リーフの記 2枚目
授業が終わり、家へ帰ると、リビングから音が聞こえた。
トウルルル、トウルルル。
私が持っている、スマホの着信音だった。
「はい、どちら様でしょう?」
「やあ、俺だよ、俺」
スピーカーから、明るい声が聞こえてきた。声の主は、パワーズ。
SNSで知り合った、スイスに住んでいる24歳の青年だ。
「どうだい、日本は。馴染めそうかい?」
「・・・アメリカが原爆を落としたひどい国だ、って、すごく冷たい瞳で見られるの。わたし、この国でやっていけるかしら」
「そりゃ学校の教科書は、自国の都合が良いことばかり書いてるからなあ」
鳩が豆鉄砲を食らったような気持ちになった。
アメリカの教科書には【原爆は自国の多くの兵士たちを救った】と
書かれていた。それは都合良く書かれていたの?
目をパチクリする私に、パワーズは更に驚くことを口にした。
「自分の手で、教科書を作りなさい。
図書室に行けば、たくさん資料があるだろう」
「ええっ、自分の手で?それって、すごく大変よ」
「大変かもしれないが、中立的に物事を見ることができる。
大人が書いたことを、すべて信じ込んじゃいけない」
パワーズの言葉を聞いて、教科書を作ることを決めた。
今まで知らなかったことを知る。
紫と黄が混じった、大きな風が吹いているのを、肌で感じた。
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