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難病とともに生きる30代フリーランスが、1日をどう過ごしているか

難病持ちのエッセイ「食べることと出すこと」を読みました。著者の頭木弘樹さんは、潰瘍性大腸炎という難病を大学生の時に患い、当時のことといまの生活をエッセイにしています。

世界の名文学の引用とともに、感情を丁寧に表現されて読み応えがあります。エッセイを読んで思ったのは、経験しないとわからないけれど、他人の生活を知ることで何かしら得られるものはあるということ。

わたしも「シェーグレン症候群」という難病患者である当事者として、病気のある生活について言葉に残してみようと思いました。「食べることと出すこと」を読んで知ったのですが、難病はただ難しい病気というだけでなく、ちゃんとした定義があることを、この本を読んで初めて知りました。

「難病」という言葉、たんに難しい病気という意味で使われたのだと思ったら、そうではなかった。ちゃんと国が指定している難病というものがあるのだった。これにも驚いた。

「難病法(正確には「難病の患者に対する医療等に関する法律」)」という法律があり(二〇一五年一月一日に施行されたもので、私のときには「難病対策要綱」)、その定義によると、
・発病の機構(原因)が明らかでない。
・治療方法が確立していない。
・希少な疾患である。
・長期の療養を必要とする。
という四つの条件をすべて満たすのが難病だ。

その中でさらに、患者数が一定の人数(人口の約1%程度=およそ一二・七万人)に達しない。客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が成立している。という二つの条件を満たしているものが「指定難病」。指定難病は、医療費助成の対象となる。

難病の数は五千~七千だそうで、指定難病の数は三三三。患者数は、難病によっては全国で一人とか二人というものもある。 とてつもない孤独だ。ただ、難病患者をすべて合わせると、指定難病だけで約九一万人。

本が百万部売れると、超ベストセラーで、身近に読んでいる人が必ずいるものだ。それからすると、難病者も、身近に必ずいると言っていいだろう。

「食べることと出すこと」頭木 弘樹 著

シェーグレン症候群(指定難病53)も指定難病のひとつです。シェーグレン症候群は、慢性唾液腺炎と乾燥性角結膜炎を主徴とし、多彩な自己抗体の出現や高ガンマグロブリン血症を来す自己免疫疾患の一つ。

乾燥症が主症状となりますが、唾液腺、涙腺だけでなく、全身の外分泌腺が系統的に障害されるため、autoimmune exocrinopathy(自己免疫性外分泌腺症)とも称されます。

それではシェーグレン症候群歴8年・32歳の1日をお届けします。
(こう書いてみて、病気になってから8年だなんて嘘だろう……とびっくりしました。)

シェーグレン症候群歴8年・32歳の1日

AM 8:00 起床 ブランコを漕ぐように一気に流れをつくる

朝、目が覚めるとまずひどいドライアイで目が開かないから、目薬を手探りで探して目にさす。こうしてようやく目が開く。

シェーグレン症候群は、喉も乾くし、目も乾くから、ベッドサイドにサイドテーブルが欠かせなくなっています。

インテリアや生活動線も、病気の歴が長くなれば、長くなるほど最適化されていくもの。

寝る前に準備しておいたコップの水は、ほとんど飲み切っているのを横目にトイレに行く。

喉の渇きから眠っている途中に目が覚めるため、ここ数年は睡眠薬をもらい、おかげでまとまった睡眠時間を取れています。

それでも喉の渇きで途中水を飲んだり、夜中トイレにいくことはあるけれど、幸いにも薬が効いて記憶にないです。

睡眠薬がないと1〜2時間おきに喉の渇きで目が覚め、水を飲むを繰り返すため、睡眠が浅くかなり辛いです。

睡眠時間は病気とともに生活する上でとても大切。体感としては10時間寝るとかなりスッキリ、8時間でややだるい。7時間睡眠だと37.3℃くらいの微熱があるような、全身の倦怠感があります。

