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カートゥーンネットワークが好きだったあなたにぜひ一度読んでいただきたいミステリー小説。/『ヨギガンジーの妖術』泡坂妻夫

泡坂妻夫は「ポパイ」が好きだったそうだ。ほうれん草を食べてムキムキになるアレである。ミステリー小説では事件が起きて、探偵がそれを解決するというのが定型。そのバリエーションを出すために念頭に置いていたのは、同じことを毎回違うパターンで描く「ポパイ」だったという。

「ポパイ」もだし「バックスバニー・ショー」もだし、ちょっと前にカートゥーンネットワークでやっていたアニメのパータンは大体決まっていた気がする。それでもキャラクターの強烈な個性だったり、スラップスティックな展開に惹かれてついつい観てしまう。あの面白さを小説で感じられるのが『ヨギ・ガンジーの妖術』だ。

収録されている短編の基本的な話の筋はこうだ。ヨギ・ガンジーという怪しい男が地方を訪れ、超常現象に遭遇するも、アッという間にそのカラクリを解明。

まず探偵が挑むのがよくある密室殺人とかではなく、念力を使った殺人、UFOの出現、死の予言、喋る木、幽霊など超常現象というところが面白い。そんな魔法のような現象をどうやってミステリーに落とし込むのか、というのがまず読みどころ。

そして何よりこの小説を魅力的なものにしているのは、探偵役のヨギ・ガンジー。頭にターバンを巻き、長い白衣という外見で、「ドイツ人とミクロネシア人と大阪人の混血」といわれ、胡散臭さのカタマリみたいな人物。佐藤二朗とか香川照之みたいに喋っているだけで面白い。私のお気に入りはガンジー先生が久しぶりに警部と再会するやいなや飛びついて、髭をこすりつける奇行に走るシーンだ。画を想像すると笑いが止まらない。

それ以外にも、いやこれはヘンだぞ!と突っ込みたくなるような設定、言動が満載。「馬鹿だな~」と笑いながら読んでケロッと忘れてしまう、そういう軽さが素敵な1冊です。

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