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#23 おばあちゃんだけど、時々転生代行救世主やってます

「アイドルになる」という発言をするミクべ神の発言に驚きつつも敢えて止めず(というか流しまして)、まずはこの世界に平和が訪れた事に一同喜んだ。
「いやぁ、あのまま閉じ込められてたら本当にまずかったよな」
 頭をポリポリと掻きつつも、反省してるのかどうか分からない軽い口調のミクべ神に、クロサキさんは大きく溜息をつく。でも、特に反論をする様子も無い。もしかしたら、また引き籠もられたら困るって思ってるのかも?
 まぁ、それはともかく…
「さて、じゃあ私達の役目も終えた事だし、そろそろお暇しようかしら」
「え、もう帰るのか?」
 もっとゆっくりしていけばいいのに、と口を尖らせるミクべ神が微笑ましい。でも、私達はこの世界を救いに来たのだ。決して孫の顔を見に遊びに来た訳ではない。
「ごめんなさいね。でも地上界のミクべ神様にも報告しなくちゃいけないし、それに私達には帰るべく世界があるから」
「そうか…まぁ、そうだな。ともあれ、本当に来てくれてありがとう。ついでに上の私にも礼を言っといてくれ」
 ミクべ神は再度感謝の言葉を述べ、そして背後に控えていたクロサキさんが1歩前に出る。
「お嬢さん、私からも礼を言わせてくれ。この世界を救ってくれてありがとう。それと、知らなかったとはいえ数々の無礼を心から謝罪する。本当にすまなかった」
「いえ、そんなに気になさらないで………あ、そうだ」
  私は、ふと大切な事を思い出した。

「シロちゃん、お待たせ」
   この建物に入る時、陽動を買って出てくれたシロちゃんの事は、心配ながらも自分の使命を果たすためにそちらに集中していたから、申し訳ないけどちょっぴり忘れていたのだ。
 そして今、先程クロサキさんからシロちゃんの事を尋ね、迎えに来たという訳。
 ただ本人(本猫)は、のんびり守衛室でミルクを頂いていたようだ。
「にゃっ?!」
 私の声に反応して振り向いたシロちゃんの顔は、ミルクでベチャベチャだ。
「あ、君がこの子の飼い主さんかい?」
 クロサキさんから連絡が行っていたらしく、警備の方が私の顔を見て尋ねてきた。
「はい、そうです。色々とご迷惑をお掛けしました」
 ペコリと頭を下げると、警備の人は「いやいや」と手を横に振って応え、シロちゃんの顔についたミルクをティッシュで拭き、「ハイ」と私に手渡してきた。
「まぁ、随分とヤンチャな子ではあったがね。君も苦労してるんじゃないか?」
「はぁ…」
「そっちの足下で座ってる子は、あまり手が掛からなさそうだね」
 そう言われてるのは勿論クロ君の事で、クロ君自身はどう思ったか分からないけど(そもそも言葉が分からないはずだし)、とりあえず大人しく座っている。
「あはは…でもまぁ、どちらもいい子ですよ」
「そうかい?ま、どちらも大事にしてやれよ」
「はい、ありがとうございました」
 私は再度頭を下げ、2匹を連れ守衛室を後にした。

 その後、地上界に戻るためのあの長い階段のある雑居ビルに向かったのだけど、その前に一度サキシマさんの事務所に寄ることにした。
 一応(ミクべ神を除けば)この世界で2番目の権力を持っていた方だし、ニュースで知るよりも速く知るべきだろうと思ったから。
 で、まぁ…思ってた通り(いえ、それ以上かも)、サキシマさんはミクべ神の復活にそれはそれは喜んでいたのだけど…
「今から神復活の祝賀会を開きましょう!三日三晩!もちろん参加しますよね?ね?」
なんて、キラキラした目で提案してきたものだから、正直かなり困ってしまった。
 ただ、以前のあの熱烈なミクべ神騙りに辟易していたシロちゃんとクロ君の猛烈な反対(シャーシャー声)により、祝賀会参加を辞退する事ができ、私達は無事レジスタンス事務所を出る事ができた。
 背後から「サキシマさん、落ち着いて下さい!」という、ユキノさんの絶叫… 失礼。窘める声が聞こえたような気もするけど、私達は聞こえなかった事にして、本来の目的地である雑居ビルへと向かう事にしたのだった。

#24へつづく


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