ミカンセーキ/(hn-nh)

模型、ときどき写真 ブログ:https://hnnh3.exblog.jp/

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最近の記事

プラモデルは最初から完成していて最初から未完成だった

50年前に発売されたプラモデルを組み立てました。1972年に発売されたタミヤの1/35 S.A.S.ジープ。砂漠を横断してドイツ軍の飛行場を攻撃するためにジープをカスタマイズしたヘビーデューティな姿が魅力で、当時の模型少年なら誰もが組み立てた往年の名作キットです。そして今でも模型店の店先に普通に並んでいる。 50年前に開発された商品が今でも普通に流通している。他にそんなものがあるだろうか。往年の名作キットとして古き時代を懐かしむマニアのためではなく、最新のキットにも肩を並べ

    • 写らない写真

      久しぶりの京都だ。3年前にリモート会議が普通になって、あんなに行き来していた京都は画面の向こうの映像になった。そして今日、再び京都。しかし見える風景は3年前と同じではない。状況はすっかり変わってしまった。 少し気が重い。オープンに関わったカフェがこの3月で閉店すると知らせがあった。その後始末をどうするかと言うのが今日の議題。聞きたくない話も聞かされるとしたらリモートで十分だったが、店長に会って画面越しではない声が聞きたくなって品川駅から新幹線に乗った。 実は京都に来ようと

      • 戦争のプラモデル

        わずかでも力になれたらと思って、在日ウクライナ大使館に寄附をした。UNCHR(国連難民高等弁務官事務所)難民支援の募金もした。ウクライナの戦争が終わるとか元通りの日常に戻れるとか、今は何もわからないけど。 そしてウクライナ製のプラモデルも買った。それは戦争のプラモデル。 1/35スケールの兵士のフィギュアセットの箱を開けると、ウクライナが戦場になっている時にそんなもの作ってる場合かと言う心の声が聞こえます。だけど、いつも何の疑問もなく作っていた戦車や兵士のプラモデルを作る

        • 圧縮率の違い

          週末に小さなプラモデルを作った。1/72スケールの装甲車は手のひらに収まってしまうくらいの大きさで、パーツも少なかったからあっという間に形になってしまった。たった一日で組み上がる爽快感。そして物寂しさ。 完成の楽しみを引き伸ばしたいと感じたのかは分からないけど、少し細部に手を入れ始める。装甲板の溶接痕を再現しようとランナーの切れ端をライターの火で焙って細く延ばして作ったプラスチックの糸を車体に貼り付ける。接着剤を塗って柔らかくなってきたところに細かいシワを刻んでいくと、遠目

        プラモデルは最初から完成していて最初から未完成だった

          3月10日と11日

          76年前のこの日、東京で10万人の命が失われた。1945年の3月10日の未明、米軍の300機のB-29爆撃機が高度2000mの低空をついて侵入する。1665トンの焼夷弾を投下し、市街地は火の海になった。巨大な炎で秒速100mを超える火災旋風が荒れ狂い、B-29は水平に飛ぶのも困難であったという。 応戦した航空機は46機、高射砲部隊の地上からの砲撃など、それでも14機のB-29が撃墜されたというが、家屋の焼失は26万戸、範囲は41km2に及び、被災者は100万人を超える。東京

          見える迷彩

          ミリタリーの世界を端的に表しているのは「色彩」なのだろう。濃いグリーンに塗られた装甲車、カーキ色のジャケット。いわゆるミリタリーカラーです。普通の車もオリーブグリーンに塗装すれば途端に軍用車に見えてきます。ポルシェをカーキ色に塗っても流石にミリタリーっぽくは見えないかも知れないけど、その逆で例えばジープを黄色に塗ったら、そのままサーフィンにでも行けそうなルックスになる。デザインの意味は色で決まるものかも知れない。 それこそ「迷彩」なんてのはミリタリーの必須アイコンで、相手か

          隙間のコーンスターチ

          秘伝の味。というのがあるが、あれは実は簡単に真似できてしまうものらしい。レシピさえ知ってしまえば誰でも再現できる味。だから他人に知られないようにレシピを秘密にしてる、というのが秘伝の味に隠された真実。 模型製作に秘伝の味みたいな話があったりするのか、と考えていて思い出したのが、瞬間接着剤にベビーパウダーを混ぜて使うレシピ。これはまあ知ってる人は知ってる技だから、一子相伝の秘術にするほどのものではないのだけど、知ってると役に立つノウハウの一つには違いない。 誰が思いついたの