わたしは微熱がでやすくて、スマートリング「Oura Ring」で体表温を確認して、高いようであれば検温。「Oura Ring」のコンディションスコアと睡眠スコアをみて、スコアが悪ければ今日は無理をしない、昼寝をしようと決めます。

微熱と倦怠感がでやすいので、休めたら休むし、しんどければ痛み止めをはやめに飲むようにしてます。

起床して、トイレに行った後は、まずコルゲンでうがい、歯磨き、舌磨き、アイボンを。

乾燥すると痰ができやすく、喉も切れるのか血のかさぶたが出ることも。なので朝イチのうがいは必須。

ドライマウスで舌苔ができるので、NONIOの舌磨きジェルの商品開発はめちゃくちゃありがたかったです。今までにない爽快感がやみつきに。

ドライマウスで唾液腺が詰まって、石ができる唾石症になったこともあったなぁ。とにかくマメにうがいで消毒しています。

歯磨きをして乾いた口がスッキリしたら次は目のケア。
ここ最近気に入っている「アイボン」はうるおいケアタイプのものを愛用。ドライアイのせいか目にゴミが入ったまま、目やにができやすいので、これもスッキリ感が好き。

そのまま服を脱ぎ、洗面台にある体重計に乗り体重を記録。太り過ぎず、痩せすぎずを心がけます。痩せすぎるとやはり風邪をひきやすいと感じています。アプリで記録ができる『RENPHO』がお気に入りです。

そのあとは気分の上がる服に着替えて、鉄瓶でお湯を沸かします。
小さなことだけれども、1日中パジャマで過ごさないことがポイントです。なるべく早く着替える。

どこに行くわけでもないけれど、家でおしゃれをして自分の気分を上げます。シェーグレン症候群になってから、出かけることは減りました。紫外線を浴びると症状が悪化するため5〜9月は引きこもりがち。

だからこそ外に出かける=おしゃれではなく、自分の気持ちを上げるためのおしゃれを楽しんでいます。気分が塞ぎやすい時もおしゃれが心の支えになっているのかも。自己満足は大切です。

とはいえコーディネートを考えるのは面倒くさいので、ワンピースかセットアップ。上下同じ色で揃えたワントーンコーディネートが制服です。

鉄瓶でお湯を沸かしている間に、拭き取りトナーパッドを洗顔代わりとし、美容液とクリーム、最後に日焼け止めを塗ってスキンケア完了。

シェーグレン症候群は紫外線を浴びると悪化するため、日焼け止めは年中必須

「デコルテまでが顔」と言う田中みな実さんの教えを守って、デコルテまで塗ります。マッサージも兼ねて鎖骨下もさすります。

鉄瓶のお湯が沸騰したら、蓋をあけて弱火にして10分タイマーをセットします。

いままでお白湯ってお湯を水でぬるま湯にしたものだと思っていたのだけれど、じつは沸騰後、蓋を開けて弱火で10分以上火にかけてカルキが抜けて、鉄分がお湯に溶け出したものをお白湯と呼ぶのだそう。

その間にラップを広げて、寝かせ玄米とゆかりを混ぜたおにぎりをつくります。

梅やしそは唾液が出やすいので、朝食はゆかりおにぎりがお気に入り。

ここまで一気にやることで、ブランコを漕いでそのあと何もしなくても勝手に揺れ続けるように1日がスムーズに事進みます。なので寝ぼけたまま無意識にここまで完了させます。

お白湯ができたら、オリゴ糖をいれて飲むか、紅茶や中国茶をいれるか気分で。

お茶とおにぎりを食べながら、SNSや天気、メールチェックしたり、本を読んだりします。ここまで来ると目が覚めた状態です。

重いタスクがある時や、どうしてもやる気を出さなくては行けない時には、カンフル剤として朝マックを食べることもあります。

AM 9:00 服薬 小休止

朝の服薬を済ませます。ビタミン剤を中心に朝昼晩、5種類の処方薬と2種類のサプリメントを服用。夜は+3錠です。
結構量がありますが、薬を飲むのには慣れました。

サプリは亜鉛とオキュバイトを飲み始めました。粘膜にいいものは積極的にチャレンジして、よかったら主治医に報告。処方薬で似たようなものがあればそれを試したりしています。

