マガジンのカバー画像

★ 話の缶詰 ★

11
ちょっと読めて楽しめる、肩の凝らない、そんなお話を詰め合わせてみました。 まずはお試しにいかがですか?
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事
秘密のメッセージは知らない世界への入口

秘密のメッセージは知らない世界への入口

 今はもう、無いのだろうな。
 昔、新聞の三面(テレビ欄が載ってるページの裏面、いわゆる社会面)の下方に、時おり「たずね人」や「探しています」「お知らせ」という四角い小さな囲みの伝言が載ることがあった。

 個人情報がこれだけうるさい昨今では、不特定多数が見るメディアに、個人的な情報を載せるなんて、と思われるだろう。
 だが、まさに、その不特定多数に向けて発信していたのが、この欄である。
 すなわ

もっとみる
冬の猫さん、それぞれの時。

冬の猫さん、それぞれの時。

 今日から12月。朝は寒かったですが、昼間は晴れて暖かかったです。
 時々通る公園で、最近見かける一匹の猫様。

 
 まだらの茶色の猫さん、右耳カットしてるので地域猫かもしれない。
 いつも公園の枯れ草のベッドで丸くなっている。太陽が当たるとほかほか暖かそう。 

 
 この猫さんがいつも寝てるため、ここの枯れ草には何ヵ所かくぼみができている。
 天然のネコベッド、主を待ってる感じでよき。このま

もっとみる
記憶を売る店

記憶を売る店

 古い市場の中を歩いていた。シャッターが閉まったままの店舗が増えて、寂しい感じがするが、再来年には創設100周年を迎えるという長い年月を経てきた市場だ。
 乾物屋やお惣菜屋、魚屋、漬物店などが元気に営業中だ。

 ふと、見慣れない店があるのに気がついた。古いガラスケースや木製の古い棚にごちゃごちゃと色んな物が置かれている。
 最近できたのかな?アンティーク、というよりはガラクタに近い商品の数々。

もっとみる
取り返しのつかなくなった話

取り返しのつかなくなった話

 それはたまたまほんの少しの時間、わたしがその部屋に一人きりになったことから起こった出来事である。
 その時ある装置のことをふと思い出したのだ。それは上司の机の引き出しの上から2番目、奥の仕切りをはずした下にあることを、なぜかわたしは知っていた。
 上司と飲みに行った酒の席で、酔った彼がふいに漏らしたのだったか、それとも一緒に得意先に向かう車の中でなんとなく話題が欲しくて彼が冗談めかして話したのだ

もっとみる
さすらいの土建屋たち

さすらいの土建屋たち

 Yは、その日所用で神戸市北区の国道を車で走っていたのだが、夕暮れにさしかかった時に、崖が続くカーブの途中で奇妙な光景に出会ったのであった。
 小山を切り崩してできた狭い平地に、くたびれたおっさんが3人、車座になって鍋を囲んでいる。
 こういう場に出くわすと、素通りできない物好きな習性がYにはあった。その習性のお陰で今までも散々、どうでもいいやっかい事を背負いこんできたのだったが、この時もやはりそ

もっとみる
SとTの海物語

SとTの海物語

「海へ行こうか」
「海に行こう」
「間に合うかな」
「今は午後0時15分だから干潮が始まってる頃だ」
「それだったらちょうどいい」
「今から河を下っていけばちょうど砂浜が見られる」
「蟹がいるかな」
「エビもいるよ」
「ヤドカリはあわてて砂にもぐるよ」
「楽しみだな」
「楽しみだ」
「ところであの古い市場の魚屋の裏に海があるのは知ってたかい」
「海があるのかい」
「小さな海なんだ。魚屋の裏手に駐車

もっとみる
AIをいじめたら、シカトされた話。

AIをいじめたら、シカトされた話。

 今日は午後2時からFM大阪で『山下達郎のサンデーソングブック』を聞きまして、竹内まりやさんとの納涼夫婦放談を楽しみました。
 普段はお一人でしゃべってるパターンから、対談しかも奥様と、というのがなかなか新鮮なんざますよ。
 リスナーからのハガキ質問にも、いつになくちょっとムキになってるように感じられたりして(そんな大したものじゃないんですが)、あら、達さん、カワユ❤️ みたいなファンには嬉しいサ

もっとみる
戸口に立ってる雪女はジーンズ姿でハローと言った。

戸口に立ってる雪女はジーンズ姿でハローと言った。

 玄関ドアを開けたら雪女が立ってた。彼女はジーンズ姿でTシャツを着てた。
 雪女って、真夏はまるで怖くない。なんかちょっと弱々しいし、目にも力がない。
 とりあえず上がってもらって、冷たいカルピス作ってあげたら、「おいしい」って笑う。
 「このところ酷暑でしょ」氷を噛み砕きながら彼女が言う。「夏を乗り切るだけで精一杯になっちゃって、冬もおとなしくしてんのよ」 
 そういや最近音沙汰ないなと思ってた

もっとみる
家電に容赦しない家系。

家電に容赦しない家系。

 昨日、読ませていただいた、
noter さんの、「私は家電を友だちと思う」↓

『家電が私を困らせようと壊れる被害妄想』

…… 吉中氏に深く同意する。奴ら(家電)はこちらの出方を絶対にうかがっている。
 簡単に故障を認めて楽をさせては、人類の名折れである。

 私の実家は、家電に容赦しない。
まず、壊れる事を「許さない」。
 私の父は仕事がら機械に強いので、ちょっとした故障なら、分解して直して

もっとみる
たわいない小話を一席m(_ _)m

たわいない小話を一席m(_ _)m

 朝になると蝉が一斉に鳴き出す。ずっと鳴くのを我慢していて、もう、どうにも止まらない、みたいな感じ。いい感じ🎵

 暑い日が続くから、軽くて笑える話を書こう。お題は…

ああ、カン違い。

~カン違いその1~

 父(来月で86歳)は、「ネコの額ほどの庭」をずっと、「ネコの死体ほどの庭」だと思っていた。また、花はすべて「チューリップ🌷」だと思っていた。元祖・アキバ系(電子部品の方)理系オタクの

もっとみる
ささやかな欲望

ささやかな欲望

 今日は朝から雨。昨日までの暑さが嘘みたいにひんやりしてます。この寒暖差、キツイかなと思いましたが、大丈夫みたいです。ヨカッタ…

 さっき買い物に行って、久しぶりに「じゃがりこ」買ってみたら、なんか、ひとまわりお痩せになった気がするんですが…

 
 スーパー寄る前に行った市場の中で、懐かしい山口百恵さんの「秋桜(コスモス)」がかかっていて、歌詞がお嫁に行く私が母と二人だけの時を過ごしながら、「

もっとみる