          隙間のコーンスターチ

          模型の季節

          写真を撮っていると、毎年花が咲くたびに「また、ひと回りした」と思う。春が始まり夏が来て、あっという間に秋が終わって冬が訪れる。変わらず毎年花が咲く。その繰り返し。 同じ花を撮ることに飽きてファインダーを覗いただけで辞めてしまうこともあるし、去年との違いを見つけようと同じアングルで撮ることもある。変わるものと変わらぬもの。季節は繰り返されることを知っているから、写真の中に時間が過ぎたことの痕跡を見つけられる。 花は毎年変わらずに咲くことに意味がある。 すこし季節外れの花の

          ピンクなビリジアン

          よく出来た人形と、出来がよくなくても冗談のひとつくらい言える人間の違いは何か? 答えは簡単。血が通ってるか通ってないか。人工知能と人間の違いも同じです。血管の中を血液が流れて身体のあちこちで化学反応を起こす。意識が生まれて、間違いを起こすこともあれば恋に落ちることもあるし、酷いこともする。 ポケットから手を出して、拳をぎゅっと握りしめてください。皮膚の向こうに血管が透けて見えるはずです。それは何色ですか? 肌の色は赤みがかった皮膚の色。血管は青みを帯びた緑。皮膚の厚いと

          ピンクなビリジアン

          形を整える

          ミニマリストのように部屋に何も置かない生活は出来なくても、自分の頭の中のノイズを少なくすることは出来ます。 散歩の途中に拾ったもの、金継ぎの道具に使うための鯛の牙、着なくなってしまった服のボタン、植物の種。机の中にはそんなものがゴロゴロ。いつか使う気がして捨てられないのではなく、心の平安のために必要で持っているものが多い。だけどそいつらを無造作に詰め込んでしまうと、その状態がそのまま頭の中の雑音になるだけだから、全て分類して同じサイズのチャック付きの透明なビニール袋に入れて

          悪い奴

          人を見た目で判断してはいけない。とは言うけど所詮は人間見た目が大事。いや、それは違う。ビジュアルだけの残念な人はいるし、外見だってセンスと財力とか人間のスペックに裏打ちされてのことだし、身のこなしの美しさも内側からにじみ出るものがあっての話だよね。とルックスをめぐる議論はとりとめもなく続くのですが、これをミリタリーの方面に広げると話は少しややこしくなります。 ミリタリーのプラモデルを作ると、その魅力って何だろうと思うことがあります。兵器や兵士の姿がカッコよく見えるからだと思

          冬瓜

          切り口はほんのりとした翡翠色。夏に実ったものが冬になってもまだ食べられる。それ自体にとりわけ何があるでもないのに他の具材と炊き合わせるとじんわり美味しい。そういうものに自分もなりたいと、時々思う。 床の間の冬瓜は石本藤雄氏の作陶。眺めていると心の刺が溶けていく。 2021年正月。あけましておめでとうございます。

          TOKYO 2020.12.27

          もうたぶん20年くらいこの道はいつも通っていたのに、ビルの隙間から東京タワーが見えることに初めて気がつきました。 自分の生まれる前からあったし、視界を遮る背の高い建物がそこに建っていたことはないから、東京タワーはおそらくずっと見えていたはずです。隅田川を渡るその橋から見る風景をいつも写真に撮ってたから確実に視界に入っていたのに、東京タワーが見える風景が当たり前過ぎて、自分の目に映ってなかっただけなのだと思います。 誰にもある経験だと思いますが、いつも通る道で何の前触れもな

          時間の外側

          年末になるとその年に買った模型の購入リストをつくるようにしています。何を買ったのか、いくら使ったのか。そのうち何個作ったのか。まだ完成してないものが、どのくらいあるのか。これまで買って完成してないキットの数を年間の平均制作ペースで割ると、人生の全てを模型制作に捧げても寿命が足りないことに気づいてしまって、どうしようもない思いに駆られます。 このどうしようもない事態に対して、考えられる合理的な解決策は、完成の見込みの立たないないキットは処分して優先順位の高いものから手をつける

          ヘッドルーペと水平線

          よく晴れた日には目を細めると水平線の彼方にハワイが見えた。 他に何のとりえもなかったけど、目だけはよかったことを自慢するのによくそんな冗談を言っていた。地球が丸いことを知っていれば、どんなに高性能な望遠鏡を覗いても水平線の向こうにハワイが見えたりしないことはすぐに分かる。つまらない冗談を言っても軽く受け流してくれるガールフレンドの笑顔を見るのは楽しかったし、ついに言えなかった想いを胸の内に隠しておくにも都合がよかった。 ヘッドルーペを買ったのは3年前だったか、趣味で模型制

          ヘッドルーペと水平線