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小説・物語・エッセイ

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小説や物語系を入れたマガジンです。黒あげまんじうアカウントで投稿した作品も入れていきます。
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プチ終末を考える

プチ終末を考える

ここ最近は新型肺炎のコロナウィルス情報でニュースは持ち切り。イベント中止や小中高学校が臨時休校する事になり「マジなんだな」って感じが強烈に感じられるようになりました。

欲しいと思っているマスクや消毒液がどの店からもなくなり、より一層不安をあおられますが、逆に今までが便利で欲しいものが簡単にすぐに手に入る恵まれた環境だったんだなと気付く事ができます。そしてそれに甘んじて忘れていた「無いなら作ればい

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みんなの社会科見学

みんなの社会科見学

小学校高学年の時の話。

私は社会科見学と言えば、ちびまる子ちゃんの「まるちゃん 社会科見学に行く」で見たお菓子工場のイメージがとても強かった。まるちゃんが出来立てのお菓子をおいしそうに食べているシーンにはすさまじく憧れた。自分たちも早く工場見学したいとワクワクした。

そんなある日、待ちに待った社会科見学の場所が決定した。

なんと未成年丸出しの小学生がビール工場。
クラスはどよめいた。しかし小

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不真面目に生きればよかった

不真面目に生きればよかった

 初めて登校拒否をしたのは幼稚園の時だった。なぜかいじめられっ子にロックオンされてその子に近づくたびに睨まれて威圧感のある無視をされていた。それで嫌になって幼稚園を休んだが、数日ですぐ親に幼稚園に連れていかされた。登園したら隣のクラスの先生にニヤニヤしながら「幼稚園いやだって言ったんだって?」と話しかけられた。
笑い事じゃねぇ!幼児の微笑ましいぐずりなんかじゃねぇ!と思ったが大人にはわからないかも

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そうであることは

これはいたって当たり前の話ではあるが、人間は空気を吸わない事には生きていけないのだ。

それと同時に生きているということは何かを得て生きるという事なのだ。

そうとは知らずに生きている人間がたくさんいる事を知ってか知らぬか彼女はまた何も知らないご様子で味噌汁をすすって文句を言ってきた。

「味が濃い」

いつもながら我儘ではあるのだけれど、彼女も何かを得ない事には生きていけないわけでそれを提供する

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短編小説【○れ】

人気のない暗い夜道に酔った男が、道に落ちている黒くブヨっとした何かを見つけた。

「これはなんだ~?」

男は酔が深いせいかなんの躊躇なしに好奇心だけでそれをつまみ上げた。

おおよそ20センチほどだろうか、そのブヨブヨしたそれはあまりに柔らかく、少しの振動で大きく上下に揺れていた。

スライムとも違う。スライムよりかはもっと硬い。耳たぶよりも柔らかい。餅とも違う。引っ張っても弾力があってちぎれそ

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短編小説【はな】

「あれ?ないなぁ…。」

声のする方を見てみるとそこには同僚がカバンを漁っている背中があった。

夕方、仕事が終わって俺とその同僚以外はみんな帰ってしまったが、その同僚は少し薄暗くなった部屋でガサガサとしつこくカバンを見ていた。

「何がないんだい?」

そう声をかけると同僚はカバンを漁りながらこう言った。

「僕のはながないんだ。」

「花?男が花を持ってるなんて珍しいな。」

「いいや、僕の顔

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短編小説【庭】

2メートルほどの塀に囲われた50坪ぐらい庭。その中心にある小さい小屋が私の住まい。
私の仕事はこの庭の雑草を抜いたり手入れをすることだ。

週に2日ほど塀に直接埋め込まれた大きなポストに生活に必要な物資が届くが、それ以外に私はなんの変化がない生活。
本棚にある本と対話するだけが私の唯一のコミュニケーションだ。

毎日聞こえるのは風の音か雨の音か草木が揺れる音か鳥たちの鳴き声。

手には雑草を抜き続

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短編小説【人形】ややホラー?

閑静な住宅街の一角にその街には似合わない大きな一軒家があった。1階建てなのにただただ広い。クリーム色の壁に赤い屋根。窓は小さいのが各壁に1つか2つしかなかった。夕方になると薄らと明かりがついているのが見えるが、日が落ちる前に消えてしまう。

ご近所付き合いもなく、誰が住んでいるかもわからない。

誰も近づかなかった。

そんな建物をヒネクレ者の記者の男は気になっていた。全く得ダネを見つけることもで

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抽象的な短編小説【一歩】

抽象的な短編小説【一歩】

ここはどこなのだろう

真っ白い空間にポツンと独り。ここはどこだろう。そして自分は誰だろう。
自分を見ると白いTシャツと白いズボン、白いくつを履いていた。

お腹がすいたな。何かないかな。

しかし見える世界は空も地面も真っ白で地平線も全く見えず、立っているのが不思議に思うほどだ。歩くのが少し怖い。
視界は白いが、感覚がつかめないこの空間じゃ真っ暗闇にいるのと同じだ。しかしお腹がすいた。とりあえず

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短編小説【佐藤さん】

俺は高校を中退した後は工場で働き、団地で一人ぐらしをしていた。毎日毎日同じ日々の繰り返しだった。
朝起きて仕事へ行き、帰ってコンビニやスーパーで買った惣菜をテレビを見ながら食べる。工場と団地までの距離はほど近かく、寄り道などもしない。むしろするところがない。休みの日は一日中ゲームとネット。

つまらないとは思うが、食うためには、生きるためにはしかたがないと半ば諦めた気持ちで日々を過ごしていた。

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短編小説【不運な男】

寂れた街のボロアパートの一室、汚い4畳半の部屋で男はあぐらをかいて俯いていた。

男は生まれてこの方ついていた事がない。ただの一度もない。
孤児院で育ち、両親の顔も見たことがないし仕事も昨日首になった。友達もいなければもちろん恋人もいるわけがない。
「小さい幸せすらない。なんてつまらない人生だ。生きるのが嫌になった…。」
男はボソリとつぶやき、おもむろにロープを取り出してカバンに詰め、外へ出た。

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