薬の量はあるけれども、ステロイドを使わずにいられる組み合わせが見つかってよかったなと思います。ステロイドは強い薬です。はじめてステロイド飲んだ時は身体の軽さにびっくりして、映画『La La Land(ラ・ラ・ランド)』のオープニング「Another Day of Sun」のような晴れやかな気持ちで街を歩いたのを覚えています。

「病気がないってこんな感じだったな」という気分でした。いまMVを見返すと当時の辛かったことを思い出して泣きそう。

ステロイドを飲んでいた時期は、薬のおかげで元気だったけれど、ぶくぶくと顔が丸くなる満月症という副作用がいやで、少しずつ薬を減らし、今の薬に落ち着きました。

朝の服薬後はメイク。メイクも自分の気分をあげる儀式です。すっぴんでもリップだけは塗ります

始業前にはノンカフェインのコーヒーを淹れ、MCTオイルを垂らします。

MCTオイルはオメガ3脂肪酸が摂れるのと、お通じがよくなる。そしてコーヒーの香りで仕事モードに入るので午前中に飲むのがお気に入り。

AM 10:00 始業 毎朝同じ曲で1日を始める

そして音楽をかけて仕事をはじめます。
朝はショパンをかけることが多いです。朝はこの曲と決めておくのも、1日を自動的に進める習慣のひとつかなと。

AM 11:30 昼食 魚と玄米をきちんと食べる

一旦切り上げて昼食の用意を。冷凍のお魚の煮付けをあたためる。小松菜のお浸しやトマトを切ったもの、お味噌汁、寝かせ玄米を食べます。納豆と卵、キムチなどを一緒に食べることも。食後お昼の服薬を済ませます。

PM 12:30 お昼寝 横になれるだけ横になった方がいい

30分タイマーをかけて昼寝。30分でも横になれるならなったほうがいいです。同じシェーグレン症候群の方と対談した時にいただいたアドバイスで「横になれるだけ横になった方がいい」と言われましたが、本当にその通りだと思います。

PM 1:00 午後の仕事

午後の仕事に取り掛かる。
17時で終わることもあれば、夕飯を挟んで20:30まで働くことも。

明日できることは明日にして、休めるときは早めに仕事を切り上げることもあります。

PM 7:00 夕食 きつい時は惣菜に頼る

しんどいときは横になる。ごはんも作りたくないときはお惣菜を買いに行く。そうやって程よく手抜きをしています。魚か豚肉か鶏肉をおかずにして、玄米と味噌汁は欠かさず。和食中心です。

外から帰ってきたら手洗い、うがい。これは同居する家族にもお願いしています。感染症が命取りになることもあるので、1日の中でよく手洗いうがいをします。
ベビーオイル洗顔をして、お風呂をためる。

