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よい話

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#エッセイ

弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった

弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった

高校から帰ったら、母が大騒ぎしていた。
なんだなんだ、一体どうした。

「良太が万引きしたかも」

良太とは、私の3歳下の弟だ。

生まれつき、ダウン症という病気で、知的障害がある。
大人になった今も、良太の知能レベルは2歳児と同じだ。

ヒトの細胞の染色体が一本多いと、ダウン症になるらしい。
一本得してるはずなのに、不思議ね。

「良太が万引き?あるわけないやろ」

ヒヤリハットを、そういう帽子

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あなたとまた手を繋ぐ

あなたとまた手を繋ぐ

久しぶりの外食。子どもたちが成人してからというもの、夫婦二人だけでの食事が多くなってきた。

「いつものでええか」

『イカの鉄板焼き』これが夫の“いつもの”。スペインバルでは比較的どこにでもあって、調理が簡単だからこそ素材の良さやシェフの腕前がよく分かる一品。この料理にお店のオリジナル料理やら本日のお薦め品が追加されていく。

「久しぶりやね、二人で来るのん」

「やっと二人で来れるようになった

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いつも小瓶をポケットに入れて

いつも小瓶をポケットに入れて

 25年も前の話になる。人口8000人のバレンシアの片田舎で、私の外国人嫁としての苦難は予告なしにスタートした。

 標準の日本語しか知らない外国人が、いきなり東北弁や沖縄弁でしか存在しない世界に飛び込んだ時を想像してほしい。大学や語学スクールで勉強したのは文法中心の標準スペイン語のみ。公的機関での標準語としてのスペイン語はもちろん存在しても、村での共通語はあくまでもバレンシアの地方言語。

 パ

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オットの真骨頂を見た

オットの真骨頂を見た

里帰りはせず、東京で産むことにした。
退院後、自宅に戻った後は母に約1ヶ月ほど、泊まり込んで手助けをしてもらった。近所に住む妹もよく手伝ってくれた。

母が帰ってから、新米とうちゃんとかあちゃん、息子の3人暮らしが始まった。

オットの仕事中は赤ちゃんとふたりきり
髪を振り乱し、乳を投げ出し
私の人生史上最大の大変な暮らしが幕を開けた。

ところがどっこいだ。
2ヶ月半が過ぎようとする今、

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