モイペイ 小説と読み物
書きたいままに貯めていった作品 超短編とショートショートっぽいものはコチラにまとめました。
日々の中で感じた事、思った事、書き留めておきたいな、と思った事を不定期に思い付くままに。
Kindle電子書籍7冊目! またまたショートショート集を出版しました✨ KindleUnlimited(読み放題プラン)で気軽に読んでもらえたら嬉しいです
4月も中旬になると日中は初夏の風情だ。 ケイは二級河川の土手に群生するヤマブキの美しさに目を奪われていた。 たまたま歩いたこの土手沿いの遊歩道。 こんな情景はケイの故郷には無かった。あの頃の事はよく覚えている。 陽の光が届かない紺碧の世界。 仲間達と見た、水平線に沈む夕陽。 ケイはかつて、クジラだった。海洋生物としての生を全うし、今はニンゲンとして現世を生きている。 「お兄さん、花好きなんだね。良い趣味だ」 通りがかりの年配の男性が、この花が「ヤマブキ」という植物で
帝産音大の名誉教授、荏原新一に世紀の大ニュースが伝えられたのは、冷たい雨が降る4月上旬のある朝だった。 「何だって。そんなバカな。あり得ない」 何度もメールの内容を確認して、ドイツの友人クリストフに連絡を入れた。 「やあ、クリストフ。そちらは今真夜中だろう。すまないね」 「おはようシンイチ。構わないさ。こちらからメール送ったんだから」 長年ベートーヴェンについて研究し、自身も偉大な指揮者であるクリストフが言うんだから間違ってはいないはずだ。 しかし、ベートーヴェンの未発
「ママー。あの人、親指みたい」 またですか。もう、言われ慣れましたよ。 私はイーサン・ハリス。生まれも育ちもサウスダコタ州の、清掃局職員です。 「親指」って言われるようになって30年以上。 いや、ホラーでもマンガでもなく、私の佇まいと言いますか、シルエットが「親指」みたいだといつの頃からか言われるようになり、それを甘んじて受け入れて来ました。 20代後半から太りだし、ますます「親指」みたいなシルエットだとからかわれてきました。 容姿を人に観察されにくい仕事は無いものかと
時は2045年。 低迷しきった経済は、かつて経済大国と呼ばれたその国をGDP 第15位までランクダウンさせていた。 経済学者も政府の経済対策チームも、もはや打つ手を見失い、 国民から「微笑み」や「笑顔」は完全に消え去っていた。 「あ、お前、また違法動画観てるな。ここはカフェだ。捕まるぞ」 「シー! 声が大きい ‼️ こんな世の中だからこそ、笑いが欲しいんだよ」 「分かるけどさ。違法だぞ。見つかったら庇いきれないからな」 「はいはい。家でこっそり見まーす」 心配性の武藤
安達茂兵衛の旧家は意外にも現存していて、あっさり見つかった。 ところどころ増築されてはいるが、紛れもなく明治中期に財をなした豪農「安達家」の旧家だ。 急な訪問にも関わらず、現在の当主は快く対応してくれた。 「突然で恐縮なんですが、安達茂兵衛さんが編纂した文献について伺いたいのです。」 「ああ、【安達実記】だね。遠い所をごくろうさん。まあ、上がってお茶でも」 17代当主の安達幹夫は優しい口調で語ってくれた。 1750年(寛延3年)の労咳=結核の流行は、確かにあった。 それ
3月下旬の里山は、まだ春と呼ぶには肌寒かった。 首都圏の大学院に通う坂上と岡野が車を飛ばしてやってきたのは、「寛容桜」と名付けられた推定樹齢500年のエゾヒガンザクラのある深沢村。 「日本三大桜」など有名な景勝地となっている桜をよそに、ひっそりと、そして地元の人の間ではいつもそばにあるシンボルとして、毎年見事な花を付ける。 「民俗学専攻だと、こんな小旅行も出来ちゃうんだな」 「小旅行って(笑) 教授に頭下げてOKもらったんだぞ。ちゃんと論文書かないと」 「分かってるよ、
