三田主水

小説から漫画、映像作品からゲームその他諸々、時代伝奇について何でも語る伝奇時代劇アジテ…

三田主水

小説から漫画、映像作品からゲームその他諸々、時代伝奇について何でも語る伝奇時代劇アジテーターです。文庫解説などお仕事もします。 主な文庫解説: 『一鬼夜行 鬼が笑う』(小松エメル)『暗夜鬼譚 春宵白梅花』(瀬川貴次)『渦中 辻番奮闘記』(上田秀人)『震雷の人』(千葉ともこ)

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    これまでこのnoteに掲載した記事のうち、特におすすめの作品に関するものについて、よりぬいています。

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自己紹介です

 三田主水(みた もんど)と申します。noteは少し前から触っていましたが、ちょっと本腰を入れてみたいと思い、振り返りも兼ねて自己紹介させていただきます。 プロフィール伝奇時代劇アジテーター、書評家  小説・漫画は言うに及ばず、ゲームからアニメ、古典芸能や演劇等々、時代伝奇に関することなら何でも語ります。これまで18年以上、書評を中心にしたブログ「時代伝奇夢中道 主水血笑録」を毎日更新してきました。というか今でも毎日更新しています。  また、文庫解説や書評も執筆いたしま

    • 『君とゆきて咲く~新選組青春録~』 第1話「運命の出会い」

       テレビ朝日の「シン・時代劇」なる枠で、手塚治虫の『新選組』を原作とした作品が放送されると知ったのは今年の一月だったかと思いますが、ついにこの四月末から放送がスタートしました。  本作の特徴は、やはり二人の主人公である丘十郎と大作を『仮面ライダーリバイス』に出演した二人が演じる(ちなみに丘十郎の父親もリバイス出演者から特別出演)ほか、キャストを『仮面ライダーギーツ』『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』『魔進戦隊キラメイジャー』といった東映の特撮作品、あるいはいわゆる2.5次元ミュー

      • 夢枕獏『月神祭』 豪傑王子の冒険譚 夢枕流ヒロイックファンタジー

         現在映画『陰陽師0』が公開されている夢枕獏の『陰陽師』シリーズ――その遠い遠い源流といえるかもしれない初期作品群を一冊に収録したのが、この『月神祭』です。古代インドを舞台に、豪傑アーモン王子とおいぼれ仙人ヴァシタが、各地で様々な怪異と出会うシリーズ、最初の刊行時には「印度怪鬼譚」と冠されていた、ヒロイックファンタジーの名品です。  古代インドのとある王国の王子にして、人並み優れた巨躯を持つアーモン王子。象にも勝る怪力と、いかなる魔物も恐れぬ豪胆さを持つ彼の唯一の大敵は退屈

        • 『妖雲里見快挙伝』完結篇

           新東宝版・南総里見八犬伝である『妖雲里見快挙伝』、前篇に続いて完結篇が公開されました。馬加大記と網乾左母二郎の奸計によって一度は滅ぼされた里見家。はたして伏姫の予言した八犬士は現れるのか、そして逆襲の機会はいつ訪れるのか――あまりに意外な最後の犬士の正体に注目です。 前篇の記事はこちら (以降、ラストまでの詳細に触れますのでご注意下さい)  というわけで、二部構成の後篇である本作は、前篇のラスト、馬加大記の讒言によって謀反の罪を着せられ、攻められた里見義実の滝田城が落

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          白川尚史『ファラオの密室』 前代未聞、探偵で被害者は甦ったミイラ!?

           毎回ユニークな作品が登場する『このミステリーがすごい!』大賞、第22回の受賞作は、何と紀元前1300年代後半の古代エジプトが舞台。それも探偵にして被害者は、自分が死んでミイラとなりながらも、冥界から再び甦った男という、異色中の異色作です。  ある出来事で命を落とし、ミイラにされて葬られた上級神官書記のセティ。しかし冥界に赴き、真実を司る神・マアトによって審判を受ける直前になって、彼は心臓に欠けがあるため審判を受けることは適わないと告げられるのでした。  このままで

          白川尚史『ファラオの密室』 前代未聞、探偵で被害者は甦ったミイラ!?