21:00 入浴 徹底した歯磨きと寝るための準備

パートナーと一緒にお風呂に入って、きょうの発見ときょうの弱音を話し合うようにしています。話す時間をまとまって取れるお風呂は好きです。

お風呂から上がったら朝と同じくアイボン、フロス、歯磨き、舌磨き、コンクールでうがい。フロスは「フロアフロス」一択です。


どんなに丁寧に歯磨きをしても、ドライマウスのせいで虫歯ができやすくて悲しい。2ヶ月に1度歯医者での検診とクリーニングは欠かせません。

歯磨き粉は、フッ素含有量が1450Fと多い「Check-Up」を愛用しています。

髪を乾かし、カールドライヤーで軽くブローしてからシルクのナイトキャップをかぶる。このひと手間が翌朝の準備を楽にしてくれます。

スキンケアをした後、ストレッチポールに乗り、『ダイソー』のリラックスボールで足裏をコロコロするのが日課です。

肌が乾燥するのでボディオイルも必須。さらに冬はレイノー現象といって末端の血流が悪くなるため足の指に「ヘパリン類似物質クリーム」(処方薬)を塗ります。

22:00 就寝 10時間寝るのが目標

夜の服薬を済ませ、枕元に置いたパーソナル保湿器に水を入れる。寝ている間に人の顔周りを保湿し、肌・のど・鼻の潤いを保つ低温スチーム加湿器です。本当によくてこれで2台目。

コップ1杯の水と水差しを枕元に置く。目薬をさす。目薬は「ジクアスLX」を愛用しています。鼻も乾燥するから「鼻ジェル」をさす。もう何本リピしたかわからないほど。

いい香りのピローミストを枕にふりかける。
深呼吸をしながら「Oura Ring」の瞑想コンテンツを流す。瞑想についてはこちらの記事でも紹介しています。

喉の乾燥がひどいときはマクスをつけると治りがはやいです。

それでも朝起きて乾燥で喉がやられたなという時は、オムロンの「吸入器」で保湿してあげることも。コロナや喉風邪の方にもおすすめです。

耳栓とアイマスクをして寝る。耳栓は「LOOP」を愛用中。長時間つけても痛くならず、話し声は聞こえるため日中に集中したい時にも使えます。使い方にコツがいるので付け方動画の視聴はマストです。

治らない病を持つと、努力で何とかなることに対して頑張りすぎてしまう


22:00就寝。これで10時間睡眠がとれるスケジュール。かなり神経質に見えるかも知れません。でも努力せずにはいられない

なんでこんなに頑張っちゃうんだろう、しっかりしちゃうんだろうと思っていたところ、頭木弘樹さんの著書「食べることと出すこと」で

他に頑張れることがないとき、人は頑張りすぎる
やせてキレイになるとかなら、まだプラスの目的があるが、再燃しないための摂生、つまりマイナスを避けるための摂生だから、喜びがない。しかも摂生していても再燃はするのだから、むなしさもある。
それでも頑張った。なぜ頑張ったかというと、他に頑張れることがなかったからだ。

病気になれば、治すために、自分でも何かしたいと思う。しかし、できることはわずかしかない。ほとんどは医師頼り、薬頼りだ。
それで治ればそれでもいいが、治らないのだから、なおさら何かしたくなる。

(中省略)人は、 自分の努力次第でいろんなことが変わるとなると、かえって面倒になって頑張らないものだが、自分の努力ではなんともならないことばかりで、努力で左右できるのはごくわずかしかないとなると、むしろ努力しすぎてしまうものだ。過剰に努力して、かえってマイナスさえ引き起こしてしまうものだ。

という一文があって「治らない病を持つと、努力で何とかなることに対して頑張りすぎてしまうのなるほどなぁ」と思ったと同時に、わたしだけではないのだなとも思いました。

もし病気がなかったら、飲みに行ったり、0時まで本を読んだり、映画を観たりするのだろうけれど、明日動けないことがこわい。仕事に穴を開けるのが怖い。怖いことばかりでとにかく早寝早起きの健康的な生活を送っています。

夜、飲み会がある時は翌日の仕事を軽くしたり、なんなら翌日休みにします。回復に1日はかかり、1度体調を壊すと1週間微熱が続くこともザラです。

この1週間不調が続くことが結構怖い。ずっと熱が続くと流石に心が折れます。

「怖い」が先に来るけれど、気づいていないだけで、本当はこんな状態に「怒り」を覚えているのかもしれません。

病気のことを忘れられるほど寛解(かんかい)したい。難病は治らない病気ですが、病気による症状や検査異常が消失した状態を「寛解」と呼びます。そんな日は果たして来るのだろうか。「寛解」は叶えたい夢のひとつです。


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