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短歌のこと
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何をも燃やさないつよき火を

何をも燃やさないつよき火を

ああ、歌集のことをきちんと書こう、と思って筆を執った。

雪は朝(あした)のかがやきを降る
藪内亮輔の歌集『海蛇と珊瑚』を読み通した。
彼の作品のことは随分前に知っていた、その端正な美意識に惹かれ、本作を手に取ったのを覚えている。

"詩歌の世界で使い古された「花」「雨」「雪」「水」が、この人の手にかかると、世界で初めて使われたかのような歌が生まれる。(帯文:金原瑞人)"

このような言葉でもって

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歌は剥かれるのを待つ果実

歌は剥かれるのを待つ果実

こんばんは。昨日は、大学短歌バトル2018を観戦してました。温泉の休憩室より湯冷めしながらの観戦でしたが、それを上回る熱い闘志に触れ、トータルではとても熱くなりました。早稲田短歌会の皆さん、優勝おめでとうございます。

勝負の形式としては「歌合」と呼ばれ、各チームには提出歌の作者「方人(かたうど)」と味方の歌をアピールし敵方の歌を批評する「念人(おもいびと)」がいて、それぞれの提出歌の優劣を審判「

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あなたの外す眼鏡が冷える

あなたの外す眼鏡が冷える

こんにちは。先日すごいレンズを購入したことで迂闊に楽しくなってしまい、街を撮り歩いていたら何かと日が空いてしまいました。皆様はいかがお過ごしでしょうか。趣味にお金、かけていますか。

写真付近の界隈には、魔的な魅力を持つレンズを銘玉(名玉)と称し讃える文化がありまして、なんだか古代の呪術国家みたいだと思います。どんな芸術でも良い道具が必ずしも良い結果をもたらすとは限りませんが、呪術的な力でもって心

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お前の最後はひとりだ

お前の最後はひとりだ

こんにちは。各方面で絶賛されている中、昨日やっと『勝手にふるえてろ』を観てきました。

終始、松岡茉優と付き合いてえ!!という真なる気持ちと、切り取られる構図のいちいち美しいことに夢中になり、中盤以降のシナリオがほとんど頭からすっぽ抜けてしまいました。なんたる失態。

エンドロールに入った瞬間にいろんな意味で「うわもう一度観なきゃ」と焦った作品は初めてです。最初から最後までどきどきしてました……。

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君と地球の朝を歩めり

君と地球の朝を歩めり

こんにちは。いよいよもう寒いですね。私は大阪から東北にきたなんちゃって北の人なので、路面が凍るとすぐに正体がバレます。歩けない。

そういえば、仙台にはおしゃれな帽子屋さんがたくさん(たぶん大阪よりはたくさん)あるんですけど、それって吹雪か冷気とかそういう物理的な脅威から身を守るためでもあるんだろうなって思います。

雪道を歩くとすぐに汗だくになるし、なぜだか明け方に寝汗をすごいかくので、ここでの

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そうだとは知らずに乗った地下鉄が外へ出て行く瞬間が好き

そうだとは知らずに乗った地下鉄が外へ出て行く瞬間が好き

こんにちは。年末からしばらくお仕事に追われていたのですが、やっと今週で一つの山を越えることができました。余裕がなくなると私生活の手を抜いて帳尻を合わせるタイプの人間なので、これから少しずつ日常を取り戻していこうと思います。

さて、このnote・マガジンではできるだけ等身大な言葉で、私の思う短歌のことや短歌じゃないことを述べます。
いつもね、ほんと、短歌に限らずいろんなことを考え始めるとついつい気

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君の不思議な詩を思い出す

君の不思議な詩を思い出す

こんばんは。前回は挨拶・個人的な前語りに終始していたので、今回よりさっそく短歌について読者に向けた話をします。

はじめに。このnote・マガジンの目的は、できるだけ等身大な言葉で、私の思う短歌のよさを読みほどくことです。短歌がどんなものか知らない、知っているけどわからない人(これはどんな歌人でも突き詰めたらそうだと思いますが…)に向けて、私なりのわかり方・よさの感じ方を伝えたいと思っています。

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ここから先は夜の歩道橋

ここから先は夜の歩道橋

短歌のことをもっと考えたいと思い、マガジンとして定期的に発信をすることにしました。

表現というものにはすべからく質量があって、その重みに耐えうる心を作るには、日々持ち上げることを続けるほかない、と思います。止まることなく歩み続けた先に初めて、自在に手足を動かせるようになるはずだ、と。

twitterでの投稿はいわばミニマムな個室で、例えば短歌と少しの評を添えるだけで簡単にそれらしい空間を得られ

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