          夕木春央『サロメの断頭台』 作者一流のホワイダニットの先に待つ罪と罰

           『方舟』『十戒』で知名度を大きく上げた作者の大正ミステリ、蓮野&井口シリーズの第三弾であります。思わぬところから発見された井口の未発表の贋作。その犯人を探す二人は、やがて『サロメ』に見立てた連続殺人に巻き込まれることになります。  かつて祖父が購入した置時計の件で、通訳役の蓮野と共に、来日した富豪・ロデウィック氏を訪ねた井口。井口の作品に興味を持ってアトリエを訪れた氏は、ある作品を見て、そっくりな絵をアメリカで見たと告げます。  しかしその絵は、女優の岡島あやを描いた未発

          夕木春央『サロメの断頭台』 作者一流のホワイダニットの先に待つ罪と罰

          木下昌輝『剣、花に殉ず』 剣と友情に生きた男が最後に辿り着いた場所

           これまで宮本武蔵を題材とした長編を二篇発表してきた作者が、その武蔵が最後に立ち会ったという剣豪・雲林院弥四郎を主人公として描く剣と友情の物語であります。剣の名門に生まれ、己の剣に悩みつつも、終生の友である細川忠利のために死地に赴く弥四郎。彼が最後に辿り着いた場所とは……  鹿島新当流兵法の奥義「一の太刀」の伝承者である父とともに、修行の旅を続けてきた雲林院弥四郎。しかし関ヶ原の戦の際、父と石垣原の戦いに参加した弥四郎は、そこで宮本武蔵と遭遇、彼の自由奔放な太刀筋に圧倒され

          木下昌輝『剣、花に殉ず』 剣と友情に生きた男が最後に辿り着いた場所

          田中文雄『髑髏皇帝』 後醍醐帝の魔に挑む少年二人、足利直冬と北条時行!

           足利尊氏の庶子・直冬、そして北条高時の遺児・時行が、後醍醐天皇に憑いた奇怪な魔物と対峙する時代ホラー長編です。尊氏に都を追われ、吉野に逼塞する後醍醐天皇の前に現れた異国の魔――吉野で相次ぐ奇怪な事件の謎を追う若き武士たちが、魔に挑みます。  本作の舞台となるのは、鎌倉幕府の滅亡、建武の新政の失敗、南北朝の動乱と、うち続く動乱の時代。その渦中でそれぞれに父母と早くに引き離され、肉親の温かみをほとんど知らぬ中、打ち続く戦乱の中で懸命に生きてきた二人の少年が、主人公であります。

          田中文雄『髑髏皇帝』 後醍醐帝の魔に挑む少年二人、足利直冬と北条時行!

          滝沢志郎『エクアドール』 海を越える同胞愛と、明日に踏み出す人々の物語

           中世の琉球王国に始まり、東南アジアへと展開していく、希有壮大にして爽快な海洋冒険ロマン――琉球を外敵から守るため、ポルトガル人から新型兵器を手に入れんとする琉球王府の人々の旅路を描く快作です。  時は種子島に鉄砲が伝来する二年前――倭寇だった過去を持つ琉球王府の下級役人・眞五羅は、湾に迷い込んできた倭寇船との交渉に当たる中、倭寇時代の友・弥次郎と再会することになります。  弥次郎と共にかつて所属していた船団を明国の仏朗機砲で壊滅させられ、九死に一生を得た過去を持つ眞五羅。

          滝沢志郎『エクアドール』 海を越える同胞愛と、明日に踏み出す人々の物語

          馬伯庸『両京十五日 Ⅰ 凶兆』 南京から北京へ、決死行を描く「歴史冒険小説」の傑作

            記念すべきハヤカワ・ミステリ2000番は、『長安二十四時』『三国機密』の原作者による、歴史冒険小説の傑作。十五世紀の明を舞台に、皇位を狙う巨大な陰謀に巻き込まれた皇太子が、たった三人の仲間と共に南京から北京までわずか十五日間で向かう姿を描く、一大スペクタクルです。  時は1425年、明の第四代皇帝・洪煕帝の時代――北平(北京)から金陵(南京)への遷都が計画される中、南京に遣わされた皇太子・朱瞻基の船が、南京に到着したところで大爆発。船の乗員のみならず、岸に出迎えに来てい

          馬伯庸『両京十五日 Ⅰ 凶兆』 南京から北京へ、決死行を描く「歴史冒険小説」の傑作

          乾緑郎『戯場國の怪人』 史実と虚構、この世とあの世を股にかけたスーパー伝奇

           ミステリと並行して独自の時代伝奇小説を描いてきた作者によるオペラ座の怪人オマージュ――に留まらない、凄まじい奇想に満ち満ちた物語です。女形の溺死の謎を追ううち、市村座に潜む謎の怪人と対峙することになる平賀源内や深井志道軒たち。一連の怪事の背後に潜む「戯場國」の驚くべき姿とは……  宝暦十三年の夏、舟遊びをしていた市村座の役者たちの一人・荻野八重桐が怪死した事件を、作品にするよう依頼された戯作者修行中の平賀源内。市村座に伝手を求めて、江戸にその人ありと知られた講釈師・深井志

