい話をよく教えてくれる人

「逢魔が刻にはね…
この世とあの世の門が開いて
悪い心のまま死んだ人が
ウヨウヨ出てくるのよ…
学校から気をつけて帰りなさい」

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恐怖が足りない

恐怖が足りない

私は怖いものが好きだ
今に始まった事でなく
4つか5つの頃には
楳図かずお先生の本に出会い
その後、様々な怪談本を貪り読んだ

自分でも複雑な思いがある

恐怖を研究する事等思いつかなかった
だから
単にファンなのかマニアなのか
そんなものになっていた

それって危険なのかなと

何かの命をとった事はない
自分が痛いと思う事は人も同じだと
認識があるから
傷つける事は想像のみだ

ただ、足りなくて

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眠りの罪

眠りの罪

闇を司る神は云った

「お前は何もしていない
眠る必要は無かろう」と

俺はこの瞼を上向きに縫い付けられ
眼を剥き出しに生きねばならなかった
生き地獄と餓鬼達は云う
「お前にはお似合いだな」
「無間地獄よりはマシだぞ」と笑う

乾きが激しい眼に蜘蛛の巣の血管が駆け巡る

俺は眠りたいだけなんだ
神よ、眠るのは罪なのか

「違う
惰眠を貪るだけで
この世に何も成さないことこそが

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屍人の意識

屍人の意識

夏になると
自分の死臭を感じていたあの頃
それから長い間それは消えていたのに
また始まったようだ

今度こそ
今度こそお迎えがくる
今度こそ
本物を感じることすらできなくなる
頭の中にテロップがぐるぐる巡り出した

緊張で心が砕けたからだろう
人の心が見えて
しかも悪い思いが見えたので
パニックになり
頭の中が真っ白になり
でも追い打ちをかける様に
嫌だと思わているという相手の意識が
ズンズンズン

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クリスマスが過ぎて、彼女は

クリスマスが過ぎて、彼女は

劇的に1日ずれた今年のクリスマスをどうやって過ごそうと頭を抱えた
おい、25日は仕事だぜ、一日中一緒にはいられないさ
彼女に詫びる理由は間違っていなかったが、よりによって今年がかと

1ヶ月も前から悩みまくり、25日を捨てることになった
来年結婚を決めたから、キメたクリスマスは今年が最後だろう
子供好きな彼女はきっと、甘い生活よりも暖かい暮らしをすぐに求めるだろうからさ
俺が甘ちゃんなんだなぁ

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