Kindle電子書籍、6冊目となる短編集 「雨音リノベーション」出版しました✨ KindleUnlimitedで、気軽に読んでもらえたら嬉しいです✨
「どうするか。この二択が後々大きく影響するんだ。慎重に決断せねば」 ニゲル・フォレストは朝8時の駅前のベーカリーで、バターたっぷりクロワッサンとクイニーアマンのどちらにするかを決めかねていた。 隣でパンを選ぶ客のトレーには、艶のある大きめのクロワッサン。とても美味しそうだ。 決めた。クロワッサンにしよう。 オフィスに到着し、コーヒーとともにクロワッサンを食べていると、ボスが出勤してくる。 「おはようニゲル。昨日のA社向けの提案資料だが、やはり2パターン提示しようというこ
「鈴木、来週の打ち合わせ用の資料、大丈夫か」 今やってますって。ちょっと予定より遅れてますけど。 「はい、大丈夫でーす」 リノベーション専門の会社に勤める鈴木雨音は入社5年目。 任せてもらえる仕事も増え、忙しくも充実した日々を過ごしている。 「雨音、先上がるけど、ホントに手伝わなくていいの?遠慮しないでよ」 「大丈夫ですって。先輩には前回もガッツリ手伝ってもらっちゃったんで」 今回は絶対、自分の力でお客様を満足させるんだ。 「気合い入ってるなあ。もう遅いから、ほどほど
「ではこれより、最終試験を行います」 二次選考を通過した専門学校生の武内は、同じく勝ち上がってきた数人とともに小さなスクリーンが設置された大きめの部屋に移動する。 クリエイターっぽくないが、知的な感じの試験官が説明を始めた。 「今から短い映画を一本観ていただき、批評をお願いします。これが最終試験となります」 武内は一番後ろの席に座り、眼鏡をかけた。 映画は後方の席で、と決めている。スクリーンを含めた空間全体の雰囲気を楽しみたいからだ。 映画は正直、つまらなかった。と
21時。 子育てとパート勤めに忙しくも充実した日々の主婦、なぎさは帰宅途中に寄ったコンビニのお弁当コーナーの前で思案していた。 「残業で遅くなっちゃったから伸也に夕ごはんを、と思ってコンビニに入ったものの、こんな時間だから全然種類がないわ。これでいいか」 足早にレジへ。会計を済ませたなぎさの手にはカレー弁当が入った手提げ袋。 「ただいまー。ごめん、遅くなって。ご飯まだでしょ。コンビニで買ってきたから」 「今日も残業?いいよ、気を使わなくて。さっき自分で適当に作って食べた
また出版しちゃいました 3分で読めるショートショート集「やさしいミサイル」 KindleUnlimitedで気軽に読んで頂ければと思ってます📖 平和的解決の切り札は、ミサイルだった? 「やさしいミサイル」を含む7作品!
高齢者向けの体操クラブの帰り。 山崎陽子は雑居ビルと壁との間にわずかな空間を見つけ、違和感を覚える。 「こんな所にこんなスキマ。いや、そもそもこんな雑居ビル、ここにあったかしら?」 思わず立ち止まってしまうほどの違和感。毎日通っている道だから、今まで気が付かなかったというのもおかしな話だ。 アーケードのある、古いが活気はある商店街。 陽子は通りから数歩脇に入り、その「スキマ」を覗くように観察した。 そこは漆黒の闇だった。しかし、確かに空間は奥まで続いている。それを確信
「さよならピラミッド」に続く、短編集第二弾。Kindle電子書籍としては4冊目を出版しました📚 「3分で読める短編集 ハチワレ猫 テオの憂鬱」気軽に、KindleUnlimited で読んでいただけたら嬉しいです( ´∀`) これからも、どんどん出していきます!☺️
「決戦兵器ポミポミ」につづき、ショートショート集をKindle電子書籍出版しております。 2024年3月27日(水) 16:59まで、無料キャンペーンを実施しています。 この機会にぜひ。 もちろん、KindleUnlimited でも読めます!