          乾緑郎『戯場國の怪人』 史実と虚構、この世とあの世を股にかけたスーパー伝奇

          『妖雲里見快挙伝』前篇

           YouTubeの新東宝公式チャンネルで3/29から4/12までの二週間限定で公開されていた本作は、1956年の年末に公開された映画。タイトルから想像できるように、題材は『南総里見八犬伝』――この誰もが知る物語を、川内康範脚本、渡辺邦男監督、犬塚信乃役を若山富三郎で製作した二部作であります。  『南総里見八犬伝』については、今更いうまでもなく伝奇時代劇の元祖の一つであり、これまで様々なメディアでいくつもの八犬伝が生まれています。しかし原作が長大であるだけに、それぞれ大きくア

          『妖雲里見快挙伝』前篇

          武川佑『真田の具足師』 武士ならぬ身で己の戦場を戦った者の物語

           先日、文庫で『悪将軍暗殺』(『千里をゆけ くじ引き将軍と隻腕女』改題)が刊行された武川佑が、戦国時代末期の真田家をユニークな視点から描く歴史小説であります。徳川軍を震え上がらせた真田の不死身の具足――その秘密の奪取を命じられた具足屋・岩井与左衛門と真田家の、長きに渡るドラマであります。  生まれつき不自由な片手の指を抱えながらも、家業である具足師として懸命に修行を積んできた与左衛門。しかし彼の作った甲冑が不良品であったため、戦で家康が傷を負ったという理由で勘当された彼は、

          武川佑『真田の具足師』 武士ならぬ身で己の戦場を戦った者の物語

          東曜太郎『カトリと眠れる石の街』 二人の少女が挑む怪奇伝奇な冒険

           19世紀後半のエディンバラを舞台に二人の少女が冒険を繰り広げる、伝奇色も強い児童文学の快作であります。街に蔓延する謎の眠り病の原因を突き止めるため、カトリとリズ――生まれも育ちも違う二人の少女が、街に隠された秘密に挑みます。  スコットランドの都市・エディンバラ――新市街と旧市街に分かれたこの街の旧市街で、同級生たちから一目置かれるカトリ。金物屋の養女である彼女は、病で寝付いた父に代り、母の仕事を手伝って、既に大人顔負けの腕前を見せる少女です。  ある日、新市街に住むほ

          東曜太郎『カトリと眠れる石の街』 二人の少女が挑む怪奇伝奇な冒険

          東曜太郎『カトリと霧の国の遺産』 少女の見えない将来と幻の街の魔手

           児童書にして優れた伝奇ホラーでもあった『カトリと眠れる石の街』の待望の続編です。エディンバラの博物館で働くことになったカトリの周辺で起きる連続失踪事件。それは幻の街にまつわる古物収集家のコレクションの展示に深く関わっていました。そして謎の魔手はカトリにまで及ぶことになります。  エディンバラで流行した謎の眠り病事件解決に奔走する中、博物館に興味を抱き、家業を捨ててそこで働くという道を選んだカトリ。しかしそこで待っていたのは期待外れの退屈な仕事――しかも正式に学問を修めたわ

          東曜太郎『カトリと霧の国の遺産』 少女の見えない将来と幻の街の魔手

          平谷美樹『虎と十字架 南部藩虎騒動』 猛虎脱走! 混沌の謎の行方は 

           時代小説と歴史小説を中心に活躍する平谷美樹ですが、時代小説においては実はミステリ色が強い作品を得意とする作家でもあります。本作はそれが前面に出た作品――家康から拝領した二匹の虎の脱走を巡って南部藩を揺るがす複雑怪奇な騒動に、藩の徒目付が挑みます。  かつてカンボジアから徳川家康に贈られた二匹の虎・乱菊丸と牡丹丸を拝領し、盛岡城内で飼っていた南部利直。しかしある晩、この二匹が檻から脱走するという大事件が発生します。  これまで様々な事件を解決してきた藩の徒目付・米内平四郎は

          平谷美樹『虎と十字架 南部藩虎騒動』 猛虎脱走! 混沌の謎の行方は